第145話

手についた液体を地べたに落ちていた血生臭くなった布で拭いふと周囲を見る。

血の海と化した広場では多くの暴徒化した信仰者は片付いた様で耳を澄ましても数えられるほどの声しか聞こえなくなっている。

目で見れば白いローブを赤色に染めた生物が山の様に積み上がっており鼻で空気を吸い込めばむせ返るような汗と血と汚物の匂いが立ちこんでいる。


そうして自分の手を見つめる。

…赤い色は落ちず練習で力加減を間違えたせいで炎症も起こして腫れている。


「練習に付き合ってくれてありがとうね…って言っても聞こえてないか」


そう言って目の前にある肉塊に目線を送る。

それには殴られた痕跡などがあり至る所から骨が見え隠れしている状態で常人が見たら発狂物だとわかるような有様をしていることが確認出来る。

まぁ脳内のドーパミンやら何やらが放出されている私はそんなこと気にしてらんないが。


それよりも今やるべきことは空で戦ってるアルキアンの援護かな。

先ほどから天使と化した参謀野郎とアルキアンが互いに魔法と武器を使って戦っている。

片方は天使の羽根を持ち空を飛びもう片方は悪魔のような姿になりを地上からを応戦している。


観察を続ける…こういうのは敵を観察して弱点を探してから援護するのが一番良いに決まっている。

天使と化した参謀は…面倒だからもうディーセで統一してもいいかどうせもう参謀でもないしなぁ。

本題を戻してディーセはここで見る限り弓を使って空から攻撃してくるのと一定の所まで上昇すると魔法で光弾を放ってそこから地上に向かって弓を剣に変えて突撃する…と。

そこからまた一定の所まで上昇して剣を弓に変えて矢を放つ…剣を使う時間や弓を使って戦う時間は不規則ではあるがパターンは存在する。


上昇してとどまる位置もそこが定位置かのように同じであるしその位置に魔術で穿てば自分から突っ込んでくるんじゃないか?

いや…そこまで馬鹿ではないか。

そこで攻撃したら今やってるローテーションが崩れて予測が不可能になってますます此方が不利になるか。

だが攻撃しないことには勝利はない…だとすると一気に片付けるのが一番良い方法か。


アルキアンは地上から黒い炎で攻撃しているから空中は…まぁできんか。

となると私が空からアイツを落とすのが一番良い方法…なのかな?

空はあんまり好きではないというか大嫌いなのだが。


ディーセは天使になったことで慎重さが欠けた…と思う。

あそこまであの時私を陥れようと作戦を練っていたディーセは今になっては大胆に行動しているし狡猾な攻撃も無い。

コレはおそらくだが天使になったことで自らの攻撃が強いと傲慢になっているからだと私は感じた。


だからこそ…慎重ではないからこそ一撃を入れるのは油断している今しかない。

空を飛ぶ的な魔術は作ってないわけじゃない。

あのスライム戦以降考えに考えて知恵をこねくり回して安全性のある空飛ぶ魔術を作り出した。

まぁ空中を飛ぶという行為自体が怖くて嫌いな私からすると飛びたくはないが…これもしょうがないことなのだろう。


「飛びたくないが…魔法陣展開ッ!『飛翔』」


無属性と風属性の魔法陣を私を起点に展開をする。

背中が熱くなる感覚と頭の中を弄られるような感覚が身体に奔るが根性で我慢する。


この『飛翔』という魔術は私専用に製作したやつだ。

人体を起点に展開する風属性版の身体強化系の魔術で単体の魔法陣で空を飛ぶことが出来るがこの魔術は二重の魔法陣…もう一つ効果がある。

その効果とは…まぁ精神安定っていう私のような高所恐怖症が空を飛んでも取り乱さないようにする効果なわけだ。


そうしてゆっくりゆっくりと背中に力を込めて空へと浮かぶ…この魔術使ってみて思ったが名前負けしてるくない?

これじゃ浮遊といってもいい程度なんだが。

この魔術身体を傾けると横に動いて背中に力を込めると上昇、逆に力を込めないとゆっくり下降…つまりその場にとどまることができない仕様。


うーん…何だこのゴミ魔術。

結構昔に作ったまんま放置していたから最適化もされてないから燃費も悪りぃ。

それでも空を飛ぶにはコレしか準備してないからコレ使う他無いんだがな。


自分の気配をできる限り薄くし定位置まで移動し空から地上へと落とす準備をする。

即座に発動できて地上へと落とせる…つまりはやはり物理、物理こそ正義!

魔術だと魔法陣を展開しなきゃいけんしこんなことに魔力使ってらんないしね。


「ハハハハッ!この罪人に成り下がった愚者め我が矢をくらッ「オラァッ!」」


ナイフを持った拳を振り上げディーセが上がってきた所で振り下げる。

だが当たる直前に勘といったら良いのだろうか?

ディーセの勘が働いたせいで脳天に当たる直前で横へと避けられる。


だがここで終わる自分では無い。

即座に身体を傾け移動するとともに腕を伸ばし天使の羽根の片方を切り裂きバランスを崩し回旋するように落ちていくディーセに追撃を言わんばかりに地上で拾った石を投げつける。

コレでヘイトは私に一瞬だけでも向いた…アルキアンここで決めろよ。


*今回使用した魔術一覧*


飛翔:空中を飛ぶ魔法陣と精神を安定させる魔法陣を重ねただけの何の工夫も調整もされてない魔術。空中にとどまることができず常に力まないと下降する欠点がある。またこの魔術は起動しているだけで魔力が消費されその魔力消費量が多い。

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