第126話

私が魔法陣を展開して魔力を注ぎ起動したことで魔法陣は怪しく輝きをその中心から放ち黒いモヤのような何かが空中に散布されていく。

そうして散布された黒いモヤは突如としてその動きを止め集まり出し何かを形成する。

それは子供ほどの身長をしており黒い紋様を顔や身体に付けた人の形をした何かが生まれた。


「呼ばれて飛び出てジャジャジャーンッ!成長と衰退の二面性を持つゥゥゥいつかは悪魔王になる悪魔ッ!その名もリリィちゃんここに登☆場ッ!」


…なんというかなんかこれ本当に悪魔か?

いや悪魔というのは変わり者が呼び出されることが多いがこれはなんというか性格が明るすぎる。

悪魔っていうのは負の感情を求める概念に近い生物ではない…かといって無機物でもない何かだ。

そのため大体の悪魔の性格は本の知識によると決して明るい性格ではなく残忍で残虐で狡猾であり憤怒に染まっている存在なのだが…。


「お前本当に悪魔かよ?」

「あっひっどいなぁ…僕ちゃんを呼び出したマスター。僕はちゃんと君に呼ばれて出てきたんだよ?僕ちゃんは悪魔さ☆」


そう言うと今日に浮かび上がるとその場で回り出した。

やっぱり私が呼び出した悪魔で間違いなさそうだ。

いやだがコイツが中級の悪魔か…前に呼び出したやつはもっとこう悪魔らしいやつだったんだが?

となると魔法陣に何か不備があったのか?


「いやこんなこと考えている暇はなかったな…悪魔よ代償を支払うから私の願いを叶えてもらうぞ?」


私は悪魔に向かってそう言うと悪魔は「ん?なぁに?」と言い動きを止めた。

そのまま私は窓のところまで移動して窓のカーテンを少しずらして暗殺者の方を伺う。

どうやら暗殺者は暗殺の機会を狙ってまだこの寮の外にいるようだ。


「魔力を代償と捧げるからアイツ…あの暗殺者を駆除してくれ」


そう悪魔に言いながら振り返ると何故か悪魔は顔を青くしながら首をブンブンと横に振っていた。

あ、まさかだと思うがこの悪魔…。


「無理無理無理…無理に決まってんじゃーん。そんな悪魔みたいなこと僕みたいな悪魔にはできないって」

「お前悪魔だろうが悪魔らしく残忍に殺してこい」


私はそんな言葉にそう言い返すとコイツはその首を振るスピードを一段と早くした。

もはやその首の振りは残像まで見える始末だ。

…予想外なことではあるが予定を変更して私が殺すこととしよう。


位置を捉えて座標を合わせ使う魔術は…思いつかないな。

火だと周りに被害が出てしまうし雷だとこんな雲ひとつないのに雷なんて不自然だと思われてしまう…出来れば誰にもバレずに出来ればいいんだが。

風だとどうだろうか…いや風はどうやってもスプラッタにするぐらいしか用途が思いつかないしそれだと辺り一面血で汚してしまうことになる。

そうだ土なんてどうだろうか…こう土の中に引き摺り込む感じの魔術だったらそこにいたと言う事実を抹消できるし掘り起こさない限りバレることもない…いやそれだと本当に殺せるのか不安要素が生まれるな。


「先に息を引き取らせてから埋めればいけるか?」


一度に物事を終わらそうとするからいけないんだ。

土の中に埋めるのは手順を踏んでちゃんと殺してからだな…となると縛って窒息させるとするか。

今回は緊急だから魔法陣は適当に組んででもできるだけ弱くならないようにして。

よし完成だ。

シンボルは土塊と雫と太陽これにより本来は存在しない木の属性を無理矢理生み出す。


「座標設定完了…魔法陣展開…『息を求める木の根』」


暗殺者の元へ木の枝のような形をした魔術が首に巻きつく。

その瞬間に暗殺者はその場を離れようとするがもう遅いその首には木の枝が巻き付いており逃げることはできない。

逃げる方法といったらその木を燃やすことだが…まぁ魔法を唱えようにも口を開けなきゃいけないしその状態で火なんか使ったら自分ごと燃やしちまうだろう。


この魔術はアースバインドという人の四肢を土の鎖で縛る魔術を適当に改良した魔術だ。

もちろん適当だから単発式の魔術なため複数人を相手に取ることはできない。

まぁ魔獣や魔物なんかの力の強い奴にもこの魔術は効かない。

ぶっちゃけると対人それも一対一じゃないとまともに機能しない欠陥も欠陥な魔術である。


さて、そろそろだろうか?

『息を求める木の根』という魔術はただ単に指定したところへ巻き付くだけの魔術ではない。

その真価は息を求める部分にある。

この魔術は第一段階目に指定した部分に巻きつき指定した獲物の動きが少なくなると第二段階に移る。

それは木の枝を伸ばし息つまりは二酸化炭素を求めて口の中に入ろうとする魔術でいうところの自律式の魔術の発動である。

コレを起動するだけでもかなりの魔力を使うがコレをうまく活用すればかなり良い魔術を作成できるだろうと踏んでいる。


「さてそろそろ終わりかな?」


暗殺者の方を見ると首と頭が直角になっておりかなり木の枝が根のように身体中に伸びているようだ。

後はそれを地中に引き摺り込んでそこにいたという事実を抹消すれば終わりだ。

まぁ地中に引き摺り込む魔術は単純なものでいいだろう。


「座標設定はさっきのと同じで魔法陣展開…『底無し沼』」


私が『底無し沼』を発動させたことにより暗殺者はその姿を土の中に埋めていく。

まだ生きているだろうが意識はないだろう。

口の中に土が入ってしまうのは同情するが…これで呼吸する酸素が吸えなくなって液体化した土が口塞いで死ぬことになるだろう。

まぁこれで証拠隠滅もできたことだしこれでもうこの寮に危険性はない。

一件落着って訳だ。


そんなことを考えながら私はこの無能で使い物にならなかった悪魔の方に目を向ける。

そこにはブルブルと身体を揺らし顔を先ほどより青くした悪魔の姿があった。

そうして悪魔は私に指を差して口を開いた…。


「こ、この悪魔めッ!」


いや…お前が悪魔じゃいッ!


*今回使った魔術*


息を求める木の根:本来存在しない木の属性を使った魔術。一段階目に指定した場所に絡みつきそれが生物だった場合動きが少なくなると二段階目に移行し息を求めて移動する。なお魔術は自律式であり多大なる魔力を消費する。

底無し沼:指定した範囲の土を一時的に性質を水のようなモノに変化させその上にある物を土の中に引き摺り込む。

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