第2話 スキル無し
◆
初めは何の前触れも無く目の前に「ダンジョン」という現実離れしたものが出現し、人々は恐怖を覚え、日本はもう終わりかと思った。そんな中、自衛隊や警察の奮闘で世界各地にある「ダンジョン」は「立ち入り禁止区」に設定され、国の政府からは無断で立ち入っては行けないと発表があった。
だが、自分達に「スキル」がある事を知った瞬間我先にと「ダンジョン」に無断で立入りをする人が多くなり、流石にこのまま「立ち入り禁止」にすると
その規定とは。
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・年齢が15歳以上で、親からの許可を貰っている事
・「ダンジョン」内は必ず2人以上で入る事
・「スキル」を何か1つ所持している事
・自分の身の安全は自己責任である事
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──となり、この4つは最低でも守って「ダンジョン」内を
そんな中、どうしても「ダンジョン」に入りたくても入れない男がいた。
「──どこの「ダンジョン」も入らせてくれないし何が「
独り言の様に叫んでいる男こそ──
目付きは悪いが顔は整っていて話せば優しい少年なのだ。まだ年齢は15歳と普通だったら高校か「
そんな何も持たない幸太は一人、誰もいない路地を歩きながらそんな事を呟くと歩いていた。今の世界はそれほどまでに「スキル」が重要なのだ。
世界に「ダンジョン」が出来てから「工藤幸太」以外の人間全員に「スキル」と「ステータス」が現れた。その為、今では自分の「スキル」がその人間の
何も価値が無い。無用の存在。役立たずの人間と人々からみなされている。それに加えて人権もない存在として扱われ「スキル」がただ無いと言うだけで今では迫害すらされていた。
ただ、そんな中ある意味珍しい存在なのだ。幸太以外の人間が今は誰しも「スキル・ステータス」を持っているのが普通なのだから。
先程出た「冒険者育成学校」はその名の通り次世代の「冒険者」を排出する学校となっていて2年前に設立されている。
「冒険者」とは「ダンジョン」内を探索し魔物を間引いたり
そもそも、幸太が「ダンジョン」に入りたい理由は「人気者」になりたいみたいな理由では無く、昔の友人や今は縁が切れてしまった家族や幼馴染が「冒険者」として活躍している中、自分だけが何も出来ない事が悔しいからなのだ。自分だけがまだ3年前に取り残されてるのがどうしようもなく嫌で嫌でしょうがないからなのである。
ただ、いつか追いつきたいと思っていたがそのいつかがいつ来るのかもわからない状況だ。
「──叫んでも何もどうせ変わらないもんな、この3年間だってただ指を咥えて他の奴らの事を見てたわけじゃねぇ。俺だって頑張った。でも、頑張っても頑張っても何も成果は、出せなかった」
幸太はある言葉を耳にした時から「冒険者」を目指す覚悟を決めていた。
初めは自分が「
──「努力」をすれば「スキル」が現れると言う言葉を。
その言葉を聞いてからは当時、まだ中学生だった幸太はここ3年間で色々と頑張った。
「スキル」が無いと判明してから家族や友人達に居ないものとみなされて見捨てられていた幸太だったが、見捨てられた事により時間と。家が裕福だった事によりお金だけがあった。一応、親の名義でボロアパートを借りた幸太は当時通っていた中学校を不登校となり通うのを辞めた。
学校に行かなくなったのにも理由がある。どうせ学校に行っても虐められるだけだからだ。──いや、既に虐めの対象になっていた。なので、自分の居場所など既に無い事を知っていたから幸太は中学を無断欠席をする様になり、そのまま徐々に徐々にフィードアウトしていった。
そんな無駄な時間をつまらない事に浪費するよりはその空いた時間を使い修行をして強くなった方が得策だと有意義だと思った。なので1日20キロ以上の走り込みに加え、筋トレ・背筋・スクワット各100回を10セットなどをして他の学生達が勉学に励んでいる中、自分が分かる限り体を鍛え、虐め抜いた。
──でも、それでも何も「スキル」は現れなかった。
そんな無慈悲な現実に打ちのめされている時に偶々幸太が住んでいるボロアパートの近くに来ていた親に冷たい目で見られ、幼馴染や友人だった人達には暴言をはかれた。
そんな中、初めから折れかけていた信念や想いが"ポッキリ"と折れた音がした。その後は簡単だった。その状況に耐えられなかった幸太は情けないと思いながらもその場を走ってただ、逃げた。
幸太もわかっていた。もうここが潮時だと、3年間も頑張っても何も成果が現れないと。──そんなもの人間の限られている「
「ああ、でも悔しいなぁ。諦めたく無いなぁ……「冒険者」になって隣に立ちたかった奴もいるのにその資格も無し──か。はっ!笑えてくるぜ……本当に」
もう何も考える事が出来なくなりふらふらとした足取りで自分の住んでいる
ただ、歩いている時ふと違和感を覚えた。その違和感に気付い時には既に自分の知らない街並みの場所まで来ていた。
「──何処だ、ここ?こんな道、街並みは知らないぞ?いくら何も考えて無かったからとはいえ道を間違えるほど馬鹿じゃねえし……」
何かがおかしいと考えた時には遅かった。
遠くから「リーン」という鈴の音の様な音が聞こえて来た。この音を幸太も人伝からだが聞いた事があった。
「ダンジョン」の近くに長い時間いると「
「おいおい、冗談だろ?俺がいた場所はただの住宅街だぞ。何処に「ダンジョン」なんて、なんて──ッ!まさか「隠しダンジョン」かッ!?」
そう思った時には遅く、幸太の視界は暗転していた。
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