第43話
騎士の姿をした怪物は王国から神の血を盗み帝国へと帰ってきた。
ブリチェスター帝国は王国から数百キロメートルも離れており帝国内はこの時代には似合わないビルがそびえ立っている。
近代ではあるが老朽化がひどく、崩れているものや壊れかけている建物も多くある。
そして歩いている人々は笑みを浮かべておりどこか狂気を感じる。
その中を騎士達は帝国の奥にある城へ向かっていく。
城へ着くと隊長のみが荷物を持ち部下と別れて地下への道を歩いていく。
そこは薄暗くカプセルのような物が数多く並べられておりその中には黒いドロドロとした何かが入っている。
しばらく歩き地下室の深い場所へ移動すると白色の物体を遠くに見えて来た。
白色の物体、それこそが今回依頼して王国まで足を運ばせた張本人である博士と周りから呼ばれている人物(?)だ。
騎士は近づきその博士に声をかけた。
「オい、博士、頼まれたヤツ持ってキタゾ」
そうするとその白色の物体はこちらへ身体を向けるように移動しこちらを茎のように伸びた3本の目で見つめてきた。
見た目はナメクジのような形をしており背中から金属性の棘が生えており伸びたり縮んだりまるで手のような形になり作業などをしている。
「おぉようやくか遅かったな?それで…その持っている袋はなんだ?ワタシは神の血だけを今回頼んだはずだが」
そうして騎士はこの麻の袋の中に入っている物についての説明を始めた。
類稀な潜在能力があり自分と戦闘してかなり耐えていたということ、とてもよい素材になりそうなこと。
話すにつれナメクジの目が伸び騎士の持つ袋の中へ1つの目が入っていく。
「ふむふむ、ほぉ?聞いた話ではなかなか良さそうじゃないかワタシの作ったお前、試験体No.042『隊長』の通常状態と互角以上の戦いをするとは…」
そうナメクジは言い騎士の持つ袋を背中から生えている金属の棘で器用に持ち上げ更に奥の地下へと持っていく。
ナメクジは騎士を帰らせ自分専用の研究室へと移動する。
「ふふふ、ようやくあのバカな女神のいた国からこの血を手に入れた…ハハハハ。全くどいつもこいつもバカばっかだねぇこうして利用され続けるなんて。これでようやくあの方の復活を果たすことができそうですねぇ」
ナメクジは笑う。
長年追い求めてきた物を手に入れ上機嫌に笑いふとあの試験体が持ってきた物が入っている袋を見る。
あの試験体は今まで作ってきた中でも最高傑作の作品だ。
そんなアイツの通常状態とはいえ互角以上の戦いをする奴がいるとは思っていなかった。
何せ通常状態でもあの国の騎士50人分ぐらいの戦闘能力を持っている。
ナメクジは袋から首の折れた物を持ち上げる。
その首の折れた物をまじまじと見つめ見通す。
筋肉はあまり無さそうではあるが魔力はこの歳では神童と言えるだろう。
とても扱いづらいがとてもなじみそうだ。
「…原型は留めたままで…そうだコレに血の適合をさせようじゃないか。ふふふふコレが成功すればようやく成功体が完成する!そうと決まれば今すぐ開始しようではないか…」
こうして首の折れた物の改造が始まった。
原型は留め、いらないスキルの複合、首の修正、まさに最高傑作である。
今まで作ってきたゾンビや甲冑共、失敗作とは違う異様な雰囲気がある作品ができた。
ナメクジは喜んだ。
かつてないほど研究が成功しこれまでの研究してきたことが全て詰まった物を作り出せたことに喜んだ。
我々に従う為の枷も専用の物、専用の武器も発注し最高を詰め込んだ。
何ヶ月もその作業に没頭し続けようやく完成した。
「ふふふ…ようやくだ。ようやく完成した」
目の前にはカプセルに入れられた1人の少女。
今までの成果を集合させて作り出した。
人間ではあるが本気を出せば人間の範疇を飛び抜けた性質を持つ傑作の一品だ。
それに神の血『イコル』とも適合ができておりきっとあのお方も気にいる筈だろう。
「あぁそうと決まれば今すぐ行動しなければあのお方の元へ!ヒヒヒヒ…」
そう言いナメクジはカプセルを持ち上げ城を抜け城より奥にある森の奥の湖に移動する。
湖の中央には小さな遺跡がありナメクジはまるで跪つくように身体を低くし言葉を発した。
「あぁ偉大なる我が神よ、我らは遂に贄を作り出しました。この者を贄としこの世を治めたまえ」
そう言うと遺跡から声が聞こえてくる。
その声は無気力そうでどこかめんどくさそうでここからでも聞こえるくらい腹の音が聞こえてくる。
遺跡の中は真っ暗な闇で覆われておりそこから肌色の太った手が出てきて偉大なる神は言葉を発した。
『んぅ?あぁグラーキか。また失敗作でも作ったのか?』
「いいえ違います!今回は成功作です!何せあの忌々しい女神の血を使った作品なのですから」
『だけどそいつうまそうじゃないな。しかも女だし』
そう言うと偉大な神は腕を引っ込めて遺跡の中へ入ってしまった。
ナメクジは慌てて声をかけもともと持ってきたいた贄共を偉大な神へと差し上げた。
「偉大なる我が神、イゴーロナク様!いつもの贄もお持ち致しましたのでもう少しお待ちを!」
そうするとイゴーロナクはもう一度手を外に出し手を贄の元へと伸ばした。
その手は中心から口のような物が発生して贄と呼ばれた物を平らげるとイゴーロナクは言葉を発した。
『今回で最後だよ?グラーキ…我はまた眠る。まぁこの少女には我の力の一部を授けよう。それで十分だろ?』
「はい!十分でございます!」
『ふぁぁぁ…腹減ったなぁ。んじゃ寝るわぁ…』
そう言いイゴーロナクは遺跡へと帰っていった。
そしてグラーキも急いで城へ戻り研究を始める。
貰い受けた力を活用する為、この少女の力を複製し誰にも負けない軍を作る為研究を始める。
「成功させる…全てを淘汰する存在を作り出す為に」
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