第180話

とりあえず依頼が貼ってある掲示板ではない世界の情報が載っている掲示板を私は見ることとした。

何処のギルドでも世界情勢が載っている記事をギルドないのすみに掲示しているというのは普通のこととなっているようだ。

少なくとも私が今まで見たギルドではそうだった。


「アイツら…やらかしてんなぁ」


掲示板にはデカデカととある記事が張り出されていた。

ソレは…『号外!イードラ王国冒険者ギルド長汚職問題について!』という私からしたら何とも言えない気持ちになる記事だ。

内容としては冒険者ギルド長が秘密裏に盗賊ギルドと暗殺者ギルドから裏の仕事を依頼していたとか何とか。


この盗賊ギルドというのは人の持ち物を盗むことに特化した貴族からしか盗まない義賊が集まって作られた集団の総称だ。

そして暗殺者ギルドはその名の通り要人の暗殺を仕事とする集団の総称となっている。

まぁどちらもこの時代なくてはならない必要悪とも言えるギルドなのだが民衆にとっては外聞の悪い集団であるというのは変わりない。


盗賊ギルドがなければ職につけない貧民は増えるばかりだし暗殺ギルドがなければ屑みたいな貴族が増えるばかりだ。

そう言った面ではなくてはならない存在なわけだが…そもそも集まってギルドでやっているやつは盗んだり殺したりするがギルドの規定によって調査したりした後に悪と断定したら実行するホワイトな集団である。

ソレを告発したところで私みたいなちゃんとした知識を持つ人からすれば「へぇ…そうなんだ」程度なのだがその知識を持たない人からすれば…まぁそういうことだ。


「…貴族なら知ってて当然なのだがなぁ…はぁ」


そう呟いてため息がついでてしまう…ため息が出ると幸福が吐き出されてしまうと何処かで聞いたことがあるが何処で聞いたんだったか。

この件を民衆に暴露、告発したのは『正義の剣』というクランだ。

クランというのはパーティを拡大したものであり集団が師団として動くことを主な活動とした団体とでもいうべきか。

わかりやすく言うとすれば前世の〇〇組みたいなヤクザ集団の異世界版みたいな感じだ。


まぁそんなことよりその告発した集団のクランの団長と副団長が問題なのだ。

今回の告発をしたのは『正義の剣』団長『神の子』レイベル・イードラ・ロード・カイリエ、『風魔剣』コウキ・フォードフロウ・フォン・フレイリーンという片や王族、片や一応養子だが伯爵といった大物であるということが問題だ。

この事態は国の影とも国を守護するとも言える盗賊ギルドと暗殺者ギルド…そして冒険者ギルドすらも敵へと回す行為だ。


「さて…王家はこのことをどう立ち回るのか見ものだね」


この失態とも言える行動はイードラ王国という国自体を大きく揺らすことになることだろう。

何せ盗賊、暗殺者ギルドがあるのは何もイードラ王国だけではない。

この大陸の国々に点在するしとある略奪国家とも言えるところは盗賊ギルドは国の主要機関である。

イードラ王国は荒れるだろうな…全くもって馬鹿なことをしているな。


「私はこういった馬鹿なことはしないようにしよう」


私がコイツらの同級生で関係者だと思われても嫌だからな。

私は私らしく傍観者として貫き冒険者ギルドに貢献していくこととしようではないか。


…にしてもこの事態で冒険者ギルドも何処か変わるだろうな…この機会に上は何かしら冒険者のルールとも言える規定を変えてくるだろう。

ソレがこちらとしていい条件になるか悪い条件になるかは分からないがな。


というわけで私はこの機会に貢献度を稼がせてもらうこととした。

今張り出されている依頼は…海中街の空気供給装置の修理、ウォーターグラスの採取、エレキフィッシュの狩猟…とまぁ色々な依頼があるが簡単で割りのいい依頼は午前中に取られて無くなっている。

残っているのは普通のかそれ以下かの依頼だ。


「私が出来そうなのは…コレとかかな?」


手に取った依頼はカイメンスイレンソウの採取…漢字にすると海綿睡蓮草という海綿というスポンジ状のサンゴみたいに生えてるやつが睡蓮みたく海面まで伸びているというものだ。

確か採取するのは海面に広がった部分だけで海面より下のは切り取っても時間が経てばまた海面に生えてくるっていうやつだったはずだ。


「この依頼を受けてくれるんですね!コレがあると海中街への空気供給装置に支障を来たすので人族の冒険者さん絶対に…絶対に成功させてくださいね!」


念押しされながらも受付が必死になりながら依頼の受領された…そういえば海綿ってのは海水を落として加工すれば高級品になるんだったか。

そう思いながらマップを開きカイメンスイレンソウの生えたとされる海中街空気供給装置に行くこととした。

ソレがあるのはこの海上国家より少し離れた海面にある孤島にあるようなので時間を見つけて改良を施した『飛翔』を使い海面をスィーっと移動する。


まぁ実際のところは上下に揺れながらバランスをとりながらの移動となっているのだが。

この魔法陣を改良した点といえば消費魔力を少なくしたぐらいで大した改良ともいえないのだが…というかこれ以上改良するにはどうすればいいのかが思い浮かばないってのが理由だ。

何かインスピレーションの浮かぶ出来事やら新しい魔法陣を見せてくれるやつがいればこの問題も解決しそうなんだが…本当に魔法陣を使った魔術をやるやつがいないんだよなぁ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る