第102話
カランカランという木と木がぶつかり和を感じられる音を聞きながら店の中に入る。
今まで見た店の中でも一番を争うぐらいには小綺麗な風景となっており煌びやかな装飾がされた室内となっており思わず入り口の前でボケーっとしてしまった。
そのまま私が入り口で立ち往生すること数秒、前から一人の女性の店員がやってきて私に話をかけてきた。
「いらっしゃいませ。どのような服をお探しですか?」
そう聞かれ私は必死になって色々なことを考えるが出てくる言葉はジーパンやらスーツだとかの男物ばかりで全く女性の服が出てこず頭を抱えてしまう結果となった。
と、とりあえず何と言えばいいのだろうか?
「…え、えぇと…外出用の服が欲しいです」
そう言った瞬間だった一瞬目が物理的に光ったと思うと目の前の女性は目をくらませるぐらいのスピードで走り数秒でその手には何着もの服が抱えられていた。
そうして手を引かれるまま控え室のような場所まで連れられ気付けば独断でファッションショーができるほどの服を着せられては脱がされまるで私は着せ替え人形のような気持ちで目の前の女性の凄まじい速さで動く手と足そして口を相槌を打ちながら見ることしかできなかった。
私が着せ替え人形になって数時間が経過した。
私の手には大きな袋が2つ。
その中には綺麗に折り畳まれた服が丁寧に入れられていた。
ふと店のガラスに映る私を見る。
そこには頭に面を被せこの世界の極東の国から伝わったと言われた和服を着せられた白髪の少女の姿があった。
…まぁ私なんだがな。
今回の買い物だけで金貨が30枚も飛んでいってしまった。
冒険者と探索者で稼いだと言っても普通の買い物じゃこんなに使わないだろうと言えるほどの額を服に費やしてしまった。
いや、いやしかしッ…悔いはない…あの状態で服を減らしますとか言ったらどれが一番似合うかとか言われてさらに時間を喰うことになるかもしれんかった。
そうこれは必要経費なのだ…この世界に慣れるための必要経費だと思えばこんなモノ痛くはないのだ。
「はぁ…今の時間帯は大体2時前後ぐらいか…なんか食えるとこでも寄って食べるとしますかね」
そう思い私の足は動き出した。
あぁ一応言うが和服を着ている奴は少ないがちらほら見える。
大体が黒髪で刀みたいな物を腰とかに差しているから職業的には侍とか武士とかに当たるのだろうなぁ。
そんなことを思いながら自分の嗅覚を信じて飯を食べれるところを探していると肉の焼ける音と香りがしてそちらに振り向く。
料理店は『孔子亭』という少し古びてはいるがそこには少なからず行列ができておりそれを見るだけでもその店の評判というのが確認することができた。
そしてその店の最大の特徴それが黒髪の和服姿の人が並んでいると言うところだ。
和服=日本人に近いとされている極東の人。
というか私の勝手なイメージがそこの店には極東で食べられるものが売っているのだと勝手に脳が分析しており私の足はそちらの方向に変えられ食欲のままに歩き出し並んでいる最後尾の人の後ろにつき待つこととした。
…少女待機中…
並んでいること数十分が経過し私はようやくその『孔子亭』の中へと入ることができた。
中は酒場のような感じであり元は酒場で料理店にする為に改装したのだろうなという感じがしてなかなか趣深い店内の雰囲気となっており個人的に気に入ってしまった。
そうして偶然空いている一人用であろう壁側にポツンと一つの席と机がある所へ座りメニューを見る。
「ふむふむ…肉料理かなこれ?」
そのメニューに書かれているのは大部分が肉の料理。
流石は『孔子亭』と名乗るだけあって料理の名前の前には牛の魔物であろう名前が書かれておりこれだけの種類どうやって仕入れているのだろうと言う興味と共にそれぞれどんな味がするのだろうと言う興味がそそられた。
そして目につき一番驚いた部分…それが白米という文字だ。
これらの料理名や米という文字を見た瞬間やはりこの世界には私以外にも転生者や転移者といったやつがいるのだと再認識することができた。
「名も知らぬ転移者よ…ありがとう」
私はそう言わざるおえなかった。
にしてもこの店には本当にたくさんの料理があると思った。
野菜炒めに肉詰めにハンバーグなんてものもありなんなら肉以外にもジェラートとか小洒落た料理やスイーツまで存在する。
さて、これを注文する為にはどうすればいいのだろうか?
そんなことをふと思い周りを見渡す。
何せこの店に入って店員の声というのがカウンターで金額を言うマシーンと化している女性店員さんの声しか聞こえんし何ならそれ以外店員はみんな笑顔のまま料理を運び、置いてそのまま厨房に行ってしまうというのがパターンと化しており誰も料理名を言っている人は見られない。
ならどうすれば注文できるのだろうか?
ふと少し離れた隣にいる人を見る。
こういう覗き見みたいなものはマナー違反なのだが致し方なしというべきだ。
ふむふむ…机に置かれた紙に料理名を書いて…その紙が厨房に飛んでいくと…何てファンタジーなオーダー方法なのだろうか。
早速私もやってみようではないか。
「えぇっと『白米』『グラスカウのベリーソース掛けステーキ』『オーク汁』『ショコラパンケーキ』『リィモンティー』っと…これぐらいでいいかな?」
私が書き終わりその紙を机に置くとその紙は淡く光空を飛び厨房の方へと飛んでいってしまった。
…そうして数秒後私の目の前には店員さんが運んでくる料理で埋め尽くされていた。
何て早い調理速度…まさか思考でも盗聴でもされているのかと思うほどの速度で私の元へ頼んだ料理は運ばれてくるのだった。
「…思考を盗聴されないようにアルミホイルでも頭に巻き付けるべきだろうか?」
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