第125話

そうして私は寮までの帰路につき何事もなく寮に着くことができた。

私は寮の扉を開き入り口で座って待つマッスル先生の隣を通り過ぎると同時に先生の脇腹をトントンと叩きその後に私の後ろを指差し自分の部屋へと戻ることとした。

まぁ私にはこういうのはどうにもできないからな…一応こういうのは先生がやってもらうのが最善の手というものだろう。


完全な他人任せだが私がメンタルケアするよりかは幾分かマシなはずだ。

こんな子供に励ましてもらったりしても安心なんてできないだろうし。


「こうなると夕飯が食べられんな…」


いつも食堂で使用人の人が作ってくれる夕飯を食べていたんだが今日はこのまま外に出たら二人と鉢合わせになって面倒だ。

だから…今日はしょうがないから暖かくない飯を食べて我慢しようかな。

この時間から外出したら絶対に門限に間に合わないししょうがないしょうがない…はぁ憂鬱だ最悪だ。

あの気まずい空気さえ無くなってくれれば私もこうする必要はないんだがなぁ。


「まぁ泣き言ばっかり考えていてもしょうがないからな食事にでもしてさっさと寝てしまうのが吉か」


そう私は呟き虚空庫から『飽食の胃袋』を引っ張り出しその袋の中に手を突っ込んで中にある物を掴み取り口にスナック感覚で放り込む。

にしても最近腹が膨れてもう食べられないって時にも空腹感を感じるようになってきたなと思う。

これはやっぱりスキルのせいなのだろうか?

日に日に空腹になるスパンが短くなってきているように感じる。


このままだと授業中に空腹で動けないってこともありそうだし…ちょっと太るのが心配だがもうちょっと食事を増やしてもらうか?

いやいやそれだと腹に入らないか…だったら間食を増やしてみるのが一番いいかな?

というかだ…私ってもしかしたら太らないっていう可能性もあるんだよなぁ…何せ身長が変わらないし。

これって身長を伸ばす栄養が行き届いてないっていうことだろ?

この身長で大人になったら…小人族かハーフリングに間違われるかもしれんなぁ。


だけど物理的にというかお腹の容量は変わっていないのが難儀な部分なんだよなぁ。

いくらでも食べる気にはなれるが容量が変わっていないからそこまで食べることはできない。

だけど食べたいの…ループなんだよなぁ。

どうするべきだろうか…食べたいという欲求だけが増加していく今の状況を打破するにはどうすれば。

今やっている対抗策もいつかはダメになるだろうしまず人道的に外れたことをしているからできれば多様はしたくない。


「はぁ…ままならないなぁ」


口に物を詰め込むこと数十分ようやく食欲は半分ぐらい満たされた。

にしても今日の襲撃は誰が行ったことなのだろうか?

この学園の生徒がどうやら今回行ったことだったがそいつは本当に個人的な思想で行動していたのだろうか?

どう見ても個人で王族や貴族を狙うなんて馬鹿なことは相当な間抜けぐらいしかいないだろうしバックに主犯となる何者かがいるように思えるな。

となると王族に近い爵位を持つ人間が起こした犯行になるが…。


「そういえば…殿下が兄のザージスだったか?そいつが……ッ!」


そう呟いた時だった。

ふと見慣れない気配を察知してそちらの方を向く。

本当に『気配操作』さまさまだ。

このスキルのおかげで最近では自分の気配を薄く伸ばしてその範囲に入った者の気配を感じ取るなんていう凄技を習得できた。

なお仕組みは全くわからないしこの薄く伸ばしているのが本当に自分の気配なのかもさっぱりなのだが…まぁそんなのどうでもいいだろう使えればどうでもいいんだよ使えればさ。


この気配を大きくそして濃く広げることでまぁ威嚇みたいなこととかできそうだが…気配に敏感な魔獣とか魔物のかしか効かなそうだなぁ。

まぁこの方法では人間にはあまり効果はなさそうだから今回は使えないな。

んで入ってきたやつだが…強さとかはわからないけどまぁ暗殺者と言ったところかな?

気配が少し大きすぎるけどちゃんとこちらのことを見ながら隠れているし。


「となると処分しとかないとなぁ」


この寮には数人の使用人と管理人である先生そして今日はよりによって女子二人がいる。

…いや先生なら一人でどうとでもできそうだがいやもしかしたらもう気づいているかもしれないけど。

使用人と女子二人は不意打ちされたら簡単に殺されてしまう。

だからこそやられる前にやるべきだろうな。


相手は外ならばどうすればいいだろうか?

座標を決めてそこに魔術を撃ち込むってのもいいんだがそれじゃあ不安要素を含むから違う案が欲しいな。


「だったら…これを使うかなぁ?」


私は再び虚空庫に手を突っ込んでとある一枚の紙を取り出す。

これは痛かったが我慢して私自身が描いた血で六芒星が描かれておりその中央に不気味な悪魔を意味するシンボルであるこの世界の文字でもなければ前世でも見たこともない記号のような何かが描かれている。

これは職業スキルにあった『召喚魔術』の魔法陣をそのまま自分の血を使って転写した物となっている。

この魔法陣を使えば予想通りであれば悪魔を召喚することができるはずなのだが…まぁ作ってから一回も使ったことがない物だ。

本当に魔法陣が正常に起動するかなんてわからない。

だがその時はその時だ…私が動けば問題ないだろう。


「というわけで…久しぶりに魔法陣展開ッ!『中級悪魔召喚』ッ!」

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