第20話 力とチカラ





 話が付いた幸太が自分の元に向かってきているのが分かったからか、律儀に待っていたゴブリンキングは顔を向けた。


 そんなゴブリンキングに知り合いに気安く声を掛けるように幸太は話しかけた。


「悪い、待たせたな!もうこっちは話は済んだから……後は俺達のバトルだけだなァ?」

「そうだナ、だが一つ言わせてモらうと少しオマエ等の話を聞いていたガ──この場にいる人間はバカばかリなのカ?」


 そんな言葉を聞き、幸太は可笑しそうに笑ってしまった。


「クククッ!そうかもナァ。多分そうだろうナァ。お前ら魔物からしてもそう見えるなら馬鹿な奴が人間には多いのかもしれない。まぁ、中にはちゃんと真面な奴がいるがな」

「そうカ、ならお前は──真面なヤツカ?」


 幸太はそう聞かれたのでニヒルな笑みを作ると逆に聞き返した。


「お前にはそう見えるか?」

「フッ、見えンな……こんな死ぬかも分からナイ場所でそんな嬉しソうな笑みを浮かべるんダカラな」

「その通り!そうなるとお前も中々だぞ?魔物なのに人を襲わないなんてナァ?」

「……そうカモナ」


 そう言うと暫し2人は笑い合っていた。


「「はははははっ!!」」


 だが、長くは続く事はなく。


「「……」」


 ──笑いはピタリと止まった。


 笑いが止まると、決戦の火蓋を下ろす様に言葉が投下された。


「──もう、俺らには交わす言葉もないだから拳と……」

「──そうダナ。話はもうイイ。ダカラ本能がそうしろと言う様に力で……」


 2人は闘気を纏わせる様に自分の足に力を入れると最後の言葉を紡いだ。



「お前を」「おマエを」




「「ねじ伏せる!!」」




 そう言うと、2人は自分の武器を打ちつけ合った。


 幸太は自慢の拳、ゴブリンキングは無骨のオノを使い両者が衝突した時「ガンッ!!」と甲高い音が鳴り。


 そのぶつかり合いで出来た振動は「ダンジョン内」を震わせるのだった。



 ◇



「ハハハッァーー!楽しいナァ!ナァ?ゴブリンキングゥー!?」 


 幸太は話しながらも執拗に自分の体重を乗せたパンチ・蹴りをゴブリンキングに浴びせ続ける。


 幸太の攻撃はただのパンチと蹴りに見えるかもしれないが、幸太の血が滲む様な120年間の修行はしっかりと成果を発揮していた。

 120年間で培ってきた洗練された動きは本番の今でも十全に発揮され、ゴブリンキングの攻撃を受けるどころか、攻撃を交わし、または受け流しそこで出来た隙をつき攻撃を繰り返し、繰り返しで幸太が完全に優位な戦いになっていた。


「グゥっ──楽しい。楽しいが……ヤるなぁ──人間っ!!」


 ゴブリンキングはそんな事を言い、笑みを絶やさないが、幸太にやられたのか所々血が出たりアザになったりしていて観る側によっては満身創痍劣勢に見える。


 なら、「ゴブリンキングが弱いのでは?」と思うかもしれないが、それも違う。


 元々、魔物には強さの基準で「ランク」という形式で呼ばれている。簡単に例で出すと最初に幸太が戦ったゴブリンなんかは最低ランクの「F」ランクになる。だが、この「ダンジョン」が「隠しダンジョン」という事があり。ただのゴブリンでも「D」ランク程の強さになっている。


 ランクは、低い順から「F」ランク〜「SS」ランクまでがある、例外に「SSS」というランクもあるというが、これは「神大のモンスター」や「神クラス」と言われ今は人が見た事がないのであまり今は考えなくてもいいだろう。


 その中でゴブリンキングは何処の位置に付くかと言われれば──「C」ランクだ。今の説明を聞くと弱い様に聞こえるだろう?だがそれは違う。


 ランクの強さにも基準がある、それが。



---------------------------------------------------------------


強さの基準


・「F」ランク: 一般男性でもナイフを持ってれば倒せる


・「E」ランク: 拳銃が必要になる


・「D」ランク: マグナムやロケットランチャー類じゃないと倒せない、それでも倒せない場合がある


・「C」ランク: 戦車が必要


・「B」ランク: 自衛隊や装備を揃えた軍隊が必須


・「A」ランク: 国対魔物レベル


・「S〜SSS」ランク: 未知のレベル


---------------------------------------------------------------


 ──となり。 


 ゴブリンキングであり、それも亜種、変異種の人語を話すと言うと軽く「B」〜「A」のランク帯は絶対にある強さだ。なのでまったく弱くはないのだ。それどころかそんな魔物を圧倒している幸太こそが強くなりすぎなのだ。だからか、戦いももう終盤に近付いていた。


「──どうしたよ?ゴブリンキング?まだやれるだろ?」


 幸太はそう呼びかけるがとうのゴブリンキングは──


「グフっ!……コの状況が見えてソウ言えるならオマエノアたまの中はお花バタケなんだろうナッ──グゥッ!!」


 最初から持っていた無骨のオノを杖の様にして身体中から紫色の血を垂れ流しながらも息も絶え絶えで今は漸く立っていられている状況だ。あの後は幸太に背骨・左腕・左足を折られ本当に満身創痍状態になっていた。


 でも、ゴブリンキングもやられっ放しでは無かった。一矢報いる為に幸太の攻撃を喰らってもいいと思い、幸太に攻撃をされる際に避ける事をせずに捨て身の特攻で持っていたオノで幸太の頭を割る勢いで振り下ろしたのに……ただの片手に自慢の一撃が止められたうえに逆に左腕を折られてしまった。


 あの時は「どれだけ感が良いのだ」と、ゴブリンキングはもう笑う他なかった。


 その後は片手をやられたので防戦一方になり幸太に今の状態にされてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る