第146話
私がディーセの片翼を切り裂いたことにより奴は空を残った翼で何とか飛ぼうと旋回しながら段々と下に落ちていく。
そこへ私は追撃を喰らわせるため地上で拾った手頃な石をディーセ目掛けて投げつけ私にヘイトを向かせる。
まさにその顔は怒り心頭といった感じの顔に表情が染まりもはや下で今まで戦っていたアルキアンのことなんて見えていないようだった。
「貴様ぁぁ誰に向かって石を投げているッ!」
そうディーセが私に言い放った時だった。
地上から黒…いや紫とも言えるような禍々しい色をしたものがディーセの背中から見え一瞬にしてディーセを呑み込んだ。
轟々とそれは燃え上がり私が獄炎舞をやった時に感じる熱風より更に熱く溶けてしまいそうな熱を感じる。
もうこうなって仕舞えば空でいつまでも漂っている意味も無いので高度を下げそうしてようやく地面に足をつける。
それと共に先程まで燃え上がっていた黒炎も治り空から炭化した人間の形をした何かが落ちて来る。
コレがアルキアンがやったと思うと…怖いなぁ。
そうして私は一息ついてからアルキアンの方を向く。
顔面には相変わらず遠くから見た割れた仮面を付けて…前見たより身長が高くなっていることを実感する。
私の頭何個分ぐらいだろうか?
少なくとも2個分ぐらいはあるのかな?
「あー…よぉ!とでも言えば良いのかな?久しぶりだねアルキアン?」
「………そうだね久しぶりだ英雄」
少し他人行儀ではあるがその声には喜色を感じる声色でその身体を動かして一歩一歩と私の方へと近づいて来る。
あぁさっき思ったことは間違いだったようだ。
あの頃は私と同じ身長だったはずだからいつの間にか年月が過ぎてここまで身長差が開いているとは思わなんだ。
頭2個じゃ足りないねぇ。
「全くいつの間にこんなに身長が伸びているんだか…」
「まぁ僕は成長期だからね…そう言う君はあの頃から変わってないように見えるよ」
アルキアンはそう言って笑って来るが…一応私も身長は伸びたはずなんだが。
というかコイツが伸びすぎなんだわ少しぐらい身長くれッ!
「アァ痛い…だガまだマだ死ねない…我らが崇め奉り信仰する主神が我々を見守ってくださる限り我々加護を受けし者は悪を滅するまで死ぬことは許されぬのだぁぁッ!」
黒く炭化していたはずのディーセは起き上がるとまるで時が戻るように炭化していた部分を普通の肌へと変え私達が何かする前に完全にさっきまでと同じ状態へと戻ってしまった。
私が切り落としたはずの翼もまるで何もなかったかのようにその背中から生えている。
あれは自己治癒能力を向上させた結果なのだろうか?
それともこの世界特有の魔法というやつで回復させた結果…はたまた本当にディーセが言う通り神の祝福または加護によって生き返ったのだろうか…。
何にしてももう一度倒してみないことには確認のしようが無い。
そう思い構えをとった時だった。
背にしていた王城が爆発し瓦礫が私達目掛けて降りかかる。
「レナッ危ないッ!」
その声と同時に謎の浮遊感を感じ目の前にあった光景が一瞬にして切り替わる。
…あぁどうやらアルキアンに抱えられて移動させられたらしい。
そうして瓦礫の方を見るとそこにはディーセともう一人の男性がその場にいた。
その男は…いつだったかレイベル殿下が渡してくれた報告書のマデリラ宗教国家に力を添えている第一王子の特徴とその容姿が合致しておりこの王城の壁を突き破り出てきた男が第一王子であり離反者であるザージスであるということを理解できた。
飛ばされてきたその向こうではあの時街で見かけた黒い外套を纏った人物…クラスメイト達の顔が見えることからまぁ普通に考えればザージスと戦闘していたのだろう。
んでその下に転がっている騎士を見る限り本人自身には力が無いのだろうな。
「クソッ!どうしてお前はいつまでも我の邪魔をすると言うのだッ!?だがコレで我の勝ちだ…大天使様我を神の国へお連れくださいッ!」
ザージスがそう叫ぶとディーセが「おぉ神よ…コレも試練と言うのですね」とその表情を恍惚とさせザージスを後ろへと投げ飛ばすと手に光が集まり剣の形を成す。
そしてそれを天に掲げるとその剣から多くの光が溢れ出して…私を抱えているアルキアンは「まずいッ」と叫びその場を離れる。
「下種よ…天より下りし主神の思し召しに跪け『シャイニング・クロス』」
その声と同時に曇り空で光さえ遮っていた雲に光が入り遠くから見ていたソレは正に天から道が出来ているかのような光景であった。
そしてディーセは光の剣を振り下ろす。
その行動と共に天から地上へと続く道に光の十字架のようなモノが降り注ぎ地面の瓦礫を貫き王城を貫いた。
それを見て私はアルキアンから離れて走り出す。
王城の瓦礫を退け何かを必死になって探す。
たったの数日、たったの数週間一緒にいた仲…ここで死ぬのはあまりにも気分が悪い。
一緒に何かをやり行動したクラスメイト…見間違いかも知れないけどここに居たはずの黒い外套を纏ったクラスメイトを私は必死になって探す。
そして…赤い液体が見え瓦礫を退かし、瓦礫の下で結界の魔道具を貼りその場を凌いでいるその姿を確認して落ち着いた。
あぁ本当に無事でよかった…そう思えたのだ。
そうして気づいた。
どうやら私にはまだ人間としての心配する気持ちが残っていたのだと。
まだ仲間が傷つけられて怒れる気持ちがあるのだと…だからこそその諸悪の根源であるディーセを睨む。
「やはりお前だけは…俺の手でぶっ殺すッ!」
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