第110話
コウキ君に連れられ私たちはこの学園の食堂へと訪れた。
中はたくさんの学生達が料理を待つため並んだり食べたりしており騒がしい雰囲気だ。
そこで私たちは食券を買い適当な場所で食べることとなった。
私が注文したのは当然注文メニューを一目見てピンときた揚げ物定食の大盛り。
やはりこの年齢になってしまったのだから歳を取る前にたくさんの物を食べ楽しまなければ損という物だろう。
ま、まぁこれを頼んだせいで周りからは「本当に食べれるのか?」という視線を浴びてしまったが…やはり食欲のほうが勝ってしまうな。
そういえばこうして他の人たちと一緒になって食べるのは久しぶりだな…えぇと確かこの世界での「いただきます」に変わる言葉はなんだったか…確か…。
「それじゃあ食べるとしようか…いただきます」
「我らの信じる神に感謝を…」
私がコウキ君が食べるための挨拶を言う時に私は前に習ったこの世界での食事の挨拶を言ったのだが私の予想は外れコウキ君は日本での挨拶を行った。
その状況に私はもしかして私の習ったことが間違っていたのかと即座にエアメルさんとディーネさんの方を見るが二人も普通に「いただきます」と言い食べ始めており私は「やはり私が間違っているのか?」と言う考えを思わざるを得なくなりあたふたしていると…。
「あぁこの『いただきます』わね食べ物になったものに対して言っている挨拶だから気にしなくてもいいよ」
そう言われ私はホッと一息ついてから目の前の食べ物を食べ始めた。
そこで一つ私は疑問を持った。
その疑問というのはコイツ転生者なのではないかという疑問だ。
黒髪…名前そして「いただきます」という食事の際の挨拶…どれをとっても日本人の特徴に当てはまっている。
いやいやまぁこの世界のどこかの国ではそういう教育があるのかも知れんしもしかしたら転生者の子息だとかそういう理由もあるかもしれないから一様にはいえないな。
だとすると有力な候補がやはりこの世界に来た転生者の子息というのが有力か。
それが本当だとするとこの世界の食事が一部だけ発展していることにも納得がいくし…。
そうして食べ始めること20分ほどが経ち全員が食べ終わった事でこの学園の案内が始まった。
まぁこの学園は異世界というわけでさまざまな場所が存在した。
入る人の魔法が一日中抑制されるという効果を付与される結界が張られている場所であったりだとか魔法薬所謂異世界風にいうとすればポーションを作る理科室のような場所、空を飛びながら元の場所へと戻る本が浮かぶ図書館。
それはもうさまざまな場所へと次々と案内され私の身体はたった数十分の間に戦闘より疲弊してしまい今は…身体を机に突っ伏していた。
もう…なんだかなぁ。
若い者の勢いにはついていけんのよ…一応私という人間は何十年という時代を生きたお爺さんの精神なのよ。
それに一気に新しい知識が来たら頭はパッパラパーになるわけで…とまぁこんな感じに疲れ切ってしまったわけだわ。
そんな感じで私が疲れ切っており机に突っ伏していると周りの人たちはどう思うだろうか?
そりゃもうね私の心配をされましたよ…にしてもこんなに心配されたのは久しぶりだ…何年ぶりだろうかこうして誰かに気にしてもらって心配されたのは。
んで今現在私の目の前ではとある儀式が行われている。
それは一人の男子学生のつぶやきから始まったことだ。
とある男子が疲弊した私を見てこう言った…「あいつのせいで新入生が困っている」そう呟いたせいで周りの人もつ呟きだしその言葉はとある人の耳に届いた。
その言葉を聞きここまで飛んできたのは…そう、レイベル殿下だ。
そんなレイベル殿下は面白半分なのかどうかはわからないが今この教室でとある儀式を行っている。
私は首だけをそちらの方向に向けると今実際にその刑が執行されようとしていた。
コウキ君は椅子に縛り付けられておりレイベル殿下はそれを黒い笑みをしながら見ておりその両隣では二人の男子学生が待機している。
「なぁコウキ君?ワタシは君なら大丈夫だと思って彼女の案内を任せたのにあの状況はなんだい?君は彼女をいじめていたのかい?」
そういうとより一層レイベル殿下は笑みを深め威圧感を放つ。
だがコウキ君はそれにビビりながらも口を動かして弁明をする。
「い、いやそれは、あのさ限られた時間内にこの広々しい学園内を案内するにはこうするしかなかったというかなんていうか…そう!これは必要なことだったんだよ」
「へぇ…でもそれってさ途中まで案内して明日にでも残りの案内すればいい話だよね?…さて言い残すことはないかい?ないね?はいッではすぐさまくすぐりの刑を実行しろッ!」
そう言うとコウキ君は「待ってッ!」と叫ぶが時はすでに遅し。
レイベル殿下の両隣にいた二人の男子学生は歩き出しコウキ君の横まで移動し膝をつき…そして刑は実行された。
…少女観察中…
そうして十分…その刑は終わりを告げ殿下達は撤収しその場には一人の男子学生コウキ君のみが首を垂れながら居座っている。
周りの人々は休み時間の終わりだと知らせる鐘を聞きながら次の準備をするために自らの教室へ誰も彼もが戻る際にその一人の哀愁漂う雰囲気を白い目で見ながら通り過ぎて行き誰も助けることはなかった。
そして授業をするため私たちは教室を出てグラウンドへ移動する。
その際誰も彼を椅子から下ろし助けようとは思わなかったのだった…。
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