第133話
私が歩いて馬車へと戻るとそこでは町民達が和気藹々としながら料理を作って食べていた。
側から見ればそれは和やかな光景に見られる…かもしれないがこうして冒険者に身を置いている者としてはこの状況は非常にまずいと言える。
何せ馬車を停車している数百メートル先は私達が戦った跡が残っており採取もされない土に染み込んだ血で悪臭を放っているそのおかげでここらの獣はその血の匂いを嗅いで幾らかやってくるだろう。
それにこの世界特有のチーズだから何だかわからない匂いの強い食べ物それを町民が持ってきて焼いているお陰で匂いがここらには蔓延している。
このままだと自分からこちらに餌がありますよと言っているようなものだ。
そんな状況を苦虫を噛み潰したような表情で見ているとこの馬車の御者にして今回の冒険者の護衛対象となっている商人がこちらへとやってきた。
その手には干し草が握られておりその格好から馬に餌をあげていたのだと分かる。
顔はさっきより幾分か明るくなっておりどうやら青白い顔から治ったようだった。
「彼らが食べている物が気になりますかな…冒険者殿」
私はそう聞かれると顔を出来るだけ無表情に保ちながらうなづく。
すると商人は手に持つ干し草を馬に上げその足で木の食器と木のスプーンを手に持ちこちらへとやって来るとそのままそれを私に突き出してきた。
私は即座に首を振ったが商人は笑顔を崩さないまま私に食器を手渡してきた…なので私は渋々とそれを手に取った。
「うむうむ…周囲のことばかり考えては出来ることもできないですよ。もっと他人を信じましょうではありませんか?」
そう商人が私に言うと懐から円筒を取り出し地面へと配置した。
するとそこからオーロラのような何かが空へと立ち上り周囲を囲むように広がっていきそして四方八方見てもそのオーロラが見えるような見事なドームが完成した。
私はそれを見ながら口が半開きになっていると商人は鼻を鳴らしながら高々とこのオーロラについて語り出した。
「コレは私たちの商会が作り出した臭いを遮断し周りから見れなくするその名も『インビジブルカーテン』ッ!」
そこから長々とこの『インビジブルカーテン』がどのようにして作られたかを語り出し夜が更けていった。
…少女達就眠中…
そうして目が覚める。
私は地べたで寝たせいで硬くなった身体を朝の恒例行事となったストレッチでほぐしているとテイマー達のテイムされているスライムがコチラに向かって跳ねてきた。
その姿は川の水より透き通り青空の青より綺麗な青をしている姿であった…まぁ普通のスライムだな。
丸っこくド○クエボディコレは正義である。
そのまま見続けること数分スライムは私に群がると身体を上手く使い私を担ぎ上げてきた。
まるで神輿のように担ぎ上げられ少し開けたところへと下ろされた。
そこでは先に起きてたであろうE・Dランク冒険者達がこちらに頭を下げながら立っていた。
「昨日は敵を倒してくださりありがとうございましたッ!」
そう勢いよく一人のDランクの冒険者の代表格が言うと後に続いて他の冒険者も言い出し下げてたその頭を更に下に下げた。
どうやら彼らは昨日のことについて謝りたかったようでわざわざ集まって頭を下げてくれたということらしい。
「…いいよ」
私はそう言うとスライムの神輿から下りそのまま馬車へと乗り込むこととした。
彼らはどうやら今日の予定やらの昨日の反省を行うためその場で会議をするらしい。
まぁかなり真剣に謝っているところを見てこのパーティは「素晴らしい」と感じた今日この頃である。
冒険者は粗暴で喧嘩好きが当たり前何せこの世界には前世の最低限の道徳すらない世界だからな。
人は攫うのが当たり前、人を殺すのが当たり前この世界では殺しを積極的にやらないと生きていけない世界のため道徳の「ど」の字もないのが当たり前。
その中で自分の失敗を謝れるのは非常に珍しいものだと聞く。
子供の頃は謝る奴はいるが歳を重ね地位が上がると謝りもしなくなり逆に失敗されると非常に簡単に人を殺したりする。
人の命が軽い、市民の命の価値が低いだからこそ道徳なんてものは生まれない。
だからこうして謝られるのは非常に珍しいことなのだ。
私が今まで会ってきた人はどのような人だっただろうか?
高慢な奴もいたし優しい奴もいた貴族には謝礼を言われた…私はもしかしたらとても運がいいのかもしれない。
そう思うこの頃…さてそんな話は置いといて問題です。
ここはどこでしょうか?…うんそうだね馬車の中だね。
あの謝罪の後なんかこっちが申し訳なくなって恥ずかしかったからすぐさま馬車に乗り込んで謝罪のことについて考えていたもんね。
ではその馬車は今どうなっているでしょうか?
答えは…動いています!
うん完全にぼーっとしすぎてしまったね。
完全に時間が有限であることを久方ぶりに忘れていたよおじさん。
つまりどういうことかと言うと…ご飯食べ損なった。
「お腹…空いたなぁ」
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