第96話

一瞬にして目の前の光景は変化する。

周りの空間が宇宙そのもののように変化し先ほどまであった空気が無くなり息ができない。

そんな以上な光景、体験をしつつ私は必死に今するべきことを考える。


空気が無く思考が鈍っていく…頭が痙攣を起こしたかのように震え手が思うように動かせなくなり最早まともな魔法陣すら構築することができない。

だがそれでも私は必死になって今を打開するための策を考える。

今私に必要なモノは空気というか酸素、安定した重力、そして体温調節するための魔術。

まずは酸素が先だろうか…いやいっそのこと全てを複合して新しい魔術を適当でも良いから作った方が速いか?


魔法陣は適当で作って必要な部分だけ切り抜いてくっ付ければどうにか発動するか。

あとできるだけ効果時間はあるようにして…重力の効果は少しだけ軽減されるだけにしようか…そうしなきゃ星に引き寄せられちゃうかもしれんし。


「魔法陣…展開…『ノーマリィ』ッ!」


自分に向かって魔法陣を展開し発動する。

この魔術、ノーマリィは自分が指定する状態へなることができるという効果がある。

まぁ今回は自分の体が空気を必要としない状態にして重力を調整して空中でも多少は動けるようにして体温を少々上昇させた感じだ。

完全にこの魔術はあの雪山の時に使ったアダプータの上位互換的な感じになってしまったがこの魔術は効果がすごいだけあってMP消費がヤバいのに対してあっちの方がMPの消費は少ないし基本的にはあっちの方を使うだろうな。


そう思い一応窒息死だけはしないことに安堵しながら私はこの空間の奥にいるバフォメルに目を向ける。

そこにはこちらを嘲笑うかのような笑みを見せる顔があった。


《フムフム…コレに対応してみせるかではコレだとどうだ?》


そう言いバフォメルは手を横に薙ぐ。

すると手を薙いだ方向に土が集まりそこには私の身長の数倍はあるだろう土塊が出来上がり…バフォメルが私に向けて手を翳すと同時にそれがこちらに向かって発射されたかのようにこちらへと迫ってきた。

それはこちらに近づくほど先端の表面が赤くなり次第に青となりその青が全体に帯びそしてまるで彗星のように青い炎を纏いながらこちらへと迫る。


私はその迫る彗星に舌打ちをしつつ対応策を考える。

まず触ったらまずいというのは分かる…あれ避けれるか?

一応最大限まで身体強化を施して空中を蹴るようにして動けばあれは避けようはあるがあの数全部ねぇ…。


「チィッ!避けるしかないか…身体強化ッ!」


そう声に出し自分自身に一喝をし気合を入れ身体全体に出来る限り強化し迫りくる彗星を避ける。

だが思うようにはいかずその彗星から溢れた青い炎に当たり少しずつだが体力が削られていく。

しかもバフォメルはそれを見ながら彗星を放つ速度を上げてくるもんだからこれではキリがないというモノだ。


もうここで諦めてしまおうか…そんな思考が頭に囁きかけたその時だった。

彗星の一つが私の腕にぶつかり体制を崩してしまった。

魔術で補助して重力の効果が薄くなっていると言っても所詮は魔術での補助…完璧ではない。

それゆえに彗星に当たった私は身体をコマのように回転させながら吹き飛ばされ最終的に一つの星にぶつかりその勢いは止まった。


バフォメルはこちらを見て嘲笑う。

そして土埃が舞うその私がぶつかった土塊の星に狙いを定め彗星を放つ準備をする。

…私の容態はあちこちに火傷と擦り傷、打撲ができ身体はボロボロとなっている。

だがまだMPはあり体力も余裕がある…今まで守りに徹していたがアイツが油断している今こそ反撃の時ではないだろうか?


今こそ禁術に指定された技を発動させるべきではないだろうか?

禁術とは昔に創り出された術式であり人々が禁忌としてその術の情報を失くしたとされるモノだ。

まぁ何故あんな場所にそんな国が禁忌とする術式が載っている本があったのかなんてわからないが…使える物はなんでも使ってやろうじゃないか…。


魔法陣を空中に描き標準をバフォメルに合わせる。

属性は私が分かる範囲の全属性を描き出す。

代償に生命力と体内のMPを消費し血が混じる私オリジナルの魔法陣を描く。


「魔法陣展開…禁術の法」


発動すると赤黒い粒子のような物が空中に浮かび上がり私の手に集まる。

禁術の法の効果は主に禁術の発動の補助。

代償を最大限減少させ自分自身に本来降りかかる呪いを跳ね除けるという効果を持つ禁術を発動させる前に必ず発動するべき魔術だ。


そうして禁術の法が発動させたと同時に土埃が晴れバフォメルの姿がはっきりと分かるようになったことにより私は改めて標準を合わせ禁術を発動させる準備を行う。

この空間だったら周りへと被害は私しかいないしもしなんかあったらスキルにある回生でどうにかなるだろう。

禁術…それは神が創り世界に与えた魔法と人が神に対抗する為生み出した人間の知識の集合体である魔術を合成した自らを神という存在にしようとした者が作り出した愚か者の神秘の術式。

ある者は、神の如きその力を神術として崇め…またある者は、その力は愚かだと言い広め禁術と定めた。

それこそが神と人々から見放された禁術であり私の切り札と言える神術である。


手を翳し腰に刺したナイフで手を斬り血を流し空中に魔法陣を描く。

それは普通の魔法陣とは違く赤黒く濃密な魔力を含む魔法陣となり煌めきながらバフォメルに標準があわされる。


「魔法陣展開…永劫より永き罪を背負いし者共よ、我が創りし永劫不朽の氷に包まれその罪を永久に償え『悠久ノ凍獄』」


魔法陣は赤黒く煌めき魔法陣から無数の薄水色の鎖が放たれ目の前まで迫ってきた全ての彗星に絡みその動きを止めそして最後にはバフォメルにすら絡みつく。

そして始まる凍結…鎖はその大きさを変えながらまるで蛇のようにうねり全体を包んでゆき最終的には一つの氷の塊、まるで氷の星に変わり果て…それを最後にMPが尽きて私の身体は崩れ落ち視界が暗転した。


*今回使用した魔術一覧(あと禁術)*


ノーマリィ:使用者が指定した状態へと変化させる。使用している間は大量のMPを常時消費する。

悠久ノ凍獄:氷の鎖が絡みつき最終的に一つの塊にする。その氷は魂を凍りつかせ炎では溶けなく砕けない。なお代償として使った腕が凍傷し黒くなり永遠に動けなくなる。


*禁術の詠唱はキーワードが入っていれば発動が可能。(悠久ノ凍獄の場合のキーワードは『永久』『氷』)

つまり禁術を使う奴は大体厨二病患者っていうことがはっきり分かるんだね。

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