第152話
私がそう声を上げるとアルキアンがディーセ目掛けて走って来る姿が確認できた。
その行動にディーセは何とかしてその場から離れようと身を動かしその身に絡みついた火の鎖を解こうとするが動けば動くほど火の魔力が浸透し鎖が枝分かれして動けなくなっていく。
動けば動くほど絡み的を動けなくする、コレが私が改良を施した魔術だ。
本来のファイアチェーンはただ絡むだけだが…ふむ実験は成功といったところだろう。
まぁコレまで試せる相手もいなかったし試そうともしなかった私の怠慢であると言えばその通りなんだが。
ま、成功したんだからそれでいいじゃないか。
「うおぉぉぉぉッ!」
アルキアンが雄叫びを上げて動けないディーセの懐へと飛び込むとディーセにその手に持つ光の封印石を押し付けた。
その瞬間周りの空気が変わりディーセの姿がぼやける。
身体は光の粒へと分解されていきアルキアンが持つ光の封印石へと吸い込まれていく。
光の封印石は魔封の力と周囲の魔力を吸い込む収集の力を持つが生物…つまりは魔力がある奴しか封印ができない。
簡単にいうとそこらの石や魔力を持たない子の魔力は封印出来ないってわけだ。
その封印したい魔力を留める器が魔石なわけだが…光の魔力しか封印しないよう細工はしているものの試験運用などしていない正に一発目の代物だからアレが急にぶっ壊れるなんてこともあり得る。
「だがそれも杞憂に終わりそうだな…」
今もなお光の封印石はディーセの身体である魔力を吸い封印していく。
ここからでもディーセの姿が小さくなっていることが分かるぐらいには封印している。
コレは成功といっても指し違いないのではないだろうか?
「ガァァこんナ…所で終ワる訳にはァァァッ!」
ディーセはそう叫びどうにか身を縛る鎖を外そうともがくが更に絡まりついていき…そしてディーセの全ての身体を光の封印石は吸い込んで封印した。
こうなれば後は私の仕事だ。
そう思いつつアルキアンのそばへと近づくとアルキアンがその手に持つ光の封印石を私に渡して来る。
それは作った時と変わって魔石の色である紫の光を放ちそれはその魔石自体が光り輝いているということを証明している。
ここまで光を放つなんて…目に入れるにも眩しくてあまり直視したくはないくらいだ。
コレがディーセの魂と身体を封じていると思うと笑えて来る。
やっとあの憎たらしい奴を倒せるのだからコレほど素晴らしいことはないだろう。
だがコレで全ての復讐が完了する…やっとコレでこの身体の持ち主の復讐が完了する。
ディーセ…コイツは王国から指名手配されていたポイズンスネーク盗賊団とか何とかを率いていた首領だとどこかで読んだ気がする。
…私の中に眠る少女の魂に刻み込まれた執念の記憶にはそのポイズンスネーク盗賊団の掲げる憎き蛇の旗が目の裏に張り付いている。
つまりはこの身体の持ち主の少女の親はコイツが率いていた盗賊団に殺されたという訳だ。
全くどんな因果かわからないがコイツとはそんな縁があったって訳だ。
頭の中ではいつもなら聞こえてこないような声色が響いている。
怨嗟に執念にどうしようもない怒りそれが掻き混ざったような声がコイツにもっと苦痛をと叫ぶ。
親の仇であり母親を目の前で殺されたその怒り、生き残って国まで来た父親も考えてみればコイツら盗賊団の仲間が殺したのだろう。
何せディーセはこの国に取り入り参謀までのし上がってた奴だからな。
だったらその仲間も国のどこかに入り込んでいてもおかしくはない。
だからこそ怒りが湧く。
私は全く…いや胸糞悪りぃしあの時の怒りはあるがそれを勝る怒りが身を焦がす勢いで湧いて来る。
「魔法陣展開…『異次元庫』」
私が手のひらに小さな穴が空間に開く。
コレが最後の手段。
封印した魔石はそのままにしていたらどうなるかなんて火を見るより明らか。
そのままだと周囲の魔素がなくなったらその空間に魔石から光の粒子が溢れてまたディーセは復活を遂げてしまうことだろう。
だからこそ『虚空庫』の失敗版である『異次元庫』を使うのだ。
昔に虚空庫を作り出した時何故こうなっているのかこの世界はどのような成り立ちで魔力が存在しているのか?
そんなことを漠然と考えながら魔力を弄くり回している最中に原理は分からんが空間にもう一つの空間を繋ぐ穴を作り出してしまったことから始まった一番最初に作り出した虚空庫だ。
何を入れても取り出せないし入れたらポリゴンのように溶けてなくなっていく。
どう頑張っても小さい私の腕一本分しか入らない。
何にもならないしなんの利益もない…すぐに閉じてしまうから魔法をこの中に入れるのも至難を極める。
そんなどうしようもないコレをこうして使える日が来るとは…今回の戦闘で使おうとも思わなかった魔術をコレでもかと使ってきた。
今度もう一度使える使えないに限らず改良してみるのも一興か。
「というわけで…コレで終わりだディーセ…悔やめそして怨めるものなら怨め…苦痛もなく誰かに見られることもなく消えろ私の前から今後一切現れないでくれ」
それに呼応するかのように手の中にある光の封印石はより一層光を放つ。
この声もこの中で封じられている奴に聞こえているのだろうか?
「ま、どうでもいいかそんなこと…では、崩壊の海へ行ってらっしゃい…永遠にな」
そう言い放ち封印虚空庫の中に光の封印石を入れた。
光り輝く魔石は徐々にその姿を変えポリゴンとなってゆき…そしてボロボロになっていき見る影も無くしていく。
それと同時に異次元庫に舞ったポリゴンを逃すまいと異次元庫が閉じられていく。
コレで静かに私と少女による復讐劇が終演を迎えたのだった。
*今回使った魔術一覧*
異次元庫:レナが最初に作り出した魔力によって創り出した空間。作られた際に何にを用途に作ったのか考えてないから何もなく入れられたものは意味を持つという意味が存在しないため存在を維持できなくなり入った物は崩壊を始める。ただ名前はつけられたため何も無い空間がそこには存在する。
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