第23話 回復魔法



 だって今まで戦っていた敵、それも魔物を────を「回復魔法」で回復をしてくれと幸太は言っているのだから。


「そうだ、そいつはまだ死んでいない。それに今死ぬには惜しい存在だ。将来俺の好敵手ライバルになってくれるかもしれがないからナァ」

「────ッ!!」


 幸太は本心で言っているのか、好敵手と言った瞬間ネロが驚く程のおぞましい気配を放った。

 ネロはそんな幸太の顔を見ると顔を赤くすると共に背筋に少し寒気さむけの様な物を感じてしまった。


(────その表情はいつ見てもゾクゾクするねぇ、でもソレが幸太君の本心だと分かる。彼の言う通りにしてみるか、人間と魔物が共存なんかはあり得ないけど、面白そうだからねぇ。まぁ、この魔物が変な行動を少しでもする様なら幸太君の意思など関係なくこの魔物を殺すけどね)


 ネロはそう思う事にした。


 ネロが今言った通り人と魔物が共存出来ない事、それは何処の世界でも決まっていることだ。

 厄災を起こす物、それも魔物など昔から人間とは相入れない存在なのだ。

 殺し・殺されの対極にある存在。いくら人の言葉が喋れても知性を持っていたとしても人類の脅威きょういになる存在。即ち────敵に変わりは無いのだから。


 そんな事を考えているネロの事を知らない幸太は呑気にも話しかけてくる。


「どうだ?やれるのか?やれないのか?………まぁ、ましてや様が出来ないなんて、言わないよナァ?」


 幸太は挑発する様に妖精王という言葉を強調するとニヤニヤと笑いネロを見た。

 そんな挑発的な態度には普段のネロは乗らないが、今は幸太の挑発に乗る事にした。


 ────自分の本心を探らせない為に。


「フン!いいとも僕が治そうとも!!それに僕は!出来ない事はほぼ無いからね!………まぁ、魔物は流石の僕でも回復をしたことが無いからどうなるかは分からないけどね!」


 自信満々に言い張ったネロだったが、魔物を治すと言う事に少し自信を無さげな発言もしていた。

 ただ、これは本当だ。誰が、何処の馬鹿が────お人好しが好き好んで魔物など回復をするというのか。

 だからネロ自身も「回復魔法」を魔物に掛けるのが今回の初の試みなのだ。


 この世界は平和だった。だが、その常識も今は崩れ、いつ死ぬかも分からない世界になってしまったのだ。

 そんな世界になってしまった幸太達が住む地球の最大の脅威が────魔物だと言うのに。


「でも、出来なくは無いんだろ?なら、一か八かでも試して見てくれよ、ソレが無理だったら諦めるからさ………」


 でも、それでもそんな事は関係無いとやってくれと言って懇願してくる幸太をネロは愛おしい物でも見るように一瞬見ると決意した。


「────分かった。幸太君の言う通り成功をするかは五分五分だろうね。────別にこれはゴブリンにちなんでボケで言っているんじゃ無いからね?」

「────んなの言われなくても分かってるわ!変な事を言わないで早くやるならやってくれ………」


 ネロの少しふざけている態度にため息を吐きながら幸太は伝えた。


「何さ、ちょっとしたユーモアじゃ無いか!!────これだから幸太君は………」


 何かブツブツと言っている様だったが、漸くゴブリンキングを治してくれるようで側まで行くと目を瞑りゴブリンキングに手をかざした。


「はぁ────「神の御加護よ、この者に安らぎの力を────回復魔法 「エクストラ ヒール」!」」


 ネロが詠唱を唱えると、ネロが翳していた両手から緑色の少し安らぎを与える光がゴブリンキングに注がれた。


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