第151話

私が大量の魔力を使い発射した魔術は全弾四方八方からディーセへ着弾し大きなダメージを与えたように思える。

まぁダメージを与えた与えてないにしても相手の体力を削ったことに変わりは無いから少なくとも少しはこちら側が優勢になったことは確実だろう。


それに見る限りディーセの状態は私が攻撃する前と変わって光が少し薄くなってるし身の前に出した盾とその身につけた鎧はどちらも何か大きな衝撃が加わったようにヒビが入りそのヒビの隙間からは白い煙のようなものが漏れている。

あれは魔力体を覆う外殻となっている鎧が崩れたことで魔力が漏れているといった感じなのだろうか?

…となると魔力体になるということは魔力を自由自在に使える代わりにその器となる鎧に傷が付くと身体を犠牲とした得た多大なる魔力が外に漏出してしまうという欠点があるわけか。


かなり大きな欠点ではないか。

それだったらその器である鎧をぶっ壊せばいいように思えるが…あぁこうして考えているうちにもうヒビが修復されてしまったか。

それに多大なる魔力もアイツには備わっている…どうやってもその魔力を尽かすことは難しい無理難題と言える。


「小癪なァァァッ!」


そう思い耽る中ヨロヨロとその身を立たせディーセは小さくなった盾を大剣に変えこちらへと走って来る。

他の誰かがコレを見ていたら何かの失敗かと言われそうだがコレが私とアルキアンの作戦の一部だ。

私達は策士でもなければ軍に属する軍人でもない。

一方はただの一般冒険者である平民でありもう一方は兵を率いたことはあるが陣形や策を立てたこともないまだ幼い貴族である。


私達に考えられる作戦というのは誰でも考えられる子供の悪戯の様なものだ。

相手を怒らせ注意を向かせその隙をついて何かをする。

そのぐらいしか幾つもの記憶を持つ私でも思いつかない。


さて…相手にこのままやられるのも癪だし何かしてもっと私に注目を移さなければならない。

こういうのもなんだがこの役目はアルキアンの方が適していると思うが最後の役目それが私には出来ないと確定しているためこの役目を私が務めることとなったのだ。


「魔法陣展開…『守護結界』ッ!」


そう言い発動させると即座に私を囲む4つの壁が空中に形成されると同時に正面より火花と轟音が放たれる。

どうやら危機一髪といったところだろう。

目の前では走ってきたディーセが横薙ぎで大剣を結界に押し付けていた。

結界の形成時に中心部から上と下に結界が伸びるように形成されていくというのがこの魔術の形成の特徴のためそこをつかれたというわけか…まぁ一度見せた技だこうして覚えられているのもしょうがないか。

…だが次コレを使うのはかなり危険が伴うな。


目の前にいるディーセは私の守護結界がコレでは壊せないと分かると判断したのか一歩後ろに下がり両手で大剣を構え…ってコレはヤバいかも知れないッ!

おそらくディーセがやろうとしているのは『突き』であろう。


西洋剣…この場合はブロードソードいやあれは片手剣だったはずだからこの場合は両手剣であるツーハンデッドソード

というべきか。

西洋剣というものは日本刀のように鋭利な刃で『斬る』に重点には置かず重い質量を持った刃で『叩っ斬る』というのが重点に置かれている。

そのおかげでディーセが持つツーハンデッドソードは質量がある。

確かそのツーハンデッドソードから放たれる『突き』は鉄の盾を貫く…とか何処かで外国人から聞いたことがある。


どこか誇張した言葉かと思うがこうして目の前にしてみるとそれも本当に思える。

そんな攻撃がこの結界にされる?

いやいや…こういっちゃぁなんだが結界というのはガラスのように一点攻撃に弱い。

多くの人が集まり作り出す大結界ならいざ知らず個人が作り出すただの結界なんてたかが知れる。


「ははは…こんな窮地は前もあった気がするねぇ」


まさに絶体絶命何か行動をしなければ結界なんぞ破られそのまま私の身体をも貫かれることとなるだろう。

だったらこうするしかねぇな…魔法陣を改造するッ!

改造する要素は元の私を起点として発動するのでは無く結界の強度は下がり展開できる結界数も下がるが…自分で結界の位置を操作できるという風に改造して…と。


剣を後ろに下がらして運動エネルギーと共に放つ攻撃ならそのエネルギーを無くし防ぐもしくは相手に結界を押し付けその攻撃自体を出来なくする。

どうせその攻撃をした所でその攻撃をした後には必ず反動が生まれ少しの隙ができるしそうしなくても結界によりこちらへと攻撃が不可能となる。

その隙ができれば私たちの最終作戦が実行できる。


「改造完了ッ!行け守護結界ッ!」


そう言い放ち結界を飛ばすと共に後ろへと身体を飛ばし危険な範囲から逃れる。

そうして飛ばされた結界は私を攻撃できないと悟り激昂したディーセによって『突き』が繰り出される。

『突き』は見事に結界に突き刺さり先ほどとは比にならない火花を散らし轟音と衝撃波を残し砕け散る。

ディーセはまるで次はお前がこうなる番だと言わんばかりにこちらへと顔を向けて来るが…そうなることはもう無いだろう。


何せディーセは怒りに身を任せて全身を使い放った『突き』によって隙が生まれている。

伸ばし切ったその腕を戻し先ほどまで持ってた片手剣では無く重い両手で持つような大剣を持ちここまで走って来るのは大変だろう。

頭の中で魔法陣を構築し手をディーセに向けて展開する。


「魔法陣展開ッ!『ファイアチェーン』ッ!」


魔法陣を展開し魔術を起動させると共に火属性の魔力で出来た鎖がディーセの四方八方より飛び出ては絡まり拘束していく。

そう簡単に解かれないように魔力を込め雁字搦めにしていく。

だが…人の身で無いのが残念でならない。

人の身であればその火で身を焦がす大火傷を負わせながら縛ることが可能だというのに。


「だが…コレで準備は整った!今だよアルキアンッ!」


*今回使った魔術一覧*


ファイアチェーン:火の鎖を対象に打ち出し縛りつける。

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