第9話 ハジメテノマホウ




 幸太は良いプランだと思っていた為、何処が駄目なのか分からなかった。だからネロに聞いてみることにした。


「何か、駄目なのか?」

「うん。そのね、幸太君は「不老不死」になったから時間に縛られずに修行出来るから良いと思うんだけど、時間は有限なんだ。ここで時間が経つと共に外でも時間が経ってしまう」

「まぁ、そりゃあそうだろ?ここ──「ダンジョン」と外は一定の時間で進んでるわけだからな」


 幸太もそんな事を言われなくても分かっているのでネロの話を聞くと「何を当たり前の事を」と言う様に頷いていた。

 だが、それでも何が駄目なのか分からない為、ネロの続く話を聞く事にした。


「僕が何が言いたいかと言うと「ダンジョン」の異変が関わってくるからそんな長い時間放置出来ないって事なんだ。初めと、言ったじゃないか?だから流石にその長い期間他の「ダンジョン」を野放しにしていたら何が起こるかわからないんだよ」


 幸太が「不老不死」になって何日、何時間。無期限に修行を出来ると言ってもこの「ダンジョン内この空間」と外の時間は一緒に進んでいる為、長い時間修行していたらこれから他の「ダンジョン」になんの異変が起こるかわからないから出来れば早く外に出て異常を調べ、対処したいとの事だった。


 「ネロだけ外に出れば良いじゃないか?」と言われても制約レミテーションを結んだ為"今は"ネロ1人じゃ何処も行けないとの事だ。


「じゃあ、どうすれば良いんだ?今から行っても俺は何の役にも立たないと思うぞ?」

「そこは僕も考えているさ。良い方法が一つあるんだよ」

「……良い方法?」

「あぁ、それがね。僕の力でこの「ダンジョン内この空間」自体の時の流れを停めれば良いんだよ!!」


 そんな事を自身満々に言うネロだが、流石の幸太も「そんなスケールのでかい事は無理だろ」と思ったのか、ネロの事を胡散臭げな目線を向けていた。

 その目線に気付いたのか幸太に反論してきた。


「……何さ?その胡散臭そうな目は?……僕は妖精王だよ?初め何でも出来るって言ったじゃないか!」


(まあ、何でも出来るとは言っていたが流石に時まで操作出来るとは思ってなかったわ、どれだけ有能なんだよ……)


 自分の相棒になったネロを疑いたくは無かったが、この目で確かめないと信じられない幸太は実戦してもらう事にした。


「……じゃあやって貰って良いか?そうすれば信じられるし。それがなら時間を気にせず余裕を持って修行が出来る」

「分かったよ。ただ、時間を停めても僕達が遅くなるわけじゃないからね?「ダンジョン内この空間」自体が他の場所と遮断された状態になると考えてくれて良いよ。じゃあ行くよ!!──時魔法ロストマジック 「時間よ停滞せよタイムスォーダウン」!!」


 ネロが両手を前に出し何か呪文の様なものを唱えたと思ったら、幸太とネロの目の前の空間が歪んだ様に思えた。恐らくだがそれが「」という事なのだろう。


「──これで時間の問題は大丈夫かな?一応効果時間は一日中にしてあるけど毎日掛け直すようにするね!だから存分に修行をすると良いよ!」


(──時を操作するのも凄い事だが、それを一日中かけるのも大概凄いと思うんだがなぁ。どうせ言っても「妖精王だから!」って言うんだろうな)


 そう思う事にした幸太は納得する事にして、ネロに素直に感謝の言葉を伝えた。


「ありがとう!これで修行が出来る!「努力」が報われるという事を証明してやる!」


 幸太は決心を固め声を上げていた。

 

「どういたしまして!──ただ、これからがスタート始まりだよ?そんな君の成長を僕は見守ろう」


 ネロはそう言うと幸太にエールを送る様に手を振っていた。だが、幸太は少しだけ気になる事があったので修行の前にネロに聞いてみる事にした。


「なぁ、ネロ。ちょっと修行に入る前にお前に聞いておきたい事があったんだが──良いか?」

「ん?まだ何かあったのかい?僕は君の相棒だよ? 知識も豊富さ!何でも聞いても良いよ!!」


 何でも聞いて良いと懐の大きい所を見せてくれた。

 なのでそんなネロに思い切ってある事を聞いてみる事にした。出会った当初から幸太が気になっていた事を。


「その……ネロって女?それとも、男?」 

「……」


 その質問に始めネロは幸太がなんて言ってきたのか理解できなかった。というか理解をしたくなかった。見れば分かる事を確認してくる幸太の頭の中の考えが分からなくて。

 だが、幸太が今口にした言葉を理解すると共にネロは憤怒ふんどの表情になると、怒鳴り散らかしてきた。


「女性に決まっているだろぅがぁ!!?この田吾作ゥ!!そもそも見れば分かるダロォ!!」

「わ、悪かった!」


 怒り狂うネロを見て直ぐ様に幸太は土下座の体制になると謝った。もしかしたら、あのオオカミ型の魔物と遭遇した時よりも早い土下座命乞いだったのかもしれない。

 だが、それもあながち間違えではないかもしれない。何故なら、それよりも今のネロは怖かったのだから、しょうがない。


「はぁ──はぁ──もぅ……何処をどう見てもこんなプリティーで可愛い僕が男な訳無いでしょう?幸太君はちゃんと目、付いてるの?」

「はぃ……ちゃんと目が付いてるんですがちょっと確認の為だっただけなんで……」  


 まだネロは怒っている雰囲気を出していたので顔を上げる事なく地面に額を付けたまま対応をした。だが、幸太の言い訳がまた感に触ったのか。


「言い訳を!するんじゃ無いョォーー!?」

「ハィィーーー!!?」


 と、そんなネロからのお怒りがその後も30分程も続いた。その間ずっと正座をさせられていたので終わった頃には生まれたての小鹿の様に幸太の足はプルプルとしていた。 



 ◇足がマジで痛いそれはさておき



 ネロからのお許しを頂いた後も、まだ幸太に言い切れていないのか一人ブツブツと「性別を見間違えるなどデリカシーが無い」や「僕だって元の状態になればバインバインだよ!」と自分のちっぱいをさすっていた。その事は、出来るだけ見ない様に心掛けた。

 

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