第23話
暗い夜道を一人で歩く。
ここは現代ではないため電気を使った街頭というのはないが代わりに灯籠のような形をしたほのかに光るものが置かれている。
どうやら魔石を使って光っているらしく隙間から小さい石が光り輝いているのが見える。
こういう雰囲気はかなり好きだ。
どことなく和風な感じをかもしだしていていてなんとなく日本に帰ってきた感じがする。
まぁ実際にはここは日本ではないのだがこういうのは雰囲気が似ていれば帰ってきた感じがしていい気分になる。
こんなにゆっくりして歩くのはいつぶりだろうか?
転生してから毎日忙しかったからこういう機会はあまりなかったなぁと1人しみじみ思ってしまう。
そんな風にゆっくり歩いてスラムの入り口に入ろうとした時だった。
俺の耳にとある怒りの声が聞こえた。
「あっちに行ったぞ!追えぇー!」という大声はスラムの中から聞こえて来る。
どうやらめんどくさいことがスラムの方で起こっているようだ。
「…めんどくせぇ。気配遮断:LvMaxを使って帰るか」
コレであいつらに見つかることはないだろう。
気配を遮断してて見つかるとしたらさっき『スキル屋』で見た『看破』とかいう明らかにこっちを把握してきそうなスキルを使われない限り俺が見つかることはないだろう。
さてとさっさと家に帰りますかねぇ。
俺はスラムに入りできるだけ大通りを通らないように気をつけて家への帰り道についた。
「アイツッ!ドコいったぁあああ!」
…うるせぇ。
スラム全体はまさに喧騒に満ちていた。
どうやらここら一帯を支配下に置いているギャング達が何かを探しているみたいだ。
こんなに奴らを怒らせるなんて何をやったんだか…。
全くそこら辺の木の箱とかがぶっ壊れていし石でできた壁が凹むなんて何したらこんなになるんだか。
「見つけたゾォォ!追えぇぇ!今度という今度は絶対に逃すなぁぁ!」
…あれ?
なんかあいつらこっちに向かってきてないか?
そしてその先頭には高そうな服を着た明らかに貴族っぽいやつがこっちに向かって走ってくる。
「あっ、コレは嫌な予感がする…」
俺はすぐさま家の方向に走る。
…アイツ絶対俺のこと見えているな。
なんとなく違和感を感じる。
そのなんとなくを説明しろと言われたらなんとなくしかいえないがなんとなく違和感を感じる。
…もしかしてアイツ『看破』を持っているのか?
まさか俺の言ったことがフラグになったか?
俺は後ろを向く…そこには何故か俺の背後まで近づいてきた貴族服の奴がいた。
「ヒュッ!?」
「やぁこんばんは。ちょっと頼みたいことがあるのですが今ちょっと追われていましてどうにか逃げられる方法を教えて欲しいのですが教えてもらえませんでしょうか?」
…は?
マジびびったんですけど?
なんなのコイツなんで背後にいつの間にかいるの?
何、この世界はホラーゲームの世界だったのかそうだったのかそれならしょうがない…じゃないんだよ!
って俺は何を考えているんだ…とりま落ち着け。
そう落ち着くためには深呼吸をしなきゃな吸って吸って深く吐くー吸って吸って深く吐くーってこれちげーやつだわ。
まぁいい落ち着いたしえーと今コイツはなんで言ったんだ?
んーと「逃げられる方法を教えて欲しい」だったか?
…んなもん俺が知りたいわ。
と、とりあえずコイツ貴族っぽいし不敬罪で死ぬとか洒落になんねぇから言葉使いはちゃんとするべきだな。
「す,すいませんがしらねぇです?」
おっとぉ!?
緊張のあまり変な言い方になってしまった…不敬罪ならないよなぁ?
「そうですか…すみませんが案内なんてできますでしょうか?」
「は、はい!?」
「はい、お願いしますね」
はいまたミスっちまったぁ!
驚いてなんか「はい」とか言っちまったよ。
ヤベェよヤベェよどうするよコレ。
逃げるってどこに?隠れるってどこに?案内するってどこに案内すればいいの?
考えろ、考えろ考えろ考えろ考えろ…。
この貴族だったら身体強化で持ち上げて気配遮断をかけて逃げらればどうにかなるか?
思い立ったが吉日思った事はやるしかねぇよなぁ?
「す,すいません失礼しますです」
「え?あ、うん?」
「で、では失礼しておいしょっと…身体強化!からの気配遮断!です」
俺は思いっきり足に力を入れ地面を蹴り空中へと飛ぶ。
そのまま屋根に乗り屋根から屋根へと飛び込んでいく。
目的地はもちろん俺の家だ。
あそこなら誰にも見つかることはないだろう。
「よしついたぁ…です」
「おっ?ついたのかい?それにしてもすごい跳躍だったね…君もしかして暗殺者かなにかかい?」
「い、いえ違うのです…と、とにかくここなら見つかることはないと思うです」
そう言い俺は貴族服の奴を家に入れるのだった。
…つーかなんでこんなことに俺は巻き込まれているのだろうか?
しかもなんか「です」が語尾みたいになっちまってるし…まぁ不敬罪とかにならないためにこのままでいくか。
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