第137話
宿から歩いて20分ほどが経ち私はこの国の図書館へと辿り着いた。
普通街や村なんかには紙を使った本なんて貴重なためギルドなどの限られた場所でしか見ることができないものだがここは国の中心部。
いくら貴重であっても集まってくるためこんなでかい建物が出来ているわけだ。
まぁ動物や魔物の皮を使った皮紙で作られた本なんてものは一般的に流通しているわけだが。
紙と比べてもその違いは一目瞭然で字の見づらさが変わってくる。
何ならアレは書くのも少し書きづらいため少々値が張っても私は紙を選ぶことだろう。
さて間話から話は戻しまして。
ここにあるのは一般的に公開できるもののみしかなく禁書などは国が管理するため王城にあるとのこと…と口数が多い暇を持て余していた図書館の管理人が言ってた。
まぁ感謝しかないね。
こう軽々と情報を吐いてくれるし一般的に知られる大罪スキルについての情報が記された本も持ってきてくれたからなぁ。
「さて、この本を早速読んでみるか」
時間は限られているからそこまで考察とかして読んでいられないのが残念だが…とりあえず軽く読んでみよう。
渡された本は3冊ある。
一つ目が『業を背負いし者』そして二つ目が『継承が確認されている大罪者』というタイトルの本となっている。
…少女読書中…
「ふぅ…読み終わってしまったな」
現在の時間は午後二時…途中途中で隠れながら飲食禁止の図書館で食事をしながら読み耽っていた。
さて、それでは読んだ本の成果を適当にまとめてみることとしよう。
まず一つ目の本は簡単に言うと子供とかに読み聞かせる絵本のようなモノだった。
内容は七つある罪を手に入れると代償はあるが力を得ることができそれを手に入れた者たちが国を栄えさせていくという物語だった。
『傲慢』を持つ者は静かな少女であったがある時を境に驕り誰かを貶す性格になってしまったが誰かを心配する心を持ち先頭に立ち導く存在となり軍を作った。
『憤怒』を持つ者は争いを知らぬ青年であったがある時を境に何かに憑かれたかのように復讐に燃え怒りっぽい性格へと変わり傲慢の軍へ入り大盗賊を討ち倒した。
『嫉妬』を持つ者は優しき少女であったがある時を境に誰かに対し劣等感を感じるようになってしまったが自分より酷い生活を送る者を憐れみ生活を向上させるため奔走した。
『強欲』を持つ者は欲を感じない少年であったがある時を境にあらゆるモノを何が何でも手に入れようとするようになってしまったが手に入れたモノをタダ同然で貧しき人々に与えてた。
『暴食』を持つ者は貧しき村に住む少年であったがある時を境に作物の知識を他人に教授し豊かになり食事を求め民が集まり少年が知る知識によりお腹が空かない国を作り出した。
『怠惰』を持つ者はとある国に住む働き者の青年であったがある時を境にやる気のない人へと変わり人々に休むことの大切さを教えそれが広まり休む概念が生まれた。
『色欲』を持つ者は目に入れることすら憚れ何もかもを我慢する少年であったがある時を境に通れば人に注目され性に正直で自由奔放な人へと変わりその者の発言で多くの者たちが行動を起こした。
大罪を持つ者達は『ソレ』が発現した途端に性格や身体、記憶が大きく変わってしまうが大きな利益を生む存在へと生まれ変わる。
…やはり大罪スキルはロクなモノではない。
こうしてみるだけでも発言したら性格など色々なものが変わってしまうというのは恐ろしいものだ。
次に二つ目の本は…今までに継承され名前や所属が判明されている大罪スキル所持者の名前が綴られている。
勿論その中にはアルキアンの名前も憤怒の欄に書かれている。
『傲慢』は二百年前に一度確認されてから…今は獣人の国王が所持しているとのこと。
そして『憤怒』は今はアルキアンだがその前は『豪鬼』オーガという二つ名が与えられた魔物が所持していたと…。
…やはり魔物や魔獣が所持することが出来るというわけか。
私がこの『暴食』を手に入れた時もあのスライムを倒したからだから継承者になるためには殺してオーブを手に入れて使うことが条件となっているのだろうか?
「あれ?…ってことはアルキアンは『豪鬼』の二つ名を持つオーガを殺したってこと?」
ま、まぁそんなことは置いといてだ…。
次に『嫉妬』は確認されているのは八十年前に海底に住むとされる謎の魔物が所持していたとされるか。
名もわからない魔物ねぇ…確認はされたが正体不明で姿は丸みを帯びた躯体をした魔物としか書かれていないな。
そして『強欲』はここ八百年前からずっと変わっていないか。
『強欲』を持つ奴は『悠久の錬金術士』ジュエリー・オブ・トワイライトという人間?らしい。
本名は不明で何百年生きているのかは不明であり旅をしながら錬金術で製作した物を売り捌いていく所々にて市場を買い占め荒らす行為を繰り返す問題児らしい。
そして『暴食』は前任者が『丸呑み』スライム。
討伐要請が出ていたが軍が戦闘途中で壊滅しその身を隠されてしまったため討伐は未達成とされている。
…争いから逃げ続けたところを私が討伐した感じか。
ということは相当アレで弱体化してたのか…だからあの頃の私でも討伐することができたんだな。
んで次に『怠惰』。
確認されている『怠惰』を持つ者は冒険者のベルという人物。
『怠惰』を持っていた貴族であり前任者だった者を殺したことで国に捕まり終身刑として鉄の入れ物の中に軟禁されている。
『怠惰』のスキルにより周囲のもののやる気を削ぐという研究報告がされているため戦争時の最終兵器とされている。
最後に『色欲』。
確認されている『色欲』の継承者は第四十二代目元聖女という人物。
もう亡くなっているが新しい継承者である人物は発見されていないらしい。
まぁコレぐらいしか書かれていないな…位が高かったりする人物の情報は隠蔽するためかわからないがそんなに情報が載っていない。
にしてもこの世界なら大罪があるんだったらそれと対になる美徳があるもんだと思っていたが…管理人にも無いと言われたしこの世界には美徳という概念がないのだろうな。
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