第165話

港町を歩きアルキアンと共に食べ物を食べ歩きしつつ散策すること数時間私達は海を目の前にしていた。

何処までも青く広がりその上に船が何船も見える。

やはり貿易が盛んな町だからだろうか辺りを見回すと船から荷物を運び出す船員が多く見られ皆忙しそうに運んでいる。


「どうやらここは船着場のようだね…あっちの方行こうか」


アルキアンはそう言うと私の手を引いて船着場から離れることとした。

私としてはああいう作業をしている人を見るってのも風情といいますかもうちょっと見てたい気もしたけど…。

そんなこんなで私達は周りを見て回り最終的に浜辺に行き着いた。

浜辺には一軒の店があるのみでその浜辺で遊んでいる人はおらずただ黙々と釣りに勤しんでいる。


「ふむ、あそこで釣り用の用具が借りれるようだね」


そう言うとアルキアンは浜辺にポツンと一軒だけある店を指差し私達はそこで釣具を二つ借りることとした。

海に来たんだからどうせなら水着とか着て遊びたい気持ちであったがこう…誰も水着を着てない中で私達だけ水着で遊ぶなんて恥ずかしいしこれでよかったのかもしれないな。

にしても釣りかぁ…釣りは子供のときに一回二回ぐらい湖で祖父とブラックバス釣りをやったぐらいで後は経験ないんだよなぁ。

そこまでくると経験ないと同じ何だが…海釣りと湖釣りではきっと何かが違うのだろう…知らんけど。


私達はせっかくなら二人で釣りをしようとのことで人が集まっている場所から離れ人がいない場所で釣りをすることとした。

先ほどの店で貸してもらったのはバケツと釣り竿と釣り餌と網。

釣り餌はワームベビーというマザーワームが一度の産卵で何千と産むマザーワームの子供を使う。


このワームベビーは冒険者ギルドの魔物のことが記されている図鑑の情報によると生存競争が激しく生まれた瞬間に周りにいる兄弟の卵や周囲のベビーワームを食べ尽くし最後の一匹となったベビーワームだけが巣からでて大人になるという同族喰らいが当たり前の魔物だった筈だ

だからこのベビーワーム達には同族喰らいをしないようお酒漬けにしていると聞かされた。


因みにそのまま食うと人間でも美味いと感じられるそうで味はロックシュリンプ…海老と同じ味がするとのこと。

甲殻類じゃないのに海老の味がするとはやはり異世界味を感じる。

まぁこんな外見してるから調理して食べることが多くそのまま食べるなんて酔狂な人は少ないとのこと。

少ないってことは一応数名はそのまま食べる人がいるってことなんだよね…ハハッ私はこのまま食べないよ。


「ところで…何でアルは私のことをそんな敵を見るような目で注意深く見てるのかな?」


「え?あぁまぁレナは悪食だってことがさっき分かったからね…さっきも殻を食べてたし」


アルキアンは私が聞き取れるような小さい声でそう言うと「あ、あそこなんて良いんじゃないかな?」と誤魔化すように声を出し私の前へと出た。

全く私でもこういうキモい奴は食べないよ…全くさ。

私達は二人並んでバケツを置きベビーワームをつけた釣り糸を海に投げ入れることとした。


アルキアンは立って釣りをしているが私は虚空庫から引っ張り出した石でできた椅子に座りながら釣りをする。

視線の端でアルキアンがこちらをチラチラと視線を送ってきているように見えるがきっと気のせいだろう。


因みに先程の釣り具を借りた店の店員がベビーワームのことについて話をしてくれた。

ベビーワームを取ってくる依頼というのは少なからずある…まぁ指定ランクが高いくせして報酬が少ない為クソ依頼として有名な為冒険者ギルドで暴れたりして降格される冒険者に対して降格する代わりにこのクソ依頼を押し付けるという形で納品されるらしい。

そもそもベビーワームは成長するとミミズのような身体で巨大な生物であるワームという魔物になる…だがベビーワームを産むのはマザーワームというミミズの身体に鱗のない目のないドラゴンの頭を持つAランクの冒険者パーティでも苦戦する魔物だ。


ベビーワームの周りにはそんな巨大なワームがおりもしかしたらAランク冒険者でも死を覚悟するマザーワームもいるかもしれないとされている為指定ランクはCやBに振り分けられる。

流石にそれで子供を取られたら怒り狂ってマザーワームが逆襲に来るのではないかと思うが…どうやらマザーワームは産んだ子供のことはほったらかしにするらしくその心配はないとのこと。


「お、糸が引いてる?」


釣り糸が引っ張られているような感覚がしそのままにしておくと釣り竿がしなり出した為釣り竿を上に引っ張りその後にリールで釣り糸を巻き上げる。

動画で見た知識しかないがブッキングだかフッキングだかをしてからリールを巻いているのはよく見たからこうすることで魚が喰らい付いている餌の針に魚の口に突き刺さるって奴だったと思う。


視線の端ではアルキアンがオロオロと私の手伝いをしようとしているが何をしようか思い浮かばないって感じでうろついているがそんなのは気にしない。

このままリールを引いて…そして姿が見えたところで網で捕獲!


外見は綺麗な銀色で背中に斑点があるそんな魚…うんサバが釣れました。

この世界でどういう名称なのかわからないがとりあえずサバが釣れた…この世界のサバは果たして美味いのだろうか?

そしてとりあえずアルキアンは落ち着け。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る