第3話 レベル
◆
「──かはっ!──はっ……ここは、何処だ?」
漸く幸太は目を覚ましたのか咳き込みながらその場から起き上がると身体の痛みを感じながらも周りを見渡した。
何十分、何時間、気を失っていただろうか。周りは真っ暗で何も見えない。ただ幸太にはここが「ダンジョン」内という事が確信はないが何故だかそう思った。
この肌で感じられる湿った感じの洞窟内の空気、地上では見られることのない不可思議な地盤は恐らく「ダンジョン」特有のものだろうと。
「──チッ!聞いたことあるぞ。
「隠しダンジョン」というのはまだ誰も探していない「ダンジョン」の事をそう言う。
ただ、「隠しダンジョン」は「マッピング」すらされていないから安全ルートや難易度などがわからない事から熟練の「冒険者」が幾つものパーティを作って、最善の準備をしてから
なのに幸太はなんの準備も出来ていない状態、尚且つ安全ルートすら知らない。それも今まで生きて来た中で一度たりとも魔物とすら戦った事が無いという状況で、完全に詰んでいた。今の幸太の状況は猛獣が
「──は、ははっ。……何だよ。そんなに俺に死んで欲しいってか?人もそうだが、世界までもが俺に死ねと?──いいぜ、どうせ死ぬなら惨めったらしくてもいいから足掻いて足掻いて足掻きまくってやるよ!?」
幸太は叫ぶと何も考えずただガムシャラに前を突き進んだ。今はまだ魔物と会っていないがいつ
「はっ、はは!!一応今まで体を鍛えたからか動けるな!──動ける。だけどこんなの付け焼き刃にも何ねぇだろうなぁ……俺は「レベル」すらねぇし」
人々が「スキル」を手に入れると共に「ステータス」も手に入れていた、その項目にはゲームでのお馴染みの「レベル」というものもあった。
これは魔物を倒した時に出る経験値が体の中に入り、自分の「
「──ケッ!何が「レベル」だ。ゲームじゃあるまいし……」
「レベル」すら幸太には無いので、皮肉げに呟いていた。
かなり洞窟を進んだ所で奥の方が騒がしい事に気づいたのでその先に近付き様子を見に行ってみたら──魔物同士が戦っていた。
体調3メートルは背丈がある熊と2メートル程のオオカミ5頭が目まぐるしく動き戦って死闘をしていた。
(──これが魔物かよ!?俺が想像していた物よりかなり凶悪そうだぞ?あいつらに勝てるのか?それに、こんな
そう、声を出さない様に心の中で呟いた。呟いたが驚き、戦慄を覚え「この状況は逃げなくちゃヤバイんじゃ無いか?」と考えた。だが一体何処に逃げるというのか、この洞窟内はもう
幸太は魔物がこんなに強いものなのかと思っているが、ここにいる魔物が異常なのだ。
だってこの「ダンジョン」は今の地上にいるベテランの「冒険者」が束になってやっと一体を倒せるレベルの魔物しか存在しないのだから。
幸太がどうするか考えていると、ドスンっと大きな物音がしたのでそちらを見てみるとさっきまで立っていた熊型の魔物が地面に血を出しながら横たわっていた。
『『アォォォォーーン!!』』
勝った側のオオカミ型の魔物は
勝ちを嬉しそうにしながらも熊の肉を
(──弱肉強食なんて言葉はあるけど、これはグロ過ぎる……早く、ここを離れた方が良さそうだな)
そう思い後ろを振り向いた瞬間、幸太は近くにあった石を運悪く蹴ってしまった。
「まずい!」と思った時にはもう手遅れだった。
「カラン、コロロ」と洞窟内に石の音はよく響いたのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます