第136話
宿に泊まり数日が経過した。
外は早朝だというのに騒がしく子供の声すら聞こえてくる。
まるで祭り騒ぎのように商品の声出しが聞こえてくる。
「コレの原因が処刑だなんて考えられないな」
そう口に出してから宿の主人が注いでくれた紅茶を口に入れる。
その言葉に宿の主人は「お優しいのですね…」と口にしてくるがそれに対する返事を返さず黙って朝食を口にする。
この数日は特にこの人生で一番優雅に過ごせたのではないかと思う。
ここまでやることがないと逆に何かしなければと思ってしまったのは私がまだ日本人だった頃の記憶があるからだろうか?
まぁやることはやったので何もしなかったわけではないのだが。
私がこの数日の間にやったのは悪魔から貰った二つの玉…成長と衰退の力を自分に取り入れた。
異世界特有のスキルについて成長の力は使ってみた感じ自分の中にあるナニカが変化したとしか言いようがない効果しか実感できなかった。
何が変わったと聞かれれば何かが変わったとしか言いようがないしステータスにも何も変化は現れない。
そしてその後に衰退の力は結構考えて使った。
衰退の力は巻き戻すか不幸を呼び寄せるか肉体の崩壊を招きかねる代物だからこそそれを逆手に取り自分の有利になる衰退を行った。
それは痛覚の衰退。
コレがあるだけで今まで出来なかった戦略ができる。
痛覚が衰退…弱体化したことで私は痛みを覚えてもそれを認知することができない。
それすなわち脳が痛みに対する反応が出来ないことを意味しこれにより痛みにより動けないなんて事無くなる。
非人道でも外道とも言えば良いさ。
コレさえあれば私は最強…いや最強ではまだないか。
今は外道でも人外だろうとどうでも良いさ。
「いつかは私が讃えられる日が…きっとくるのだから」
「ん?今何か言いましたかな?」
宿の主人がそう言い返してくるが私は静かに首を横に振りその言葉を否定した。
さて、今日は待ちに待った処刑の日だ。
私も準備をするとしよう。
私は宿の主人にお代を払い自分の部屋へと戻る。
机の上に置かれた仮面とフードのついた外套を羽織りを身につけ腰に二本のナイフをつけ私は外へ出かけることとした。
処刑が実行される時間は午後の夕暮れ時に行われる。
外に出て辺りを見渡すと何かを踏んだような気がしてそちらに目を向ける。
私の足元に落ちていたのは新聞だった。
私はそれを何気なく広い広げてみる。
そこには一面大々的に処刑の文面がずらりと書き綴られておりコレでもかと死刑囚の顔面が描かれていた。
今日処刑されるのは合計20人。
最初の処刑囚は昼飯時に行われそこから夕方まで引きずり最後の大トリに参謀が処刑される。
そしてその処刑囚を処刑する処刑執行人の名前まできめ細かくこの新聞には書かれていた。
Bランクの冒険者からSランクの冒険者までおりその中には民間人も紛れている。
そして参謀を処刑する処刑執行人は…『憤怒の貴公子』アルキアン・アマガル・フォン・レインバード。
なんでそんな大層な二つ名があるのか分からないが処刑執行人がアイツだったらなんというか…納得した?
出来れば自分の手で斬首したかったが…アイツが斬首するんだったら別に良いかなと思えるね。
その処刑囚についての情報が書かれている下になんか違うことが書かれているな。
処刑囚の情報の下は処刑執行人の情報が書かれているのか。
Bランクの奴は処刑囚の友達で民間人は処刑人に恨みを持って復讐するため処刑執行人になったと。
ふむふむなかなかにヘビィな内容ですなぁ。
では、アルキアンは何の関係性があって斬首人になったのだろうか?
えぇっと…アルキアンは『小さき英雄』と友好関係がありこのような作戦を出した参謀へ復讐を誓い参謀の身辺調査を行い悪行の発見そして報告。
それでは理由が弱いからと『小さき英雄』を物語として民衆に広ませ参謀がどれだけ非道にさせたかを知らしめ処刑に賛成させる声を強め実質的に参謀を直々に手をかけることが許された人物。
その数々の発見された悪行をアルキアンの手によって後始末した際に怒りによって人の身でありながらも七大罪の力を発現させた。
「…うん。なんか壮大な人生送ってんなアイツ」
この文面だけ見てみると私はなんか死んだみたいな感じになっているけど生きてるんだなぁコレが。
というか冒険者ギルドの方に確認すれば普通に情報が更新されているはずだから生きてるってことが分かるものだと思うんだが…。
にしてもなんかサラッと七大罪のことにも触れられているな。
大罪って名前だからなんか人に知られてはいけないとか勝手に思っていたんだが…実はそんな感じではない感じなのか?
私はこの『暴食』を隠しながら生きてきたんだが…アイツは普通に『憤怒』を公表して生きている。
「いやまだバラすには判断材料が少ないな…もっと安寧が確定できないと」
罪と名前がある限り悪い意味である可能性もあるしな。
というか七大罪があるってことは前世に基づくとその反対に位置される美徳があるはずだよな?
この世界での七つの大罪のスキルとそれに対応する九つの美徳について処刑が行われる前に調べておくか…。
そう思い私は図書館へ足を進めた。
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