第24話

ふー、ようやく一息入れることができるな。

とにかくこれからどうしようかな。

あいつらがここまで来るなんてことないと思うがこの世界は異世界だ。

もしかしたら追跡に特化したスキルがあるかもしれねぇ。

一応いつでもこの家を捨てられる用意ぐらいはしておこうか。


「ここが君の家かい?」


「あ、うん…とりあえず少ししたらすぐ移動するから準備しておけです」


そう俺は貴族服の奴に言った。

…家から持っていきたい物は5冊の本と普段使っている布よりかは新しい白い布を2枚、そして何かあったようの草団子…というか薬草団子。

これを手で持っていくとなると…まぁ無理だな。

それじゃ実験がまだ終わっていない魔術で持っていくとしますかね。


まだ実験が終わっていない魔術、それは本のどれにも書いてない完全オリジナル…いやもしかしたら他の人もやったかもしれないが。

ラノベの『アイテムボックス』を真似して実験的に作ろうとしている魔術。

その名も『虚空庫』という。

コレは魔術を弄って作り出した空間に物を置くことができる魔術だ。

なお、生物は入れることができるがただの空間なので時間は止まらない。

ただ俺の魔力で作り出した空間の中に何かを入れることができるという魔術だ。

入る量はどうやらMPに比例するようでkg単位で入ることは確認している。


だがこの魔術はあくまで実験的に作り出した空間だ。

実験はかなりやったから色々なものが入っている。

例えば魔石や木の枝、布や綺麗だったから拾った石…まぁ色々なものが入っているというわけだ。


「魔法陣展開…『虚空庫』」


一応だが魔法陣の大きさで入れれる幅が決まる。

つまり大きい物を入れるんだったらそれなりの大きさにしなきゃいけないというわけだ。

あと、前にやったことだが魔術の『ファイヤーボール』を中に入れようとすると魔法陣がぶっ壊れて中身が外にぶち撒かれることも確認している。

コレにより魔法を『虚空庫』に入れて打ち返すなんてことはできないというわけだ。


「さてとさっさと入れますかねぇ」


「…なにそれ?」


「ッ!」


急に話話しかけられてつい背筋がピンッとしてしまった。

そうだコイツがいるんだった。

コイツに説明するのか?

…いやいやなんとなく誤魔化すか。


「んーまぁコレは『虚空庫』っていうま、魔術だ…です」


「へぇ!すごいんだね君!僕にはできないよ」


つい喋ってしまった。

口で言おうとすることと思考がごっちゃごっちゃだよ。

こんなに会話とは難しかっただろうか?

とにかく物を入れてここから出ないと。

ここはなんといっても出口がひとつしかない、そのためここに入ってきやがったら一貫の終わり。

袋叩きにされてしまう。


そうこうしていると外からあいつらの声が聞こえて来る。

とてつもなくうるさい怒声だ。

「あいつどこにいきやがったぁ!」だとか「追跡スキルちゃんと機能してんだろうなぁ!」とかが聞こえる。

どうやらこの世界には追跡スキルがあるらしい。


現状を考えようか。

まずここは周りには壁、外には追跡持ちの野郎共、そしてこの貴族服を守りながら逃げなくてはならない。

どう考えたって絶望的だ。

俺だけ逃げるとしてもコイツらを相手するのは1対1の戦闘でしか勝ち筋が見えない。


考えているとドアが蹴り破られる。

そこには大きな巨体を持つ男が身長程の大きな斧を持っていた。


「よぉこんなとこにいたのか。んじゃあ殺してもいいと言われているからなテメェ死ねェ!」


そう言いながら大きな斧を屋根を突き破りながら振り落としていく。

俺は咄嗟に貴族服の奴を掴み唯一の出口を作り出すため一番木が腐っている所を蹴り破り外へ出る。


「ふんっ!ここから逃げるです!」


「う、うむ!これからどうするきだ!?」


この状況を打開する策を俺は考える、どうやったらあいつらから逃げれるかを考える。

周りは壁、後ろも壁、まさに八方塞がりだ。

身体強化で逃げてもここから大通りに着くにはあの野郎共に見つかって狙撃やらなんやらで終わるのが関の山だろう。

一番いい方法はコイツを敵の前に突き出して俺だけ逃げる方法。

しかし俺はそれを実行しようとは思わない。

どうしても昔の、前世の俺がそれを拒否して来る。

それだったらどうするか…それは簡単だ。


「魔法陣展開…『ファイヤーボール』」


まずは魔法陣を3つ展開して1つ目に発動した『ファイヤーボール』を上に向かって発射する。

発射した『ファイヤーボール』はただの『ファイヤーボール』ではなく攻撃性はないが音と明るさに特化したいわゆる花火的なやつだ。


「続いて『サンダーウェア』アンド『プロテクト』」


腰にぶら下げたナイフを持ち電気を纏わせ、貴族服に『プロテクト』で防御を上昇させる。

考えた結果…俺はコイツを今頃探しているであろう役に立たない騎士共を待つことにした。


「それまでは…持ち堪えるしかないか。いけるな?貴族服?」


「…うん、やろう」


俺はナイフを左手に持ち構える。

今目に映るのは野蛮で外道そうな顔をしながらゆっくりとこちらへと近づいて来る野郎共。

強者は弱者を倒す時は何故か油断をする。

そこを狙おう。


殺すことに躊躇はしない。

生きるため…いや生き残るために舐め腐った野郎共を殺してやろうではないか。


その時、俺の中で何かが『カチッ』という音がした。

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