第138話
本を読んで時間が経ったことだしこのままゆっくり歩けば会場には良い時間で着くことだろう。
そう思い私は図書館から出て街中へと歩を進めた。
外では朝見たより多くの人々が蔓延っておりまるで朝の満員電車のような景色ができていた。
「うわぁ…面倒だなぁ」
そんなことを考えながら路地裏へと入り壁を蹴って誰のかもわからない家の屋根の上へと移動した。
上へと移動した私はこの国を一望してから先ほどまでいた路地裏そして人がひしめく街道を見る。
その中で多くの人が笑い話しながら移動する中一定数のとある小集団を見つけた。
小集団は3人で一つの集団になっているようでそれが街道や路地裏にもいる。
そのすべての集団に見られる特徴が私と同じような黒い外套を纏って顔までそれを覆っている怪しさ満点な雰囲気を醸し出しているという点だ。
裏路地にいる奴らなんて最早裏の人間だと思うような外見をしている。
…ちょっと気になるがまぁどうせ他国とかの人間だろう。
目的はよく分からないがまぁそこら辺はこの国の騎士とかに任せることとしよう。
こんなあからさまな怪しいやつならどうせ取り締められるだろう。
屋根を歩きながらそして次の屋根へと飛び乗りながら移動する。
ある所では喧騒が巻き起こりあるとこでは驚愕の声が聞こえてくる。
前者は喧嘩でも起きたのだろうか?
後者はこの国にサーカスの連中が来たらしいからその舞台での演技による歓声とかだろうな。
耳を傾け右から左に左から右にそんな声を流しながら屋根の上を歩く。
そういえばあの宿の主が騎士に見せるだけで特等席に連れて行かれるチケットをくれたが…流石に巡回中の騎士にそのまま渡すと仕事に支障が出るかもだし処刑する所の騎士にでも渡すか。
さて処刑場は確か王城前だった気がするからそのことも頭に入れつつ移動することとしようか…。
そういえば殿下が兄の第一王子を殺すだとかなんだとか話していた気がするがその話はどうなったんだろうか?
というか殿下はこの国の第二王子だったか?
それとも第三王子だったっけか?
確かマデリア宗教国家に加担している第一王子ザージス殿下の暗殺をレイベル殿下がやるって話だったはずだ。
敵国のマデリア宗教国家に自国の王子が加担していたと民が知ったらそりゃ暴れるでしょうな。
ということはあの黒い外套を着ていた怪しい集団はマデリア宗教国家の手先だったのかもしれんな。
「まぁそんなことどうでも良いか…」
別にこの国に思い入れなんてないし滅んだって構わない。
ん…だがアルキアンがそれで死ぬのは勘弁願いたいからその時はその時に考えて行動して助けるとしよう。
というか宗教国家って名前がつくぐらいだし神を信仰しているんだよなぁ。
闇の女神様を信仰する国だったら気まずいなぁ。
何せ闇の神獣であるアイツの加護持っちゃってるし…。
その時は…どちらに味方すれば良いのだろうか?
そんなこんな考えながら移動して王城の前まで来ることができた。
王城では今日だけ一般公開されているらしく多くの民衆がコレ珍しさで物色し回っているらしく騎士が忠告しに行ったりと大変な目に遭っているのが目でわかる。
「うわぁ…大変そうだなぁ…」
そんな他人ごとのようで本当に他人事を呟いた。
こんなことになっている騎士に今コレを渡すのは忍び無いため私も私で王城の探索でもしますかと思い立ち私はまた歩き出すこととした。
まぁまだ時間もあるし急ぎのようでもない。
ゆっくりしながら探索をしよう…。
あの時は真っ白で色も分かりようもなかったがこうしてみると鮮やかな色をしていることがわかる。
最初見た時はこんな色じゃなかった気もするが…塗装でも塗り直したのだろうか?
そうして歩くこと数分が経過しひらけた場所へと出た。
地面は土でできていることから訓練場だろうか?
とそんなことを考えていると前方に何かの気配を感じその場から離れると今私がいた場所に防具を纏った中年が剣を振り下ろしてきた。
「ふむ…外套を纏った怪しい客人今のを避けたか」
そしてそのままその中年は剣を自分の鞘へと仕舞い少し離れた場所へと移動した。
すると次は何をするかと思えば鞘にしまった剣を鞘に付けたまま地面に杖のようにつき私の方をじっと見つめてきた。
「ごほん…私はこの国の騎士団の団長をしているハルマン騎士団長である!客人よ其方の名前は?」
「えぇっと…レナといいます」
そう私が戸惑いながら答えると騎士団長を名乗ったハルマンは顎髭をさすり小さく何かを呟いた後鞘をつけたままの剣を構えた。
その鞘の表面には青白い何かが纏っておりアレには触ってはいけ無いことが本能的に察知できた。
「では怪しき客人レナよ…武人ならば武器で語るのが基本!さぁ語り合おうではないか!」
そう言い放つとハルマンは足を動かしたかと思うといつのまにか私の目の前でその剣を振り下げようとしていたため咄嗟に避けようとするがすぐに無理だと気づき腕を十字にし剣を受け流すことにシフトする。
そして…そのまま剣が私に目掛けて振り下ろされ…中年がその場で崩れ落ちた。
中年の口からは泡が出ており気絶していることがわかる。
私はそんな状況を理解できず中年の身体の全体を見ると中年の股間部分に足があることに気づいた。
自分の足ではない防具である膝当てがある足だ。
そしてそのまま目線をその足の張本人に向けると防具を纏った青年の姿があった。
「全く…こんな大事な日に何やってんですか騎士団長殿?」
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