冒険者との出会い

第10話 適応

 



 ネロとの一悶着いちもんちゃくはあったが修行は進み怒涛どとうの日々を幸太とネロは過ごして行った。毎日の様に走り込みを行い、考えられる限りに体を鍛えて技術を知識を闘い方を自己流だが学んでいった。


 10年…


 50年………


 100年………‥と長い間自分が納得するまで鍛えた。


 ただ、「不老不死」になったからと言っても疲れるのは疲れるし心も段々と疲弊ひへいしてしまう。そんな時は「スキル無しウァースリィス」だと馬鹿にされた不甲斐ないあの頃の自分を思い浮かべ「絶対に強くなる!」と考えながら絶対に弱音など吐かないと諦めないと誓い、修行をしていった。

 食事などはネロが料理が出来たので用意してくれてとても助かっている。風呂や寝床なども「ダンジョン内この空間」にあった物で簡易的にネロと幸太で工夫をし、なんとか作ることができ、生活するスペース拠点を作れた。修行するスペースが安全なエリアだった為かなり楽に暮らせている。そんな生活を120年程過ごしていたある時、幸太の体にある異変が起きた。


 初めは予定していた通り修行をしていたが50年程経った時、今の修行に慣れて来てしまった為今まで行っていた修行を2倍にして3倍にして5倍……10倍と徐々に増やしていったが、120年目に差し掛かるという時にいくら修行をしても疲れない事に気付いた。その事に幸太が戸惑っているとネロから助言があった。


「恐らく幸太君の体が今までやっていた修行に適応したから何も感じなくなってしまったんだと思うよ?それに僕達が今いる「ダンジョン内この空間」は空気も薄く、魔力密度も高い。そんな場所で普通の人間が何十年、ましてや何百年間修行をしたんだ。そりゃあ、適応もするし強くもなるさ。実際の時間経過は1日も経っていない状況なんだけどね……」


 そんな事を幸太に話すと苦笑いをしていた。


「そう、か。自分ではまったく気付かなかったな」


 自身の手を開いたり閉じたりして何か変わったか確認している幸太。


 幸太が言った通り、ネロに言われるまで自分の体が適応してきてるなどまったく気付かなかった。この頃、どんなに修行をしても疲れないし、逆に今までの修行が自分を満たしてくれない事には薄々感付いていたが既に自分の体が「ダンジョン」自体に適応していたとは思いも知らなかった。


(──まぁ、ここ約120……年間?の修行で色々と身に付いたしな、最初と比べれば成長をするよな)


 幸太自身でも「納得した」と言うように内心で考えると頷いていた。


「まぁ、逆に考えると体がもう完成したとも言えるね。僕も正直ビックリしているよ。普通は10年ぐらい修行をしたら「次は魔物を倒して〜」となると思ったら120年間も飽きもせずに修行を続けちゃうんだからね。「努力」をすると言っても限度があると思っていたけど」


 ネロには逆に呆れられていた様だ。


「いや、俺も最初はネロの言う通り10年が限度だろうと思ったさ。けど、やってみたら修行は辛いけど何かをやる度に身についていく感じが段々と楽しくなってきてな。なんか気付いたらこんな長い年月の間修行をしてたわ。でも時魔法ロストマジックって凄えよな。こんなに長い間修行していても1日も時間は経ってないって事だろ?」


 幸太は自分の事に少し呆れながらも、ネロの時魔法ロストマジックの事を絶賛評価していた。


 その事にネロも「あおっても今夜の夜ご飯しか出さないよ?」と言うと、少し嬉しそうな満更でも無いような顔をした後、そんな幸太にある提案を持ち掛けた。


「──なら、さっき僕も言った様にもう魔物との戦いに修行を移行しても良いんじゃ無い?もし怪我をしても僕が治せるし……どうする?」


 ネロに質問された幸太はその意味を理解すると最高の修行相手……獲物でも見つけた様に眼光がんこうを鋭くしていた。


(聞く意味が無かった様だね。幸太君はやる気満々みたいだ)   


 なので、幸太の返事を待つ。

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