孤児のダンジョン生活
第70話
…寒い…だが、暖かい。
陽の光が体を包むかのように当たっているようで暖かい。
だが風が当たり寒い?
というかここはどこなのだろうか…。
「ふぁぁ…」
俺は目を覚ました。
周りにあるのは岩とか川とかがある。
…俺が最後にいた場所ってどこだったっけか?
自分の身体を見ると切り傷や打撲、服は修復ができないほどボロボロになってしまっている。
まぁ服に関しては大事な部分が隠れてはいるからまだ使えそうだが腰につけているポーチは半分ぐらい破れてなくなっている。
「はぁ…マジかよ。…このポーチは結構気に入っていたんだが…」
そうして俺は他になくなった物を探し顔を右手で触り気付いた。
俺のいつもかぶっていた仮面がないということだ。
かなりの時間俺の生活でつけていたからほぼ俺の半身のようなものとなっていた為こうやってなくなったとなるとかなり凹む。
「というかここどこ?」
周りをもう一度見ても見覚えのない地形だ。
どうやら見る限りは森のようだが奥の方を見る限りそこそこ深い場所に今いるみたいだ。
にしても川の流れが激しい。
土色に染まっていて流木も流れている。
少なくともこの水を飲みたいとは思わない。
「それはとにかく今は移動しようか。できれば町や村が近くにあればこの傷を癒せるんだが…」
スキル回生はできれば使いたくないしこの傷で雨が降られたら傷にウイルスが入るし風邪も引いてしまうだろう。
こういう時に魔術を使って傷とか癒すことができればいいんだが…傷を癒す為のMPもまだ回復していないしそもそも癒すためには大量のMPがなくちゃダメだから回復はほぼ不可能に近い。
…近くに魔物の気配はないな。
気をつけて移動しなければいけないな。
まだ死ぬわけにはいかない。
…少女移動中…
「ふぅようやく整備された道が見えてきたな」
どうやら今日の俺は運がいいらしい。
魔物や魔獣にも会うことがなかったし運がいい。
普通だったらこういう森にはゴブリンやウルフが群れをなして暮らしていて森に入る人間などの生物を襲ってくるんだが…。
にしてもここら辺の魔素は普通ではない気がする。
普通の魔素というのは空気中にあり場所によっては濃かったり薄かったりする。
そして俺はなんとなくソレを察知することができるんだが…ここの魔素の濃度は今まで見てきた中でも格段に薄い。
そもそも魔素というのがないんじゃないかというぐらい薄い。
そのせいでMPの回復がうまくできない…つまり身体の治療することができない。
そして俺はようやく整備された道に出ることができた。
周りを見ると草原。
遠くには明らかに人工物である石のような建造物が見えた。
目指すんだったら建造物のある方向だろうか。
そうして俺はゆっくりとその方向へと歩き出した。
あの時使ったメタモルフォーゼのせいで左腕の骨はボキボキで動かすことはできない。
足も捻挫や打撲のせいでうまく動かせない。
これじゃいつになったらあんな遠くの場所に着くのかわからないな…。
そんな事を考えつつ整備された道を歩く。
そうする事数時間が経過した。
まだまだ建造物は遠いところにある。
俺はため息を吐く。
お腹が空いたがMPがすっからかんで虚空庫を開けるためのMPが無いため飽食の胃袋を取ることができない。
だがこうしてただ生きているだけでも腹は減るし暴食のスキルのおかげで更に腹が減る。
「うぅ腹が減ったぁ…」
子供の時に聞いたお腹と背中がくっつくというのが現実に起きそうなくらいにはお腹が減った。
だけど動かなくてはあの建造物がある場所には辿り着くことができないため俺は歩く。
目の前はグワングワンと揺れ寒気がする。
そんな中後ろから声が聞こえた。
どうやら男の声だがどんな奴が声をかけているのだろうかと思い後ろを向こうとする。
だが俺の身体はもう限界を超えていたのだろう。
後ろを向こうとしてバランスを崩し横にぶっ倒れた。
俺が倒れたと同時に男のような大きな声が聞こえる。
…もう痛みすら俺は感じなくなっていた。
地面から振動のようなもの俺に伝わる。
どうやら男は馬車に乗っていたらしくそこから降りたらしい。
音的にはガシャガシャいっているから鎧のような物を着ているということは盗賊ではなく冒険者なのだろうか?
「…ぃ…ょぅ…か?」
あ?
この男はなんといっているんだろうか?
…いや違うな俺の耳がもうダメになっているんだろうな。
俺の身体は軽い熱中症のようなものになっているし息も苦しい。
傷からウイルスでも入ってしまったんだろうか一応警戒はしていたんだが…。
目もぼやけさっきより視界が定まらない。
そうして突然の浮遊感に襲われる。
目の前には男のような顔がぼやけて見えることから俺は抱えられているらしい。
俺は抱えられようやく人が近くにいることから助かると脳が理解したようで意識が暗闇の中に落ちていった。
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