第25話 話し合い





 ゴブリンキングの治療を終えてから30分程経っただろうか、あの後は少し時間もあった為幸太はネロに負傷した両腕を治してもらっていた。今は既に完治しているので問題はない。


 ただ、未だにゴブリンキングは目を覚さないので幸太達のアジト拠点まで連れて行くかとネロと話をしていた最中、少し呻き声を上げるとゴブリンキングは目を覚ました。


「ウッ、うぅ。こ、此処ハ────?オレは何をシテ────?」


 自分の記憶が曖昧なのか戸惑いを見せるゴブリンキングに幸太は近付くと話しかけた。


「それは俺が答えよう。いくら生と死の瀬戸際にいたからと言っても俺の顔は忘れていないだろ?」

「お前ハ………アァ、そうか、思い出した。オレはお前に負けテ。だがナンデオレが生きている事にナル………?」


 幸太の顔を見ると自分が負けた事を思い出したようだが、あの後は完全に自分は死んだ者だとばかり思っていたようで、また疑問を持つ顔を浮かべていた。

 そんなゴブリンキングの横に幸太は無作法に座ると話しかけた。


「言っただろ?俺が答えると?だからお前もそのまま座って聞いてろ」

「………ムウ、そうだったナ、話をキコう」


 特に反論をする事なくゴブリンキングは静かに幸太の話を聞く体勢に入った。

 ただ、その光景を幸太の肩に隠れながら様子を見て、いつでも動ける様に身構えていたネロは拍子抜けというか驚いていた。


(────嘘でしょ?魔物がこうも人間と意思疎通が出来ている、こんな事あり得ない事だよ。あっちの世界────「異世界ノクナレア」でも人の言葉を喋る魔物の個体はいたけどそれは高位のばかりでただのゴブリンキング如きが喋れるはずがない。それもこんなに真摯に対応するはずがない。コレは「ダンジョン」で何かが起きている事と何か理由があるのか?)


 考えても、考えても分からない事なので今は幸太達がどんな話をするのか聞いてみる事にした。


「まず、ゴブリンキング、お前は俺に一度倒されて死ぬ直前まで行った。だが、俺の相棒である────このネロが「回復魔法」で治した」


 幸太はそう言うと、自分の肩にいるネロを指差して「コイツがお前を回復させた」と伝えた。

 その際にゴブリンキングの口からは「妖精カ、これまた珍しイ」と出たが。


「────宜しくはするつもりは無いけど、僕が君を助けた事は確かだね。まぁ、幸太君に言われなければ絶対やらなかったけどね」


 そんなツンツンとする態度を取るネロに対して特に怒るわけでもなく、ゴブリンキングは少し驚くと、お礼を言ってきた。


「イヤ、別にヨロシクするとかはソチラの好きにシテくれ。ただ、オレからは一言だけイワセテくれ────この命、助けてイタダき感謝ヲ」


 ゴブリンキングはネロにそう言うと、頭を 45°下げて謝ってきた。

 そんな紳士な対応をするゴブリンキングの態度に逆にネロが驚かされてしまった。


 あの人類に災害しか起こさない魔物が自分から謝ってきたのだ、それも頭を下げるまでして。魔物の事を知っている人からしたら驚かない方がおかしいだろう。


「まぁ、自己紹介とかの話は後にして先ずは今まであった事を話すわ」


 そんな事を知らない幸太がそう前置きをすると話し出した。



 ◇閑話休題



 それからはゴブリンキングが倒れた後の話、今まであったことなどを分かる範囲で幸太は話した。


「────と、いう事でさっき俺が言った通り勝負は俺の勝ちだが、あんな闘いでお前さんが死ぬのはちと勿体無いと思ってな?俺の判断でお前の傷をネロに治してもらったわけよ?────どうだ?傷は平気か?」

「────イマ、確認してみル」


 幸太の説明を受けたゴブリンキングは、自分の身体の調子を確認するように立ち上がると腕を動かしたりその場で屈伸をして確認をとっていた。

 その様子を幸太は楽しそうに、ネロは少し興味あり気に見ていた。


 そんな中、確認が終わったのかゴブリンキングはその場で座ると少し笑顔を見せて幸太達に向き直ってきた。


「どうだ?」

「あぁ、問題ナサそうだ」

「そか、なら良かったよ!」


 幸太は魔物であり、敵であるはずの自分の容態が無事なのを確認すると笑顔を向けてきた。

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