第100話
馬車に押し込まれてから数日が経過した。
まぁもちろん途中途中で休憩やら野営やらで止まったりしてお陰で体力的には十分だが私以外がコレをされたら暴動が起こるだろうなと予想がつくぐらい対応が雑で杜撰だった。
まずこの馬車を守る護衛はほぼ使い物にならない下位の道端で出てくるゴブリンにすら怯える始末だし野営の仕方すらわからない。
そして私には当たりが強く飯すら上げないときた。
そんな中魔物が出てきたら私に頼って護衛の「ご」の字すら役目を果たせない始末だ。
…まぁ結局は私が裏からそれを後ろから援護して穏便にすませたんだが。
んで何故私がここまで連れてこられたかというと何でも他国にある学園というか学校に通うらしいんだわ。
それでそこはメイドやらの着付けをしてくれたり身の回りのことをしてくれる奴は学園に入ることができるんだが騎士やら兵士やらの貴族が持つことができる特権を持ち込むことが禁止されているとのこと。
ただしそれではいつ何時襲われるかわからない貴族はそれでは危険であるとして特例で貴族の息にかかっていない冒険者に護衛としての依頼を受けさせて自分を守るということなら通うことが可能ということにしたらしい。
で、それで選ばれたのが私っていうわけ。
まぁ実際はかなり適当に選んでいたしまず冒険者以前に私は探索者だが。
いや一応は冒険者でもあるんだけど…ま、まぁそれは一旦置いといてだ兎に角私はまずその依頼を受けていないというところに着目して欲しいんだわ。
つまり何が言いたいかというと私はタダ同然で国と国の間を移動したというわけだ。
コレはかなり楽ができたと言えるね。
何しろ一番面倒な国と国の移動の際の事務作業が貴族という特権のおかげで掻き消されたのだから…その点においてはこの名も分からない貴族に感謝だね。
そんなこんなでやってきましたのは外見から見る限りでっかな西洋のお城。
コレがこれから通うことになる学園らしい。
「ふん鈍間がッ!おいメイドそこの荷物を俺の部屋に早く持って行けッ!そして冒険者貴様は今日から俺の奴隷だ外出する際は着いてこい。…後はそこら辺で待機していろ」
そんなことを言いながら名も分からない貴族はこの学園の寮だと思われる建物へと入って行ってしまった。
…あれ、もしかしてだけど私って泊まる場所がない?
「………マジか」
ま、まぁ別に泊まる場所が無くとも別に困りはしないが…。
この学園の護衛ってもしかしてかなーりハードだったりするのだろうか?
そんなことを考えてその場でどうしようかと考えるも唐突の計画の崩壊により頭の中で考えること全てがフリーズすること数分。
そんな中私に話しかけてくる声が聞こえ振り返る。
「やぁそこの困っている筋肉の脈動をしている冒険者さん。もしかしてだが君は貴族に無理矢理連れてこられたせいで今日泊まる場所に困っていないかい?」
その話しかけてきた男の声の主は正に筋肉を体現したかのような身体で長身。
そんな巨漢が声をかけてきた。
普通だったらこんな時どうする?
…私だったらこの答えはこうである。
「…………………………………………………………………………………………………………………」
そう答えは単純明解、何も喋れないコレが答えである。
頭に浮かび上がるのは筋肉、脈動?、背が高い、強そう、強面、範馬○次郎?、そして最も浮かび上がってくるのはこっからどう会話したら良いのかわからないということだ。
頭はパーになってフリーズして頭の中は正に真っ白。
そのおかげで私が喋らないからか目の前の筋肉男はめっちゃなんか困った顔しているし…ど、どうすれば…き、奇声でも上げればなんとかなるか!?(錯乱)
そんな感じで声にならない頭の中での会話が続くこと数分目の前の筋肉男も何故か分からんが腕を組み「うーむ」と悩んでいるようで。
そう思った瞬間だった。
急に筋肉男は私を持ち上げるとそのまま脇に持つと急に歩き出した。
「まぁ冒険者よ。ここはともかく泊まる場所が無い奴が出るのは恒例行事だッ!ガハハハ!というわけで今日からお前は俺の管理する寮に来いッ!」
そのままその筋肉男は私を抱えながらガハハハと笑いながら管理しているという寮へと歩いて行く。
そうしてついたところは貴族が入って行った寮に比べればまぁ少しグレードは落ちるかな?といったところだった。
まぁこれについてはある一点を除けば不満はない。
設備は必要以上の物が揃っているし外壁は年季が入り始めているが前世に暮らしたアパートよりかは汚くはないしこれぞ西洋ファンタジーといえるような柵で囲われ芝生がある庭がある。
うむ、だが…何故ここの寮の名前が『マッスルボディ寮』とかいう変な名前なんだ?
そこだけが疑問であり不満である。
「さぁここがお前が暮らすことになる『マッスルボディ寮』だ。今日からよろしくなッ!」
そういうと筋肉男は私を今日から暮らすことになる寮の一室に連れて行くと「まだ困っている奴の筋肉の脈動を感じるッ!」だとかで私をこの寮の一室に置くと窓から外へとジャンプしてこの寮を後にして行った。
「え…マジで私ここで生活して行くの?」
そうしてこれまた数分の時間を有して私は正気を取り戻しまた思考の海へと意識が埋もれて行く。
私はこれからの学園での護衛としての生活に不安が積もった。
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