第147話

気持ちが溢れて来る。

それはまるで子供のように自分のモノを壊されたらそれに対して憤怒するような…それでいて何かにぶつかろうと歯が疼くような喰らいつこうそして噛みちぎろうというむず痒い感情が溢れる。

出来もしない戦法に打算もなく確証もなくそれを頭から快楽物質と共に溢れた妄想じみた立ち回り方法が脳の理性を蝕んでいく。


理性が崩れ本能に染まっていく。

あぁ本当に…コレが極まってしまったハイッてやつなんだろう。

仮面で見えてないだろうが自分だからこそわかる。

私の口角が上がって今にも笑い出しそうになってしまっている…マジで笑える、笑えて来る。


あの首に噛みつけばどんな色の血を流すだろうか?

天使の血肉はどんな味がするのだろうか?

興味が絶えず色々な想定ばかりが頭を周りぐちゃぐちゃになっていく。


もはやこの数秒で理性などほとんどなくなってしまった。

今頭を駆け巡るのは先ほどのような相手の先を考える行動では無く今ある目の前の敵をどのように殺せるかというヒットアンドアウェイという私がこの世界からしてきた戦法とは全く違う方法ばかりが巡っていく。

コレじゃダメだと分かっているが制御なんて出来やしない。


ふとアルキアンの方に目を映す。

そこには頭を抱えている姿が見え少し申し訳ない気持ちになるが…まぁそんなことより今は目の前のコイツのことに集中しよう。


「下種よ…何故貴様は地に伏せぬ?この我、大天使が降臨しているのだぞ?崇めよ…そして我が主神が目指す世界の礎となりたまえッ!」


そう言い放ちディーセは光を弓に変えてこちらへと射ってくる。

私はその弓から放たれた光で出来た矢を腰から抜いて構えたナイフで弾く。

矢を弾いた瞬間思ったより矢の速度が速かったせいで弾いた手が痺れ思わず手からナイフを落としてしまいそうになってしまうが根性で耐える。


身体強化で身体を今できる最大限まで強化しナイフを持たない片手で魔法陣を描く。

身体の一部を起点に…今回の場合は腕に腕輪のように魔法陣を高速で頭の中で組み立て手を動かし構築する。

頭の中で一つ一つの魔法陣のパーツを組み立てるごとにピキッという嫌な音が鳴るが手は止めない。

おそらくコレを起動した時腕に通して魔法陣が展開されているから手を犠牲にしながら発生していくことだろう。

…きっと恐らくいや、絶対腕が使い物にならなくなるだろうけど…まぁスキルを使えば元に戻るし別に今はそんなこと考えてもしょうがないか。


足に力を入れて一歩踏み出し走り出す。

それに気づいたディーセはまたコチラへ矢を放って来るがそれも走った反動を利用して回転斬りを矢に喰らわせ霧散させる。

ディーセが撃つ矢は光の魔力で出来ていることからその残弾は魔力とイコール…つまりは無尽蔵に撃てるというわけで。


「ふむ…コレでもまだ倒れぬか…ならばコレならどうだ?」


そう言い放つともう一度矢をつがえると同時に周りの景色が歪み光の矢が形成される。

あれば恐らく魔法の詠唱がないことから見てスキルによる攻撃なのだろうと予測することができる。

走っている足を止め矢が自分の足元へと落ちたことを確認した後に矢に当たらないようにそして矢の狙いが定まらないようにジグザグに動きそして…ディーセの目の前まで移動することができた。


獣のように本能に従いナイフを振いもう一度あの時のように羽根を落とそうとするがディーセは半身をずらしてそれを避けそれと同時に光の矢を反撃と言わんばかりに放って来る。

私の今の身体能力は身体強化によってもはや化け物レベルまで引き上げられている…だからこんな攻撃さえ身体を捻り地を蹴り空中で回転するようにして下から上にかけてナイフを振り上げディーセの服に傷をつける。


「こ、この小賢しいぃ下種めッ!さっさと去ねッ!」


そう言うと弓を光の玉へとかえその玉を次は剣に変え私を真っ二つにしようと振り落として来る。

コレを待っていた…振り下ろす瞬間私を殺せると思ったその慢心。

私の身体が小さいからこそその剣は普通の感覚では当たりはしない。


私は剣が振り下げられる時を狙い懐へと潜り込む。

脚を地面につけ不動となり一息吸い込み呼吸を止めナイフを持つ手の力を抜き構える。


「沈め…我流戦闘術初ノ術『崩撃』」


腰を捻り自分の目の前にあるディーセの太ももに衝撃を喰らわせる。

喰らわせると同時に音と風が収束しそれは空気によるソニックブームのようでそれは音による超音波のようで…そんな衝撃波が私の持つナイフを通して空間へと放り出される。

血肉は崩れ骨は砕かれ目の前に穴が開く。

その穴に空気による衝撃が後から襲いかかり肉がミチミチと音を立てて千切れ…そうして私はディーセの下半身を消し去った。


「グガァッァァァ…だがまだ死なぬ死ねぬ神の加護がある限りッ!我らの肉体は滅びぬッ!」


地に落ちた上半身が喚き再生を始めるが「ココからは俺のターンだ」。

顔にナイフを振り下ろし振り下ろし振り下ろし刻み刻み頭蓋骨を貫通させ再生を促し心臓部分に手を置き魔術を放つ。

もはや色々混ざりすぎて何を撃っているのかすらわからないが血が飛び散れば効いている証拠だろう。


コイツは神の加護がある限り何たらかんたらと言った瞬間に再生を開始する。

逆に取ればそれを言わないときは再生をしていなかったというわけだ。

なら…簡単だろ?

そんな言葉吐けないぐらい…生きていても辛いことしかないことを分からせてやればいい。


もしかしたらその言葉を思い浮かべるだけで再生するかも知れない。

だから…殺す。

何度でも突き刺し腕が壊れようと擦り減ろうと無くなろうと腕を媒体に魔術を撃ち痛みと苦痛を味合わせる。


コレぐらいだったら神だって俺を見てたんならやっても良いと許可をしてくれるだろう?


「だから…地獄のようなこの世界でそのまま悔い改めろ」

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