第104話
周りの人が一斉にこちらへと振り向き私は一瞬にして注目の的となってしまった。
今鏡を見れば絶対肌が赤くなっていることだろう。
私はそんなことを考えながらどうしてあの依頼者が私のいまの容姿を見て私だと気づいたのかについて考えていた。
まぁ…その結果たどり着いた答えというものが特徴的な仮面をつけた低身長の奴だという平凡な考えぐらいしか思いつかなかったわけだが…。
そんなことよりだこれからどうするべきだろうか?
誘いを受けるべきかそれとも魔術で姿を消して退散するべきか…。
殿下と言われた人物の強さは今までの戦いの感覚で言うと「まぁそこそこやるじゃん」的な感じなんだが。
戦えば周りに被害が出るがそこそこ苦戦を強いられるぐらいには強いだろうな。
というかこの殿下とかいう奴周りと比べてマジで強いな…いや周りの奴らが弱いのか?
「……トンガ子爵子息、貴様まさかとは思うが自ら戦わず子供に戦わせるつもりか?」
「何か問題お有りで?使えるものは使っておかなければ損ですぞ?」
そう言いトンガ子爵子息は後ろに下がりつつそのように言葉を発する。
トンガ子爵子息が後ろに下がるごとに聞いていた観衆も後ろへと下がりその場には私と殿下のみが取り残されてしまった。
半径で言えば100mほどだろうか…まぁ戦闘というのはそれだけ危険ということだろう。
私はというとその場で考え事をしていた為反応が遅れてしまいその場に取り残されてしまった。
隙をついて後ろへと後退しようと思ったんだがやはり身長差というものが存在する為力の関係上後ろへと無理矢理いくこともできずその場に取り残されてしまったわけだ。
んで、殿下はというとその場で下を向きながらなんかプルプルと震えている。
何かな…一時代前に流行ったスライムの真似かな?
そうして私が硬直すること数秒後、殿下はいきなり前を向き引き抜いていた剣を私へと向けてから腰につけていたもう一本の剣を取り出し構えた。
「いいだろう…そこまでワタシをコケにするなら取りあってやろうではないか…」
そう殿下がいうと観衆は盛り上がりを見せる。
そうして開戦のための合図が観衆の中から出てきた一人の男性により取り行われる。
「これよりレイベル・イードラ・ロード・カイリエ殿下対ピグル・トンガ・ヴァイル・アーベント子爵子息の契約冒険者…えぇっと名前は…冒険者との対決を開始する!それでは始めッ!」
そう言われ私の意識は戦いへと集中していく。
頭に被せていた仮面を顔面に取り付け最小限の動きで虚空庫からナイフを二本取り出し外套で身を包み相手の出方を見るために後ろへとバックステップをして一旦距離を取る。
「すまないな…名前も知れない冒険者…だがワタシの目的のために加減はできない。それでは行くぞッ!」
そう言った瞬間姿がブレたと思考した時にはレイベルと言われた人物は目の前におりその両手に持つ剣で私を薙ぎ倒そうとしていた。
だがここで倒される私でない。
その攻撃をナイフで受け流しながら小さい身体を駆使してその攻撃を避けていく。
だが受け流した剣が地面へと着きそうになった時途端にその剣は方向修正されもう一度攻撃をしてくる。
だが私はそれを避け続ける…これではキリがない。
私はレイベルの剣撃が思ったより速いということで反撃する余裕もなくただただ避けるという選択肢しかなかった。
さてここはどう乗り越えるしかないわけだが…ここは多少無茶してでも切り抜けるか。
深呼吸を行いながら心臓から魔力を片腕に集め収束させつつ身体全体に反動に耐えられる程度の身体強化を施す。
周囲の空気は静電気を起こしたかのようにパチパチと音が鳴り始め気づけば粒子が目に見えるほど広がっておりそれが少しずつ私の腕に集まっていく。
それを見たレイベルは即座にその場を逃げようとしその場をその異常なまでの脚力で逃れようとするがそれを私は逃さない。
同時進行で違う技を使う。
これは並行思考があった頃から主に魔術で使ってきたことだが今回は違う。
一つ思考は相手を仕留める為に魔力を集める為に使いもう一つの思考は相手を追い詰める為の思考を行う。
それが狩りにとって一番大事なことであると私は考えた。
だからこそ私は追い詰める為に一つの技を開拓したのだ。
足に力を入れ地面と踵の間の空間に魔力と空気を収束させる。
足は反動に耐えられるように身体強化で固める。
私が思いついたものは単純明快で空気の圧縮により集まった熱エネルギーを使いそれを急激に更に圧縮することで起こる爆発を利用して推進力を出すというものだ。
まぁその分足へのダメージがやばいがまぁそこはファンタジな能力で補うというわけで…。
「逃すかッ!我流戦闘術…膩ノ術『神風脚』ッ!」
踵を思いっきり地面へと叩きつけ赤い光と共に前へと押し出される。
そうして後から聞こえる爆撃音。
ちなみにだがこの神風脚…一切ブレーキが効かない仕様で何かにぶつかるか途中で脚を地面にめり込ませないと止まることができないクソ仕様であります。
まさに自傷ダメージ必須の神風特攻の如く…まぁ技としては終わっているしネタ枠だねこれ!
というわけで足に身体強化ッ!
からの脚を地面へとめり込ませその勢いで行くぜッ!
片足でバランスをとり腕に更なる身体強化を施す。
空気中に散らばる粒子は更に煌めきを増し赫く、更に赫く輝きだしてバチバチという音が鳴り響く。
てはもはや電気のように揺らめきその原形から遠く離れた形状へと変化を遂げまさにその手はナイフと一体化しているかのように鋭い電撃の刃と化している。
「我流戦闘術壹ノ術…『緋槍』ッ!」
そうして私は腕を突き出しその貫くことに特化したナイフをレイベルへと放った。
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