第82話

「ようこそ『カイゾウ・カイヘン衣料品店』へ!お客の名前はなんだいッ!?」


そう大声でカイゾウが言い私はその大声に今度は固まらずに「レナ…です」と言うとカイゾウは大股で歩き出した。

私はそれについていきそうしてあるものが展示してある場所で立ち止まった。

目の前にあるのは黒色をベースとしてそこに白色の生地が混ぜられているツートン柄になっているパーカーと目に見覚えがあるカーゴパンツが展示されていた。


「すまんなレナ。上着の方はボロボロ過ぎてな…こちらでいい感じに改造して直させてもらったぜ」


そう言いカイゾウは展示してある服を取り出し私へと手渡してきたのでそれを受け取った。

すると後ろからいつの間にかいたカイヘンが私の目の前に来て伝票を渡してきた。

書いてある金額は金貨15枚と銀貨5枚。


まあまあ手痛い出費だがこの服は結構気に入っていたし私はしょうがないと決めつけ自分の腰につけている小さな包みに手を入れ虚空庫をバレないよう発動しそこから今回の代金を払った。

払い終わるとカイヘンは伝票と代金を持って奥の方へと駆け足で行ってしまいまたカイゾウと私の二人になってしまった。

そんな二人の中で私がこれ以上ここに居続ける理由がないと思いこの店から出ようとした時カイゾウは独り言のように…いや結構でかい声で呟いた。


「あまりにボロボロだったから普通の修復ができない私たち二人はよ…お前の服を改造・改変しちまった。だからこんなにも高い値段になっちまったんだ」


まぁなんとなくは予想はできてはいた。

明らかにパーカーは白い生地が編まれていたりしているし。


「私達の持つこのアーティファクト『モディファイ・ツインズ・ツール』さえ無ければ普通の修復もできたんだが…あぁそうだお前のその服につけた効果なんだが」


そういうとカイゾウは私の持っている服を指差し改造・改変した効果を言い出した。

まずパーカーには魔鉄鋼というファンタジーな鉱石を糸状にしたものを編み込み修復したことで硬質化し斬ったり突くことにより破れなくなったらしい。

そしてカーゴパンツの方はというと修復の際に魔物の糸を使用したことで焼けることはなくなり破れなくなったことで頑丈になったらしい。

まぁパーカーよりかは頑丈ではないらしいが。

…あと聞いたところによると普通の修復を行うとアーティファクト効果で木っ端微塵になるらしい。


「それとなぁ…」


どんな感じに私がボケーっとカイゾウの口から出る会話に相槌を打ちながら聞いているとこの部屋の奥から走ってくる音と気配を感じそちら方を見ると…カイヘンが無表情で突撃してきていた。

するとカイヘンはまるでロケットのようにカイゾウの顎目掛けて見事なアッパーを繰り出し胸ぐらを掴むと普通に話す音量で「何喋ってんの?」と言って無表情でカイゾウの顔面を殴り始めた。

…あれは怒ってるという解釈でいいんだろうか?


そんな光景が1分ほど続きこの後も続きそうだったので私はここで退散することにした。

そう思えば私の行動は早く未だ殴られ続けるカイゾウから目を背け出口の方へと歩き出した。

私が出口へと歩いてる時後ろからカイゾウの声が聞こえたと思うが多分空耳だと思うので私は気にせずに出口に行きそーっと扉を閉じその部屋を出てこの店を後にした。


「ふぅ…ダンジョンでも行こうかなぁ?」


外はまだ明るく快晴であり風が爽やかである。

こんな時こそダンジョンに行くべきだと私は思い歩き出した。


…少女移動中…


ということでって参りましたのは昨日も来た『星屑ダンジョン』。

何故星屑という名前が付いているのかは良くわからないが今日はこのダンジョンである実験を行いに来た。


「さてと…やりますかね」


そう呟き周りに誰もいないことを確認して地面に二つの魔法陣を同時に発動する。

一つは輝きもう一つの魔法陣は黒く色づきながらそれは発動を開始していく。


「魔法陣展開!『最下級悪魔召喚』&『最下級天使召喚』!」


そう言うと魔法陣の光が一層輝き出し一瞬の閃光と共に二つの姿が出てくる。

一つは小さな人型で手が異様に長い悪魔と言われる存在。

そしてもう一つはこれまた小さな人型で手に弓を持つ見た感じでは人間にしか見えない子供である天使という存在が目の前まで歩いてきた。


「おぃテメェ対価を寄越せェッ!それに応じてやるからヨォ…とりあえず魂くれや」

「…なんで呼んだの?」


まぁこれが最下級の悪魔と天使である。

悪魔は対価がデカすぎるし天使は態度がいちいちめんどくさそうに行動する。


「んじゃあ…アレ…悪魔倒してきて」


そう言い悪魔の方を見てから私は魔石を悪魔に渡してから魔物を指差した。

その魔物というのはこのダンジョンの上層ならどこでも湧く魔物であるゴブリン。

すると悪魔はこちらをじーっと見て手を器状にして差し出せと言わんばかりに向けてくるが私がこれ以上何もしないことを悟ると舌打ちをしゴブリンの方へと駆け出し頭部を掴みそのまま長い腕を使い壁に叩きつけ戻ってきた。


「んじゃ次天使…倒してきて」


そう言い天使に銅貨を渡しまた近くにいるゴブリンを指差す。

まぁ当然の如く天使は舌打ちし弓の弦を弾きゴブリンの脳天を撃ち抜くとまたそっぽ向いてしまった。

このことからわかるんだが悪魔と天使は強いっちゃ強いんだがどちらも癖があってやりづらい。


「それじゃあ次は階層主でもチャレンジしてみるかね」


私はそう呟きダンジョンを一人と天使と悪魔を引き連れて歩き出した。

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