第17話

さて今の状況はまぁ無理をすれば逃げれなくもないな。

幸いというべきか奴らの移動速度はとても遅いから魔法陣を幾つでも展開が可能だ。

だがなんでこんなに多いんだ?

目に見える範囲でも5体以上はいるぞ?


「ふぅ~っし!とにかくやってみるか!」


俺は出来るだけ早く魔法陣を展開する。

この際だから多重魔術で一気に終わらせようと思う。


「魔法陣展開!からの多重『エアーカッター』発射!」


ともかくからは、量で押し切るようにするため『エアーカッター』を毎秒発射していく。

放たれた魔術は図体のでかいスライムに当たりまるでゼリーのように真っ二つになりながら地面へと染み込んでいく。

すごい勢いでMPが無くなっていくが慢心してやられるよりかは幾分マシだろう。


それから数分が経ち目に見える範囲にいるスライムは全部倒したようだ。

消費したMPは98も消費してしまった。

残りのMPが心許ないがあとはスライムの戦利品を回収して帰るだけだしあまり問題はないだろう。


そう気を少し緩めた時だった。

俺のすぐ横の地面に大きな水玉が当たり地面から蒸気が発した。

『ジュジュク』という何かが溶けるような音をしながら土が分解されていく。


「ッ!」


俺は慌ててその場から後ろに下がり前方を向いた。

そこにはさっき倒していたスライム共よりも大きく黒というよりかは色々な色が混ざったかのようなスライムがいた。

そのスライムは通った後が溶けていき腐敗臭が漂っている。

俺は思わず顔をしかめた。


にしても今日はついていないようだ。

俺の状態はさっきの戦闘とそれより前に丸いスライムとの戦闘によりMPが心許ない。


「コレは絶体絶命っていう感じかな?ッと!」


黒っぽい水玉が飛んできたので俺はもう一度後ろに下がる。

このまま逃げるという手もあるがどうしたものか。


「いやここは欲張らずに逃げるとしますか」


戦略的退却をしようと思う。

ここで死んだら元も子もないし何よりあんなのに当たって溶かされて死ぬなんて冗談じゃない。

そんな死に方はしたく無いから俺は逃げさせてもらうぜ?

ラノベの主人公だったらここは恐れず立ち向かうんだろうが俺は主人公じゃねぇからな。


「ではっ!さらば!」


俺は『身体強化』を足にかけて来た道を木を駆使して駆けていく。

すぐ後ろでは溶けた音がするが気にせずに駆けていく。

もしそっちを向いたら恐怖で動けなくなるかもしれない。


ようやく草原が見えてきたか。

あれから数分移動しているがまだ後ろで溶ける音がする。

もしかして付いて来てんのか?

そして草原へと辿り着き地を蹴って雑草が生い茂る所へと飛び込む。


「まさかあいつここまでくるか」


俺の目にはスライムが見えた。

こいつは特別速度が速い。

俺が森にいた時のあのゆっくりな速度はもしかして追い詰めようとしていたのだろうか?

その標的が逃げた瞬間、触手をのぼして一気に追いかけて来た。


「ハ、ハ、ハ」


思わず乾いた笑いが出てくる。

まさかこんな小さな標的ごときの為にこんなに必死になるなるとはな。


あぁあいつの姿はマジで怖い。

なんなの、あれ?

大きな巨体に身体から生える数十にも及ぶ触手、身体にまるで御伽話やラノベで表現されるような大きな口のようなもの。

思わずこの絶望的な状況に舌打ちをしたくなる。


「ここで死ぬわけにはいかねぇ…」


こんな所でに死にたく無い。

そんな思いだけが頭の中を支配するがその中には恐怖という感情が無い。

コレが『畏怖耐性:Lv8』の効果だろうか?

なかなか俺も人間離れしている…いやそもそも魔術が使える時点で俺の知る人間を辞めているようなものか。


MPは逃げた時に少しは自然回復したがそれでも『身体強化』による消費で相殺されている。

魔術を放てる数はかなり限られでいる。


はぁマジでどうしようか。

はっきり言って勝てる見込みは全くと言っていいほどない。

つーかこうして考えている時にもあのスライムはこちらの距離を縮めている。

何かあいつをどうにか出来る方法を考えないと。


「…どうする?一か八かの選択で特攻でもするか?」


数秒考え結論を出す。

行動しなければできることもできない。

ここは地形破壊をしてでもここで倒さなければ…いや討伐しなければならない。

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