第178話

文献というのは噛めば噛むほど味が出てくるスルメのように読めば読むほどその内容は味のある内容となって頭に叩き込まれてくる。

確か昨日はこの国の成り立ちとかを色々と調べていたんだったか…そう思いながらも私は今日もこの教会の図書室へと赴いていた。

図書館につくなり昨日もいた司書に「今日は倒れるなよ」と嫌味のようなことを言われるが気にせずに目印を立てた神話の載っている本を手に取り徐にソレを開いては立ち読みをしそのまま歩き開いている適当な椅子へと腰を下ろした。


「と、届かない…」


やはり体型が子供だからだろうか椅子の座る場所が私の喉らへんにある。

というのもこの図書館には大人が座る背丈の椅子しかないのが問題だ…昨日もこの椅子に座るのは苦労した。

全くこの国は子供に優しくないなと私は思うわけだよ。

他のところだったらちゃんと子供用の椅子は用意してあったというのに。


私が手に取った本は『天よりに來し水の王』というあの螺旋階段で見た本のタイトルが書かれた一冊。

ボロボロの小説ではなくちゃんとした表紙もある本だ。

手に取った時ペラペラと捲ると螺旋階段で見た時とは違う内容ではあったがコレも縁だと思い手に取った次第だ。


「さて、もう何冊か持ってくるか」


私がそう呟くと司書がその本を読んでもないのに違う本持ってくるのかと咎める目を向けてくるが昨日もここにいたが誰もここには来なかったから別にいいだろうと頭の中で反論し違う本を手に取る。

そうしてコレ読みたいコレは別に…と選別し机の上に本の山ができたところでようやく私は本を読み出した。


にしても本を選ぶのに30分程時間がかかったのだがその間も人が来ることはなかった。

まぁそれだけ此処には人気がないということなのだろう。


…少女読書中…


読むこと数時間が経過した。

朝一に此処に来たからもう昼頃といった感じだろう。

そういえば今日はアルキアンが宿を出る前に何か言っていた気がする…まぁ覚えてないってことはあんまし重要なことはいっててなかったんだろう知らんけど。


「とりあえず纏めれることはメモに纏めたし…そろそろいいかな」


そう呟き本を手に持ち元の場所へと戻していく。

この国のことやこの国が崇めている神のことも…まぁ少ししか情報はなかったが知ることができた。

私は本を全て戻し終わると教会の外まで歩き昨日も座ったベンチへと座ると昼ご飯となる物を虚空庫の飽食の胃袋から取り出すとソレを食べつつ先程までメモをしていた紙を取り出し読む。


色々な本からこの国の神と崇める存在のことを調べていくと共通点がいくつも書かれていた。

姿は大きくその存在は天から水と共に降りてきた…ソレは鰭を持ち触手を持ち大きな鉤爪と竜と呼ばれる存在のような鳥とは違う大きな翼を背に持つ天と海を融合したような存在が舞い降りた。

そして此処からは本ごとに違う表現がされているがある本では建国の母が神に見そめられ守護神としてこの国を守るようになっただとか神は建国の母を穢らわしい悪魔と称し建国の母を悪魔と証明し英雄にして神となったとか色々なことが記されていた。


そしてその最後は表現は違うが全ては同じ終わり方となる。

ある本では建国の母と共に国を末長く見守る為海深くの神殿にて眠りにつくだとか悪魔を消す為に使った力を回復する為に我々が建造した神殿にて眠りにつくだとか…またある本では我々はその力を恐れ崇める代わりに我々の安寧を約束する為神殿を作りそこに封印することとしただとか色々なことが書かれていた。


まぁその魚人族が崇める神というのはとんでもない力を持っているというのは確実な情報だ。

その神の力の全容はどこにも書かれていなかったのが不思議だが…とりあえずとんでもない存在がこの国の神殿にいるというのはわかった。

ソレも今はいるのかなんてわからない話だがな。


「本なんて何処までが事実かなんてわからないしな…もしかしたら全て嘘なのかも知れないし」


呟くと共に朝買ったパンを虚空庫から取り出し齧る。

味は…しょっぱい。

コレは塩パンというやつなのだろうか…やはり海が近くにあるからかこの国の名産は海から使った塩である。


非常に上質で貴族からも商人からも人気が高く此処ではソレこそ銅貨さえあれば一袋買えるぐらい安いが王国とかの内陸で商人から買うとひとつまみだけで銀貨が必要で袋にもなると数十枚の金貨が必要になってくる。

内陸だから多少の金はかかるとしても高すぎる…ってのは私が裕福な国で暮らしていた記憶がある弊害だろう。


「さて、食うもん食ったしそろそろ冒険者ギルドにでも顔を出すこととしましょうかね」


私は街を一回見渡した後虚空庫からこの国のことが記されたマップを取り出して歩き出した。

流石に私も冒険者の端くれコレでも高ランクに座っているからね…にしてもだいぶこの国の冒険者ギルドは遠いのだな。


普通だったら冒険者ギルドってのは冒険者っていう荒くれが集まるかつ活気が出るからという理由で国の中でも中心当たりに配置されるもんなんだが。

防犯という理由でも警備のしやすいとこに建てられる物だと私は思ってたのだが…どうやらこの国は今までの常識は何処までも通じないらしい。


「にしても口の中がしょっぱいなぁ…」


海の近くというか海の真ん中にあるこの国は空気に塩気があり食事も塩が使われる…それに魚人族も住んでいるということで住みやすいように宿屋で提供される普通の水にも多少の塩が含まれている。

見た目で普通の人間族とわかっていながらも提供される。

一日目はあぁこういうもんなんだなとこの国の文化に関心を寄せて楽しんでいたが二日目となると塩に飽きてくるというものだ。


この国は…私たちの常識が通じないそう思ったのだった。

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