第103話
目の前に出された料理を見て涎が垂れつつも手を合わせて小さな声量で「いただきます」と呟きナイフとフォークを使い早速グラスカウのベーリーソース掛けステーキを切り分けソースをつけて口へと運ぶ。
「うむ…これはなかなかに美味いものだな」
コッテリとした濃厚な旨味の詰まった脂が噛んだ瞬間溢れ出しそしてその肉にかかったベリーソースが甘酸っぱく脂による胃もたれも防いでくれる。
歳をとるごとに食べられなくなった大量の脂の詰まった肉の味がこうしてまた復活を遂げるとは…これだけでも転生して良かったと思える味であるな…。
「んで…白米が進みますなぁ」
そう言いつつスープ用に置かれたスプーンの横に置いてある箸をとり白米をかき込む。
こうして食べていると前世のことを思い出してくる…20歳を過ぎてだんだんと油で作られた揚げ物などの食べ物が食べられなくなったあの頃の悲壮感と死に近づいていく感覚と老いの実感。
やはり若いうちにいっぱい食べれば良かったという後悔が思い出されるとは思わなかったな…果たして今生では果たしてそんな後悔もなく食べ物を食べることができるのだろうか?
…まぁ今はこうして何も考えずに食べることとしよう。
今は今のことを考えて食べ物を貪ればそれでいい。
「さて、そんなことを考えている間にあっという間に食べ終わってしまったな…」
感想としては、日本にいた頃を思い出す味だったということだな。
オーク汁はまぁ言わずもがな豚汁の味がしたしショコラパンケーキというものは若い奴が食べていて勧められて食べたチョコレートがかかったパンケーキの味に近かった。
まぁこっちのショコラパンケーキは何というかショコラの部分がムースのようになっていて舌触りが少々思っていたのと違い面白かったが。
んでリィモンティー…まぁこれは言ってしまえばレモンティーだわな。
…今回の食事には全くもって合わなかったが。
まぁリィモンティー以外はおおよそ満足といったところだろうか?
ただなぁ…何というか空腹が満たされないというのが難点ではあるな。
胃袋はもうこれ以上は入らないという感じなんだが脳はまだ入るというか空腹であると言わんばかりに認識している。
自制心とかそういうのに耐性がなかったらすぐにおかわりの食べ物を頼んでしまうぐらいには脳が食べ物を欲している状態だ。
「これが『暴食』の難点だなぁ」
三代欲求の一つである食欲を増進させ所持者を空腹にさせ狂わせるスキル。
きっと職業とスキルが揃って初めてこのスキルの効果は真価を発揮するものだろうと私は考えているのだが…多分だが更にこの食欲は増進して自制が効かなくなった時が私の最後なんだろうな。
自制できなければ死が待っており自制ができれば力を思うがままに使うことができる。
何て私向けなスキルなのだろうか。
何せ自制さえできれば力を手にいれれるのだから。
そういう点ではあのナメクジには感謝しなければな。
「さてやることも終わったしそろそろ帰ることとしようか」
そう呟きつつ立ち上がり金額を言うマシーンと化した女性店員さんのところへと向かい金を払って寮に帰ることとした。
ちなみに代金はあれだけ食べても銀貨3枚とお手頃価格でした。
…少女帰宅中…
孔子亭から帰宅中学園の敷地に入り寮へと行くために途中で絶対に通過するグラウンドのような場所を通過しようと歩いている時だった。
いつもはあまりこの時間では見かけない学園の学生が今日は何故か多くおりグラウンドの中心で人集りを作っているのを見かけた。
ここで私には二つの選択肢が現れた。
それは人集りに近づいて知的好奇心を満たしに行くか無視して身体を休めるか…まぁ私は今まで休んでいたし身体は別に休めなくてもいいから近づくんだけどね。
そうして私は人の間と間を小さい身体を駆使して通り抜けていき中心に移動する。
「おっ、アレは…」
その中心にいたのは二人の男性と一人の女性。
男性二人は女性の方をたまに見ながら口論を続けている。
片側は長身痩躯でありながら見ただけでわかるような力というか覇気を纏っている雰囲気を放っている男性、それに対するは豚のように丸々とした体型でここに来てから一回り大きくなったように見える豚…そう私がここにいる理由を作った貴族の姿があった。
私はそれを見て面白いことになりそうだと思い耳を傾けることとした。
「すみませんが殿下この女は殿下に無礼を働いた女でございます。なので私なりに少々礼儀というものを教えようとしたのですよ」
「ふむそれはどうであろうなトンガ子爵子息殿。あなたのその痛めつけるということは少々やりすぎだと前に注意したはずですがわかっていないようですね?」
「いえいえ、これは教える為には大事なのですよ。このような低俗な者はこうでもしなければわからないようでしてね?」
そうしてその会話は殿下と言われた男性が小言を言うようにトンガ子爵子息に言うがトンガ子爵子息は全く殿下と言われた男性の顔を見ずにペラペラと反論していく。
その姿はまるで鼻高々に自分の行いが正しいと言っている感じにトンガ子爵子息は言葉を綴っていき会話は全く進展を見せずにただただ時間のみが過ぎていく。
また、低俗な女と言われた今もなお、会話についていけずにいる女性はその場で手を前に出して落ち着かない様子でその状況を見ている。
足は今もなお悪口を言うトンガ子爵子息の方は向いておらず殿下と言われた人物の方へ動かそうとしているがピクついているだけで動いてはない。
「もう良いッ!ワタシはその行いが間違っていると申しているのだッ!その行いを直して貰おうッ!」
そう言い殿下と言われた人物は腰につけた剣に手をかける。
トンガ子爵子息と言われた依頼人とはいうとその行動に首を振りながら言葉を発する。
「全く…殿下武力で解決するしか思いつかないのですか…学園内での爵位の持ち出しは厳禁ですぞ?まぁいいでしょうその勝負受けて立ちましょう」
「どの口が言っているのだッ!…ワタシが勝利した際はこれ以上彼女には近づくなよ」
「まぁそれでもいいでしょう。私が勝った暁には…わかっていますよね?」
どうやら私の依頼人は相当腕に自信があるようで勝負内容を飲み勝負するようだ。
まぁ私には関係ないし多分というか確定がつくほどに結果は見え見えだしそろそろ帰るかな?
そう思い私が帰ろうとした時だった。
「おいッ!そこの冒険者ッ!お前は俺の奴隷だろう?代わりにこの決闘を行えッ!」
私はその言葉に頭を抱えてしまいたくなりそうなほどの頭痛と周囲から見られる羞恥心が身体を支配した。
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