第15話 不遜な気配


 


 さっきは幸太に助けてもらった皆だったが、あの凄まじい強さ。それに加えて「スキル無しウァースリィス」という事でどう対応をすればいいのか分からなく話しかけられなかった。だが、いざ話してみたら普通の少年だと思ったのだ。

 そんな中、まだ安藤と佐々木が「ぎゃー、ぎゃー」と喧しく話しかけてくるが幸太はある一点を見つめるだけで何も反応を示さなかった。


「……」


 その事に、2人もおかしいと思ったのか幸太に話しかける。


「工藤君、どうしたの?」

「そうだよ、お前いきなり無言になってどうしたんだ?……まさか!お前奈々ちゃんに抱きつかれているからってエロい事を考えているんじゃねぇだろうなぁ!!」

「……」


 そんな事を2人に言われても今だに無言を貫いている幸太を他の皆も「どうしたんだ?」と、思った時いきなり幸太が動いた。

 安藤と佐々木の腰に手を入れたと思ったら、今さっきまでいた場所から素早く離れて、他の皆が立っている場所まで一瞬で移動した。


「「えっ……??」」


 その事に幸太にただ抱えられている2人は何が起きたのか分からなかったが、地面に下ろされた事でようやく一瞬で持ち上げられて他の皆がいる所まで連れて来れられた事に気付いた。

 幸太達に注目していた他の皆はしっかりと見ていたはずなのに幸太の動きが早過ぎて何も見えなかった為、皆目をパチパチして今の状況に驚いていた。そんな皆に幸太は背を向けながら声を掛けた。


「──これは俺からの忠告ダァ。今直ぐにここから離れろ。恐らくだが遠くからこちらに向かってヤバイ魔物が近付いてくるのがわかるからナァ」

『『『──ッ!?』』』


 そんな幸太の忠告を聞くと、その場にいる人間は身構えてしまった。ただ、その中でもリーダーの須田の判断は早かった。


索敵班サーチャー!彼の言う通り何かがこちらに近付いてきているのか確認するんだ!早く!!」

『『は、はい!!』』


 須田が直ぐに索敵が出来る人達に声を掛けた、その状況を見て幸太は少し関心をしていた。


(──ほーん?冒険者だけはあってそういう判断は良いってことね。まぁ、この中でもあのリーダーらしい須田って奴ぐらいだけどナァ……だけど違うんだよナァ。俺は「調べろ留まれ」じゃなくてここから「逃げて消えて」欲しいんだよナァ。オブラート優しくに包んで言ったつもりだったが伝わらなかったかァ)


 さて、どうするかと幸太が考えている時、先程から調べていた索敵班サーチャーの一人から反応があった。


「すみません、須田さん!調べてみたんですが、魔物の反応は何も、あり、ません」


 少し怯えながらも幸太の方に視線を向けながらハッキリと魔物がいないと伝えた。それは要するに幸太がブラフをついていると言うことなのだ。

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