第99話
…そうして目の前に職業の選択肢が映される。
どれも前見た職業の上位版となっておりその中でも《削除済み》という職業が異色を放ちながらその欄へと存在していた。
さて、ここで自分自身に質問してみようではないか…私はどれを取れば良いと思う?
『暴食者』を取って一日中続く空腹と戦う?…絶対そんなの嫌だね。
それともこのまま召喚の魔術を強化するため『召喚魔法使い』になるべき?…いやこれ以上召喚魔術を強化しても扱い切れる自信がないな。
ここは『魔の求道者』でもなって魔術の探究でもするか?…いや説明欄がなんというか不気味だしやめておこうか。
「まぁ《削除済み》は選ばないとして…となると最上位職の『代行者』か」
ユニーク職では無いが確か冒険者ギルドで見た本の中にあった職業の本ではこの職業の奴はあまりいないみたいだしこの職業になってみるってのもありっちゃありか。
一生この職業っていうわけでも無いし…『代行者』になるか。
そう思い私は『代行者』の選択肢を押した。
その
うむ、そういうことにしておこうではないかこの選択肢はエラー、つまりはバグだ。
何があってもおかしくはない…そうだろう?
「さてと、というわけで職業が『代行者』になったわけだが…」
私はステータス画面を呼び寄せ職業スキル欄を見る。
そこにあるのは『神罰執行』という不穏なスキルがあった。
Lvはないことからこれ以上は成長することは無いスキルなのだろうと私は思った。
神罰執行:人にしかこのスキルは発動しない。対象のカルマ値によってダメージが変動する神の雷を落とす。またカルマ値関係なく相手に全能力を低下させる呪いを付与する。神に準ずる者の加護により消費MP1となる。
…なんというか今まで見た中で最凶クラスのスキルだな。
人にしか効かなくて神の加護があれば消費MPが1になるってマジで人間特攻の職業じゃねぇか。
いやそもそもこの職業って確か特殊条件で転職できる復讐者が聖職者等の神の祝福を受けた者や職業についた者のみが転職できる職業だからある意味人間特攻でも当たり前なのか?
…いやそもそも私は復讐する奴とかいないんだが?
私は何の特殊条件を達成したんだろうなぁ?
まぁそんなこと考えていてもどうにかなるわけじゃないし別にどうでも良いか。
さて、そろそろこの街ともおさらばするとしますか。
そう思い身長が変わらなく軽い腰を上げ荷物を纏め虚空庫に物を投げ込み準備していく。
上に白黒のパーカーを着て下をカーゴパンツに履き替えその上に私の頭の上から足元まですっぽり隠れる金色の糸で星模様が刺繍された外套を纏い顔面に羊の顔のような骨のような素材でできた仮面を被せ虚空庫から杖を取り出す。
もちろんコレは『星屑の遺跡』の最奥、バフォメルの部屋の奥のダンジョンの核があった場所で見つけ貰ってきたアーティファクトと言われる物だ。
アーティファクト名:伸縮棒
ランク:D
効果:MPを注ぐことで伸びたり縮んだりする。棒の強度は鉄以上であり鈍器代わりにも使える。
売値:銀貨8枚
アーティファクト名:《星の魔術士》の外套
ランク:S
効果:身につけることで闇夜に身を潜められ星の光により修復が可能。また魔と物理に対する耐性を持ち魔の攻撃を吸収することができる。
売値:不明
アーティファクト名:《星の魔術士》の仮面
ランク:S
効果:身につけることで敵と判断した自分より弱いモノへ畏怖・幻覚を与え魔に対する耐性を低下させる。
売値:不明
コレを鑑定に出した時めっちゃ譲ってくれるよう交渉してきたが…まぁその辺はこの仮面の幻覚を最大限フル活用してそういう争いは避けてきた。
そんなこんなで私のいつも通りダンジョンに行く時用の装備を装着し私は宿を出て探索者ギルドへと足を進めていく。
まぁなんだ…一応何年もお世話になったわけだし一応は挨拶ぐらいしといたほうが礼儀ってもんだろうと考えての行動だ。
そうして歩くこと5分。
私は探索者ギルドの前まで歩いてきた。
しかし今日の探索者ギルドはいつもとは違くギルドの前には豪華な装飾がされた馬車とそれとは反対に見窄らしい馬車がありその周りには探索者が集まっていた。
私はそれに今日は何かが起こりそうだと考えながら探索者ギルドの中へと入っていきドローさんのところまで移動し今日でこの街を離れることを告げた。
「…そうか、嬢ちゃん。もうここを離れるのか…まぁいつかは来るとは思っていたがよりによって今日とは…悪いことは言わないここから離れろ」
そう言いドローさんは私を持ち上げすぐ後ろにある裏口に通じる通路に問答無用で押し込もうとした時だった。
「ほぅ?そこのやつ待てッ!こっちに来い」
その声に誰もが振り向き動きが止まる。
そこには明らか貴族ですというアピールマシマシの服をきた所謂坊ちゃんと言える小僧がいた。
見た感じ身長は160cm、体型は太っており探索者とは思えない格好しておりここには不相応だとその場にいる誰もが思った。
「…貴族には…逆らえない…か。すまんな…嬢ちゃん」
私を抱えるドローさんはそう言い貴族のいる場所に置いた。
私はというといきなりのことでどうして良いのか戸惑っており反応ができなかった。
「ほぅほぅ…まぁこうなれば誰でも良いか…ギルド長よッ!コイツだッ!コイツを護衛としてもらって行くぞッ!」
そう言った瞬間この貴族であろう護衛が動き出し私を囲み引っ張って行く。
その光景に対面していた探索者ギルドの探索者がそれを非難するがそれでも護衛の足は止めずに私を引っ張って行く。
まぁこの程度なら私は抜けられるのだが…貴族に逆らうとめんどくさくなる…だからこそ私は動けずにいた。
最悪殺して幻覚を見せておけばどうにかなるだろうという軽視もあるが。
だがそれを許さないのが探索者ギルドの長…未だ私の後ろで貴族との交渉という名の脅迫をする。
「ここは探索者のギルドだッ!傭兵でも冒険者でもないぞッ!」
だがそれでもここで一番偉いのは貴族。
誰にも逆らうことができない…たとえここが自分の国でなくてもだ。
貴族の特権は軍事力と統制力。
ひと声すれば従う衛兵、騎士、兵士は動き外国であっても何かと理由をつけて攻め落とそうとする。
普通ならばその行動に自分の国が動いてそれを阻止しようと思うがもしも相手の国がそれに難癖をつけてきて自分より強い国だった場合それはどう対応する?
そう、そのことを無視するというのが結論だ。
だからこそ誰も貴族を攻撃しようとは思わない。
声には出す…だが行動には起こさない。
そうして私は護衛に見窄らしい馬車に押し込まれ…この街に挨拶もできずにこの街を去った。
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