第130話

あれから1週間ほどの日々が過ぎていった。

学園の方は一応は授業を開始した。

と言ってもこの学園に登校してくる人は前より明らかに少なくなっている。

まぁそりゃそうだよな…命を狙われたら洒落にもならないし。


今この学園に登校している人の数は大体20%ぐらいの生徒しか来ていない。

大体が平民でその他は命を賭けてでも勉強して大成したい貴族共だ。

先生は…まぁ研究やらをする先生は来ているがそれ以外の先生は今でも貴族の家に行っては謝ったりしている日常らしい。


らしいと私がしっかり言えるのはこの1週間で情報収集に力を入れていたからだ。

まぁいつまで経っても世間のことが分かりません何て恥ずかしいからな。

一応一般知識と世間事情ぐらいは耳に挟んでおいて話題になったら話せるようにはしときたかったんだ。

その過程でこの学園の先生と会話をし上級生の話を盗み聞きしたりと色々やって来たわけだ。


あぁそうだ…そういえばだが一応はここはまだ学園として機能している。

授業こそ行っていないが課題という自習の形で授業は進行している。

ここは異世界なんだってありな世界だ…ホログラムみたいなのは無いが課題は空から降ってくる。

何の魔法なのかは見当もつかないが空から手紙として課題が降って来て1日の終わりに手紙になって空に戻っていく。

まぁそんなわけで一応は授業を行っている。


…今までのことを考えると私ってもしかしてここに居なくてもいいんじゃ無いだろうか?

ここには授業を受けるためだけにいたが別に今この現状だと寮にいなくても授業は課題さえやっておけば受けたことになる。


「そう…だな…ここを出て学園が正常化するまで何処かに行くか」


私は必要最低限の支度をし寮の管理人であるマッスル先生兼管理人の元に行くことにした。

こうして改めて寮を見ると所々蜘蛛の巣が貼っているようになってしまった。

…まぁ仕方がないといえばそこまでだ。

何せこの寮にいた使用人の人たちはマッスル先生が危険だからとこの学園が正常に戻るまで帰らせたからこの寮を掃除する人は私かマッスル先生ぐらいしかいない。


あぁそういえばだがネルちゃんと囮にされた女子ももう帰った。

さよならもいえなかったがマッスル先生が何とかして無事に帰れたことだろう。

そんなこんなで私はマッスル先生兼管理人のいる部屋まで来てノックもせずに扉を開ける。

この数週間で見知った仲となった先生だこんなことしてもどうせ何も文句は言わないだろう。


「おぅどうした?」


マッスル先生兼管理人はどうやら筋トレをしていたらしく汗まみれのまま私にそう聞いてくる。

私はこの学園の外で活動するということを告げるとマッスル先生兼管理人は深く頷きながら私の話を聞いてくれた。

そうして私が学園の外でどうするかの話をし終わるとマッスル先生兼管理人は筋トレをやめて私に向き直った。


「そうかぁ…まぁそうだよなぁ。どう頑張ってもここでやれることは限られている…よし行ってきていいぞッ!ただし気をつけてな」


そう私に告げると再び筋トレに戻っていく。

…まぁコレにて私は外に行く許可を得たわけださっさと目的の場所に向かうとしよう。

ちょっと予定は早まったがそんなの誤差に等しい。


「目的地は…イードラ王国」


そこへ行く目的はやはりあの参謀の公開処刑だ。

あいつの死に際を見るまではこの怒りは止まることはない。

あいつの死に様を見るまではこの怨みは終わらない。

コレまで人に対して怒りと怨みを持ったのは初めてだ…殺された時に湧いたどうしようもない怒りより勝る終わることのない脳裏に焼きつく嘲笑い声。

本当なら自分の手で処断を受けさせたいがまぁ皆に見られながら死ぬ顔を見るのも一興なのだろう。


あぁ思い出したあの日から怒りが湧いて沸き続けている。

憤怒までは行かないが私を馬鹿にした…嘲笑った貶した同情したあの…あの声共の記憶がイードラ王国であったことを思い出してきやがる私に語りかけて吐き戻してきやがる。

聞きたくないそんな同情は…聞こえたくないそんな嘲笑は…いい加減に何度消しても蘇って想起するその品の無い臭い口を閉じてくれ。

…私に集って来ないでくれ。


「…はぁぁぁ。一旦落ち着かなきゃな」


まぁこんなに怒っても怨んでもここでは何も変わらない。

今はただイードラ王国に向かえばいいそれだけだ。


「よしッ!切り替え完了!出発しますかねぇ」


そう思い立ちこの街の相乗りの馬車を募集することとした。

本来なら冒険者ギルドの依頼でイードラ王国に行くっていう手もあるんだが今の時期は都合が悪く平民が冒険者になる時期と重なってしまっているためそのような依頼は信頼のない冒険者には出されない。

理由としては新入りが中堅の調子に乗ったパーティに入って依頼を行った結果失敗してその失敗を中堅のパーティが負うのではなく新入りのせいにするという事例が昔あったせいだとされる。

だからこの新入りが入ってくる時期はランクの低い依頼を張り出し高ランクの依頼は手渡しあるいは紹介という形で依頼が出されるというわけだ。


私はというと…まぁこの街ではあまり活動はしていないからなぁ。

信頼なんてそうそうされていないことだろう。

コレに関してはしょうがないと割り切るしかないのだ。

さっさと日が暮れる前に相乗りの馬車を探すとしよう。

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