第81話

朝の日が窓から差し込み意識が覚醒していく。

それからは毎朝のルーティンを行い支度を済ましていく。


「今日は確かヨグは来れないんだったか…」


昨日ヨグとダンジョンの中で話した中で今日は用事があるから来れないと話していた。

となると今日は一人で何かしなくちゃいけないのか。

まぁ私としても今日やることは決まっていたしありがたくはあるんだけど。


今の時間としては朝の4時ぐらい。

明らかに早く起きすぎたこんな時間では屋台もやっていないし今日用事がある場所も空いていない。


「…散歩でもするか」


最近は血みどろな生活しか送ってこなかった気がするし気分転換に少しの時間は気軽に歩いて街の風景を見渡そうと考えた。

そうと決まれば私の身体は行動を開始した。

いつもの服は無いから虚空庫から無地の麻で出来た服に着替えあれから少し伸びた髪を後ろで短く縛る。

これでどう見ても街や村の子供に見えるらしい。


「さてと行きますかね」


そう呟き私は日が出て間もない朝の街に出かけた。

そうして歩くこと10分私は色々な場所を巡り歩いていた。

こうして街を歩くことでこの街はどういう所なのかわかることができた。


まずここの街にはスラムが無くそれに伴い衛兵が少ない。

まぁこうしたところからわかることだが犯罪は少ないようだ。

浮浪者や家無し子も見えない。

こうしたところからも街の姿が見えてくる。


「にしてもこの街にはいろんな店があるなぁ」


見るだけでも目を引かれるような店がこの街には多く配置されている。

魔導人形店という珍妙で興味が惹かれる店や探偵事務所とかいう冒険者がわりであろう店もある。

そんな感じで周りを見ながら歩いているといつの間にか街を歩く人が増えてきた。

どうやら時間を忘れて歩き回ってしまったようだ。


時間はもう何時になったかわからないが大体6~7時ぐらいにはなったのだろう。

朝飯は…ここから宿に戻るのも面倒だし適当に『飽食の胃袋』から取り出した物を食べることにしようか。


そう思い私は店と店の間の路地に入り虚空庫から『飽食の胃袋』を取り出し手を入れ食べ物を取り出す。

そこから出てきたのは前世よく見た串に刺さっている焼き鳥だった。

味は相変わらず美味しく昨日食べたホーンラビットの肉とは格段に違って味が濃かった。

そしてとりあえず食べ終わった私は『飽食の胃袋』をまた虚空庫に入れ今日の目的の場所へと歩き出した。


…少女移動中…


「よし…ここでいいのかな?」


あれから歩きようやく私は今日の目的の場所へと辿り着くことができた。

目の前にある私の目的地というのがこの店『カイゾウ・カイヘン衣料品店』という場所だ。

私はここに雪山の戦いでボロボロになってしまった服を取りに来たのだ。

まぁこの店の名前通りの実力がある店だった場合私の服はその名の通りになっているのではないかと心配なのだが。


そんなことを考えながら私は店の扉を開けて中へと入った。

内装はなんというか…近未来的な感じとなっており思わず足を止めて魅入ってしまう内装だった。

服が展示物のように飾られておりよくある古着屋のような服の配置がされていない。

しかも服にも清潔感があり明らかにこの時代に合っていない服の数々があった。


そんな感じで呆けながら服を見ていると前から近づいてくる2つの気配に気づき私はそちらの方へ目を向けた。

そこには何故か衣料品店なのにスパナを持った少女と巨大な鎚を片手に持つ少女がこちらへと近づいてきていた。


「いらっしゃいませェー!ご注文はなんでございましょうか!?服のオーダーでしょうかそれともご購入でしょうか!?」


近づいてきた巨大な鎚を持つ少女はこれでもかというくらいの大声で私へと話しかけてくる。

そんな異常な状況に私は固まってしまい何も言えなくなり戸惑っているとスパナを持つ少女がこちらへと近づき耳元で話しかけてきた。


「姉がすみません。『カイゾウ・カイヘン衣料品店』へようこそ。私はカイヘンと申します。今日はどうしたのでしょうか?」


そうカイヘンと名乗った少女は耳元で耳を傾けないと聞こえないぐらいの音量で話しかけてきた。

…っていうことは前にいるこの鎚を持った少女がカイゾウというわけか。


「え、えっと…こちらで預けた服を…取りに」


そう言うとカイヘンと名乗った少女は「こちらへ」と耳元で呟いた後トコトコと店の奥へと歩き出した。

私とカイゾウはそれを追うようにして店の奥へと足を進めた。

道中でカイゾウは大声でカイヘンに「お客様は何ようだ!?」と叫んでいるがカイヘンは無視するかのようにそのまま足を止めずに歩いていく。

まぁ口元が動いているからしゃべってはいるのだろうけど聞こえないんだろうなぁ。


そうして店の見えていた奥の扉を開け地下へと続く階段を降りカイヘンは立ち止まった。

そこには上にあった展示物のように飾られた服よりも丁寧に飾られた服の数々がありまたびっくりしてそのまま私が立ち止まっているとカイゾウはこちらを見て少し考えた後こう言い放った。


「ようこそ『カイゾウ・カイヘン衣料品店』へ!お客の名前はなんだいッ!?」

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