第108話

試験を受けた次の朝私はいつもより早起きして準備して職員室へと訪れていた。

そこで私はSクラスの担当の先生と話すこととなっていた。


「えぇでは…これから貴女が入るSクラスの担任のマグローバだ。よろしく頼む」


そう言われ私も「よろしくお願いします」と返しそこからこの学園についての会話へと移った。

まぁ会話といっても教室の見取り図を出されてどこに座るのかとか校内の地図やら配布物のプリント類を渡されたぐらいだが。


そうして…時はきた。

全てにおいての第一印象やら何やらを決める最初の難関…そうクラスへの挨拶。

コミュニティが欠如していて自分からの会話ができない私にとってこれは大きな難関の一つである。


「えぇでは…おはようございます。これから朝の報告を行いますので席についてください。…えぇ今日の予定は特にありませんが一つ報告があります」


そう言いマクローバ先生が開いた扉の方を向く。

私はその言葉が合図であると理解し足を動かす。

ところで話は変わるが私はどこでこの足を止めるべきであろうか?

マクローバ先生の隣で止まるべきか…それとも教卓の前で止まって挨拶をするべきか…。


そんな事を考えながら私は足を動かし結局中途半端にマクローバ先生より少し離れたところで足を止めた。

そして私に集まってくる視線…つい首を誰もいない壁の方に向けたくなってしまうがその辺は元社会人としてのプライド…否、経験を活かし我慢して前を向き下を見ず教室の奥の方の壁を見ることとした。

…まぁここで人の顔なんか見てたらなんて言われるかわからないからな。


そうして気づくこの教室の色鮮やかさ。

赤、青、黄、緑、黒、白、銀、金色その全てが揃っており視線に入れていないのに目がチカチカする。

もちろん壁の話では無く髪色の話だ。

やはりこの教室の光景を見るとファンタジーだと再確認できる。


「レイベル・イードラ・ロード・カイリエ殿下の側付きの冒険者のレナと申します…よろしくお願いします」


そう言い終わりお辞儀をすると拍手が起こりそのまま私は頭を上げ会話が終わるまで遠くを見ることとした。

にしても私はちゃんと挨拶することができていただろうか…不安だ。


「えぇでは…というわけでですね今日から新しくレナさんがこのクラスの仲間となりますのでよろしくお願いしますね。ではレナさん席へどうぞ」


そう言われ私は先ほど職員室で教えられた指定の席へ座ることとした。

私が座る席は一番後ろの壁側…所謂平民用の席と言われている席だ。

一番前から王族、その次が公爵となっておりその次がワンランク下の貴族が座り…と続き最後に残っている席が貴族ではない平民と冒険者という形になっている。


一応この学園では地位を持ち出すことは校則で禁止されてはいるが先生がこうしてこの席を指定している事を見る限り全く効力を発揮していないようだがな。

にしてもだ…やはり視線が痛い…前にいる王子ぐらいだぞこっち見ていないのなんか。

それ以外は私の方をジロジロ見てくるし特に女子の視線というのは恐ろしい。

何と無く通る際に顔をチラッと見てくるだけで嫉妬と憤怒という字が当てはまるような不気味な視線が私に突き刺さってくる…やはり女って怖い。


「えぇではこれで朝の報告を終了します。各自1限目の準備を行ってください」


そう言い終わりマクローバ先生は教室を去っていく。

それを合図に周りの席はガタッという音を立てて私の周りには一瞬にして人だがりが出来上がった。

聞こえてくるのは質問であり聞いてるだけでも「どこからきたのか」だとかの質問でありその中でも特に女子からはレイベル殿下との関係を問われることとなったが…まぁそこら辺は上手く誤魔化しつつたじたじの言葉で質問の返答を行うこととした。

そんな中だ…その質問を更に絡ませる結果を招く原因となる奴が私の元へと現れた。


「やぁレナ嬢。ご入学おめでとう…ところでレナ嬢はこの学園の設備の場所がわからないだろうからこれから案内しようかと思うんだが…どうだい?」


あぁ…何がどうだいだよクソったれがぁ!

お前が来たせいで更に視線がやばい方向に行っちまったじゃないか…。

そんな事を思いつつ周りではまだ男性陣からの質問があるのでそちらの方へ思考を向け話す。

だが相手は殿下、一国の王の子孫でありこのクラスでも偉い立場の人間だ…直ぐに男性陣は身を引きその場には私の目の前にいる殿下とそれを囲んで見る女性陣その外側でこちらを見守る男性陣という構図が出来上がってしまった。

まさに今の気持ちは追い詰められたネズミの気分だ。


救い…救いはないのかと私は必死になって頭をフル回転させる。

魔物より魔獣よりも人間関係というのは一番怖い…社会が怖い…こうやって人という生物は他者を排斥していくんだなぁとかそんな言葉しか出てこないが必死になって周りを納得させる為の言葉を考える。


そんな時だった。

この場を打開するための一つの希望の光が私の元へと舞い降りた。


「おいおいレイベル殿下…そいつ困ってんじゃん。女子達もさそんな視線向けちゃダメだって」


女性陣を割りながら一人の男性がその場に現れた。

そいつはこの世界ではあまり見ることがなかった黒髪、黒目をしており私の目の前に立ちまるで私を守るかのように手を広げそう告げた。

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