第106話
私が巨木へとぶつかりそのままその場で座っていること数十分。
ようやく周りの観衆は収まりそのほとんどの生徒は自分の教室へと向かったようでその場には数人の人だかりのみがそこへ残っていた。
私はその場に残った数人の人だかりを見ながらそろそろこの場所から動かなければと思い巨木に打ちつけられたおかげで外套がめくれ直に巨木へと当たったため打撲になっているであろう腰をさすりながら巨木に手をつけ立ち上がろうとした時だった。
「君、大丈夫だったかい?」
そう私に言って手を差し出してきたのは先ほどまで戦っていた殿下と呼ばれていた人物レイベル・イードラ・ロード・カイリエだったかそんなイードラ王国の王子が私へと話しかけてきた。
見た目は白色の髪と紫色の目で長身痩躯であり先ほど纏っていた覇気はもはや見る影もなくなっており一見するとただの優男に見える風貌だ。
にしてもこんな細い身体のどこにあんな力があるんだか…やはり魔力が原因でああなるのだろうか?
気になるところだ。
そんなことを考えながら重たい身体に鞭を打ち無理矢理立ち上がり二歩後ろへと下がる。
やはり彼がどんなに優しかろうとさっきまで戦っていた相手だし私が遅れをとった人間だ。
そう易々と気を許せるわけない。
そんな私の警戒体制を見たレイベルは顔を少し顰めて言葉を紡ぐ。
「警戒しているのかい?…君はトンガ子爵子息の依頼を受けた冒険者なんだってね。君さえ良ければなんだが依頼を破棄してワタシの依頼を受けてくれないかい?今回の件で君の強さが広まってしまったからね…」
ほぅ…つまりはあれか予想以上に私が強かったからレイベル以外太刀打ちできないので私を使ってまたこんなことを起こすかもしれないからと言いたいわけだな?
んでそれを身近で実感したこのレイベルっていうやつは私を使わせないために私を引き抜こうとしているわけだ。
…だが残念だったな私はトンガ子爵子息と依頼の契約は行なっていないから依頼の拘束力というものは無いに等しいわけだ。
今回は人が押し寄せた結果身動きが取れなくてどうしようもなくなり戦うことになってしまったが…これからレイベルと戦うことはもう無いだろうし。
いやだがそうなると勝手に私の名前を使うトンガ子爵子息が問題になってくるのか…面倒だなぁ。
「どうだい?待遇もできるだけ良くしてあげられるけど…」
「…………」
そうして考えること数分が経ち、数十分が経ち…そうして数時間が経った頃これを考えることとなった原因が私たちの方へとやってきてくれた。
顔は豚のようでずんぐりむっくりの横幅だけでかい身体を横に振りその醜い野郎は鼻息を荒く立たせながらこちらへと明らか「俺は怒っている」ということを誇張するかのような歩き方でやってきた。
一足つくと大地が揺れるようにドシンという重たいものが大地についたかのような足音…まさに獣の領域…まさかコイツ本物!?
という冗談は置いといて今の状況を変えてくれる唯一の存在だからな…感謝感謝。
「オイッ!オマエ…何故負けた!?貴様のせいで俺のメンツが台無しになってしまったでは無いかどうしてくれるッ!?これだから下民の底辺である冒険者は…責任は取れるんだろうな?」
そんなことを言いながらこちらへと詰め寄ってくる豚。
というか私の横にはお前が殿下と言っていたお偉いさんがいるわけだがそんな口調でいいのか?
ほらお前が殿下と言っていたレイベルは横目で見るだけでわかるぐらい青筋を額に浮かべながら明らかに怒っていらっしゃるぞ?
「そうだ…いいことを思いついたぞ?…お前確か女だったよなぁ?今夜俺のとこまで来いよ。それで帳消しにしてやる」
…何を言っているんだこの豚は…屠畜して焼却した方がいいのでは無いか?
主にその考えに至る脳みそを獄炎舞で焼いてやろうか?
その時私は思い出した…そういえば代行者のスキルにカルマ値が関係する奴があったが使う場面がなかったやつがあったなと。
こんな豚には神からのギフトである呪いという名の祝福がお似合いだろう。
ハハハ…今から盛大にお前のことを祝ってやるよ。
「豚…お前…実験台…いや私のモルモット1号に任命するよ」
「あぁ?モルモットだ?貴様何を言っているのか分かっているのか?いいからコレはこの俺ピグル・トンガ・ヴァイル・アーベント子爵からの命令だ」
私はそんな言葉を無視して腕を徐に手にかかげ言葉を紡ぐ。
私が実験して来て一つ分かったことがある。
それはこの世界にはスキル名を口に出して言うことで威力が増し演出が増すと言うことだ。
逆にスキル名を言わなければ威力は半減するし演出もしょぼい…まぁそこら辺は文献では『無詠唱』というスキルにより半減というデメリットをなくすことができているようだが。
もしも私がそれを手に入れてもソレでは浪漫がないと言うわけで私はスキル名を言って演出を増させるという選択肢を選ぶだろうな…時と場合によるが。
「…我は代行者、罪少なき者には誓約に沿った痛みを罪多き者には戒めに沿った処罰を与えんとする。喰らえ『神罰執行』」
そう言った瞬間だった。
頭上にあった雲は二つに割れ神々しい光の粒子が豚に降り注ぎそして…豚に向かって一筋であり極太なそれこそ人間一人を呑み込むような雷が降り注いだ。
色は最初は無色透明な雷だったがそれはだんだんと黒色を帯びていき最終的には豚に降り注いだ雷はまるで黒雷と言えるような黒さまで色が変わっていた。
そうしてその雷は突然としてその場からなくなる。
その場に残るのは皮膚が黒く焼け全身爛れ背中に焼き印のようなものが押されている豚のような姿をした豚がそこにあった。
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