第162話
決着が終わり次々に解散していき賭けによって手に入れた金も手に入った。
まぁちょっと賭け金が多すぎたせいで小切手を渡されたがね。
この金で何を買うか悩んでいると前方からアルキアンが歩いてきた。
「やぁ…アルキアンすごい活躍だったね?」
「いやいや…殿下が花を持たせてくれただけだよ。それよりもここから早く離れようか?」
そう言うとアルキアンは私の手を引き足早にそこから離れていく。
アルキアンは殿下が花を持たせてくれたと言いつつその顔は「やってやったぜ」という感情で満ちている表情をしておりその言葉が建前だと言うことが即座に分かった。
私達がそうして歩くとその後ろをこの学園の生徒が追うようにして追跡してくる。
コレは…あれだな多分勧誘ってやつだ。
この学園には多くの部活とかがあるのだが一人一人やりたい部活やらがありそれにこの学園は貴族も多いせいで自分至上主義者も多い。
そのせいとあってか自分で部活を作り大成をなしたいと思う者が少なからずおり学園における貴族も平民も平等と謳う条例を盾にして無理矢理誘うってのが今起こっていることだ。
そうして勧誘から逃れること数分私達は学園の外へ飛び出しとあるこの街の一角へと訪れていた。
まぁなんだ…遂に私も寮から卒業したってことだ。
寮での生活も図書室とかが近いし教室からも近いから少々寝起きが遅くても間に合うってのが利点だったが…何と言いますかあそこにいるとトラブルに巻き込まれそうだったのでアルキアンの屋敷にいる時に学園にはあそこの寮からここの一軒家に荷物を移すように手紙で送っていたのだ。
「へぇ…ここがレナの屋敷なんだね。お金とか大丈夫だったかい?」
「まぁ…冒険者や探索者として稼いだ金が余ってるしそこまで高くない物件だよ。それにさっきの決闘で家分以上のお金は手に入ったしね」
アルキアンは「そ、そうなんだ」と言いつつ照れくさそうな顔をしながら頭を掻いた。
…何処に照れる要素があったんだろうか?
まぁそんな事はどうでもいいか…とりあえず私はその一軒家の中へと入っていった。
一応建設するにあたって内装とか色々とか要望して自分の持っていた器具やら何やらを設置するようにここの冒険者ギルドに依頼したんだが…。
「うん…依頼にしては雑な気がするなぁ。コレとかもう壊れてるし」
やはり自分でやるべきだっただろうと今更後悔する。
床は剣を引きずった跡があり壁には手形が付いている箱に入れていた壊れ物の品は雑に置いたせいだろうか…液体漏れしており床にシミさえできていた。
それに…あぁ私が一品ものとして鍛冶屋に生産させた豪華なデザインの筆が入れていた箱の中からなくなっているな。
アレは魔法陣を制作する過程で描く物自体ぐらいは性能がいいやつを使いたかったから作ったやつで結構思い入れもあったやつだったんだが。
しょうがないがギルドには依頼の失敗とそれによる弁償とか諸々の報告をしなくちゃな…。
「レナ…大丈夫?」
私がその状態に肩を下ろしているとアルキアンが肩をそっと叩きこちらを心配してくる。
それに対して「大丈夫…」と呟きながら家全体を見ることとした。
見れば見るほどまるで強盗にでも入られたかのような内装となっており気分が落ち込む…。
「ベットもなんか木の破片とか突き刺さってるし土だらけ…食料も持ち去られているか」
確か今回冒険者ギルドに依頼したランクはEランクに指定していたはずだったから荒くれ者とか崩れの者が受けたのか…。
コレはこの家の弁償も請求しないといけないな…。
「あ、ねぇレナそれじゃ僕のここでの屋敷に来るつもりはないかい?ここじゃ休まりもしないだろうし」
そういってくれたので私はそれに甘えることとした。
また手を引かれて街を移動し貴族専用の集合住宅地を抜けて行く。
アルキアンは貴族の中でもそこそこ偉い地位の子息のため集団住宅より一軒家をここに構えているようだ。
そうして歩くことまた数分豪華な外装の屋敷へと辿り着いた。
「ここが僕の家だよ…もう後から来る馬車はついたようだね…ほら」
そうアルキアンが言いつつ彼が指差す先を見るとそこには数台の馬車がおりそこからメイド姿の者やタシキード姿の執事が荷物を運び出している。
そしてアルキアンの姿を見た一人のメイドがコチラへと走ってきてすぐさま屋敷の中へと案内をしてくれた。
アルキアン用の部屋と私用の部屋へと案内されそれぞれ休憩をすることとした。
各自自由行動と言うわけなのだが…まぁ私はアルキアンの部屋に即座に行って本を読むことしかしないんだがな。
ちなみにだがアルキアンは部屋に着いて早々に長机に座り資料を読み漁っては紙に書き記している。
「そういえばレナはずっと本読んでいるよね?その本何読んでるの?」
「ん?あぁ…『古代人が生み出した偽神の存在について』っていう論文に似た本」
コレは前に街に出た時に裏路地の露店で高額販売されていたところに惚れて買ってしまった本だ。
まぁ家の半値ぐらいの金額であったが結構面白いし分厚いから時間を潰せる。
要約すると古代時代に人が生み出した偽物の神の作成方法について記されている…まぁそれが本当かどうかは分からないがコレを書いた著者はコレに記された方法で神を作り出したとのこと。
「また難しい本読んでるね~」
その言葉を最後にアルキアンはまた長机の上にある資料へと目を移し作業を開始した。
私もそれに倣い目を本に移し本を読み続けるのであった。
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