第148話
血が肉が飛び散り胃の内容物すら飛び散り空気が悪くなっているがまだ魔術を腕から放ち攻撃を行う。
そうして…いつの間にか魔術を発動できる媒体である腕が黒く焦げストックしていた分の全ての魔術が無くなった。
終わった…下半身は無くなって上半身は粉々だ。
「アァ…マダ死ネヌ滅べヌ許されぬ…『聖言』を唱える限り我々の肉体は何度でも蘇る…おぉ主神よ。女神様…我々はまだ貴方様の役に立てるのです…許さないでくだされ…『死』を、『滅び』を、『許さない』でくだされ」
そうして半分になった焼け落ちた顔が一人でに呟き空気が変わっていく。
周りに飛び散った肉片が動き形を作り出し人の形をとっていく。
『聖言』やはり言葉が復活のサインとなって蘇っていたのかと自分の過ちに気付くがもう遅い。
魔術によって壊した身体はもうソレによって半分以上が元に戻っている。
だからもう一度…魔術を。
そう思い頭の中で魔術を構築し焦げた腕では無い方に魔法陣を展開していく。
肉体的に痛みなんてものは無いというか麻痺していると言ったほうがいいのだろうか?
頭の中では焦げた腕を回復させてその腕で撃ったほうが無傷の腕でナイフも使えるという事はわかっている…腕を治せば我流戦闘術も使えたかもしれないのに…だが俺は焦っているのだ。
倒した筈の敵が目の前で復活を遂げている。
もう復活しないと思っていた敵が予想に反して蘇っている。
そんな予想していたこととは違う事に焦っているのだ。
…次こそは、次こそは消滅させる。
そんな風に焦りながら魔法陣を腕に展開していると焦げた肩に重みを感じそちらを向いた。
そこには…仮面を外し素顔がはっきりと見える形で俺の横まで来ていた。
表情はどこか苦しいような顰めた顔をしており…それでも俺に対して微笑んでいるようにも見える。
「そんなに一人で気負わないでよ僕の英雄…コレからは僕も一緒に戦ってあげられるんだからさ頼ってよ…レナ」
そう言い放ち俺の前へと出る。
目の前で蘇るディーセは完全復活と言っていいほど元の人の形へと戻されており血走った目で俺達の方を睨んでいる。
天使の羽根はまだ再生出来てないせいで飛べないようだがそれでも光の力は使えるようでその手には光で作り出した剣と盾を持っている。
「この下種め…よくも我の身体に傷をつけたなぁ…貴様はタダでは済まさぬぞ!我が主神よ!我らに煌々しき光の力を貸し与えたまえ『神聖鎧装』ッ!」
一瞬にして広がり周りを包み込む光が放たれた後にそこに立っていたのは光で出来た鎧を纏いさっきまで持っていた剣と盾を持つ一端の騎士のような格好をした姿となっていた。
その姿から無条件に崇めたい…跪きたいという今まで思っていなかったような感情が想起するがその感情を破棄する事で感情から逃れる。
「ハハハハ…コレがコレこそが神から我ら大天使に与えられし身を護し鎧だ。人という肉体は神の光に耐えきれなくて滅びたがコレで貴様らを滅殺できるッ!」
そう言い放ち自らの力を誇示する様に剣を掲げる。
そんな有頂天になっているディーセに向かってアルキアンが言葉を告げる。
「はっ…そんなんで僕に勝てると思っているのかい?君はあの時と同じように僕達の前で倒れてもらうよ。この『憤怒』の力によってね…」
アルキアンがそうディーセに告げると身体の周りに黒い炎が浮かび上がりアルキアンの身体に付着して形作る。
それは身体に纏いつかれ鎧となりそれは背中について翼となり下半身にくっつき悪魔の様な尻尾へと変形されていく。
その姿は正に悪魔と言える姿をしており恐怖を感じる悍ましくそれでいて勇気づけられる…そんな奇妙な気持ちにさせる姿へと変えていく。
「こ、この我々を愚弄し楯突く『罪人』めがぁぁッ!神の名の下に貴様を断罪してやろう…おぉ主神よ!彼の者はありし者である…それ故に裁きの神炎を与え悔い改めさせよッ!『ジャッチメントブレイズ』ッ!」
ディーセは剣を掲げながらそう叫ぶと持つ剣から白色に染まったオーラの様に不定形な何かが剣から溢れ出しディーセは雄叫びをあげながら剣を横に振りそのオーラ…いや叫んでいた内容から見てあれが神炎というヤツなのだろうと察し今構築していた魔法陣を破棄し高速で新しい魔法陣を構築する。
それはこちらに来るまでの速度は遅いが段々と近づいてくる。
っていうかアルキアンはいつまでそこにいるつもりだアイツッ!
避けるとかの動作もないし…いやまさかとは思うがあの黒い炎が身体を完全に覆って形作るまで行動ができないとか言わないよな?
「あぁッ!クソが…ちょっとはかっこいいと思ったがコレかよ!?魔法陣展開ッ!『守護結界』ッ!」
俺は走り出してアルキアンの前へと出ると魔法陣を展開して起動する。
すると私を起点に大楯の様な分厚く重なる様に魔力でできた結界が構築され俺とアルキアンを四方八方から守る様に設置される。
その直後に来る白い炎の熱波。
こうして守護結界に守られている中でも感じられる熱気に顔を顰めてしまうがこの魔術も改良した事で魔法陣に魔力を流し続ける事で結界に入った傷を即座に直すという特性を得た為俺の魔力が尽きない限り永遠に壊されることのない不動の城塞と化す。
そして数十秒がすぎた頃ようやく白い炎は治りを見せ瓦礫を全て溶かし尽くしたその先に驚きの顔を見せるディーセの姿があった。
そんな風に守った俺だが魔力をずっと流したせいで疲れ果て今という反撃にとって一番良いチャンスでさえ動けなくなってしまっている。
だが…今の俺は一人ではない。
「ごめんね…そしてありがとう。コレで僕はようやく本気で戦えるよ」
そう俺に向かって呟きアルキアンはディーセに向かって走り出した。
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