第109話

そうこの場にいる全員にその目の前の黒髪の少年が告げるとみんなの顔は瞬く間に変わっていった。

ある人は怒ったような顔になりある人の顔は赤くなるといった多種多様な表情が浮かんでいた。


「まぁ…そうだね確かに。ここはみんなに任せた方が仲間を作りやすいというものか」


そう言うとレイベル殿下は手を振りながら笑顔で離れていった。

…いや逆に仲間作りづらくなってしまったんだが?

私はその光景にため息をつきながら一応お礼でも言おうかと黒髪の少年の方を向き…思考が固まった。


そこには何故か腕を天高く掲げている少年がおりその少年の周りでは立つこともできず崩れていく少年少女の姿があった。

その光景を見てすぐさま周囲を見渡すそこにはみんながみんなじゃんけんをしており勝ったであろう者は腕を天高く掲げており負けた者は地に崩れ落ちているそんな異常な光景が目の前にあった。

そしてその光景をぼーっと見て最終戦、勝ち上がったのは…黒髪の少年と金髪の少女。

ちなみにだがレイベル殿下もしれっと参加していたが普通に一回戦目で負けていた。


「行きます!覚悟は良いですか?」


「あぁいつでもどうぞ…」


そう金髪の少女が言うと周りの人は盛り上がりを見せこの場の雰囲気は変わりだす。

そして黒髪の少年がそれを了承した事で空気は何故か重くなり始め緊迫した雰囲気へとその場を変える。


「「最初はグー…じゃんけん…ぽいッ!」」


そして繰り出される手の形。

金髪の少女が出したのはパー…そして黒髪の少年が出したのは…チョキ。

勝負の勝敗は確定した。


「この勝負…コウキ君の勝利ッ!これにより昼休みにレナさんを案内するのはコウキ君に決定ですッ!」


そういつの間にか仲介役となっていた眼鏡をかけたメガネが言うと同時に金髪の少女はまるでこの世の終わりと言わんばかりに膝から崩れ落ちていく。

そしてその勝負の勝者にはある者は賞賛の声と拍手を与えておりまたある者はその勝負に納得がいかないのかブーイングを与えている。

そんなみんなが盛り上がる中、一つの声が聞こえてくる。


「……おーいお前ら1限目始めるぞー」


そう…その声の主はさっきまでこの場にいた先生である。

声からわかる一つのこと…それは学園である以上最初に優先される学業つまりは授業の開幕の合図である。

開幕の合図は教室中に響き渡りそれと同時に周りの人達は動き出す。

そして…前世で言うところのチャイムが鳴り号令が出される。


「起立!…これから1限目を始めます「「「よろしくお願いします」」」着席」


そうしてこの学園初めてとなる授業が開始された。

…というかみんなクソ移動が早かったな。


「えぇではこれから魔法基礎についての授業を行います。えぇ前回は確か自己紹介だけやって終わったんだったか…えぇでは魔法基礎学の教科書の1ページ目を開いてください」


…少年少女勉強中…


「えぇでは、これにて4限目の授業を終了します。各自食事を摂るように。次の5限目は武術基礎なのでグラウンドに集合するように…えぇでは解散とします。以上」


そう言いくたびれた様子でマスローバ先生が教室から出て行く。

あぁちなみにだがマクローバ先生は基本的な魔法系統の授業と基本的な文学系統の分野に属する授業を請け負っているため1年時の授業は大体マクローバ先生が担当するようだ。

まぁそのお陰でマクローバ先生の目元にはいつも隈ができているんだとか…本人が言っていた。

ま、まぁ苦労人ってことだね頑張れ。


「さて、やっと終わったことだし食事を…どこで取ればいいんだ?」


そういえば私この学園の構造とか曖昧だし把握していないから学園内にある食堂の場所とか全くわからなかったわ。

なんて事を考えていると近づいてくる気配があったのでそちらの方を向く。

そこには黒髪の少年…コウキ・フォードフロウ・フォン・フレイリーン君がおりその後ろには何故か笑顔な確か…黄緑色の髪をした少女の方がエアメル・フォードフロウ・フォン・フレイリーンさんで無表情の水色の髪をした少女の方は…ディーネ・アクアマリン・フォン・アースガルドさんだったかな?

確か授業内でそう改めて自己紹介されていたはずだ。

んでコウキ君は確かフォードフロウ伯爵の養子だったはず…まぁノートさえ見れば授業内でメモしたことがあるからこの教室の人のことなんて直ぐわかるんだがな。


それでここにきたと言うことはようやく案内されると言うわけだろうか?

できれば最初に食事を取りたいんだが…何せこの教室ではまだ私の事を見る目が多いから『飽食の胃袋』からやすやすと食料を取ってつまみ食い…いやおやつを食べることができない。

そのお陰で私の胃袋は食事を欲しているのだ。

いやこの表現は少しおかしいな…訂正しよう…私のスキルである『暴食』が食事を欲しているのだ。


「さて…ようやく昼休みだね。朝行った通りこの学園ないの案内をしたいんだけど…その前に食堂でご飯…一緒に食べよう?」


そうして私は立ち上がりコウキ君に連れられこの学園の食堂へと移動することとなった。

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