第22話
もうすぐ辿り着く。
君たちの知りたかった真実に。
ほら。
真実は目の前だ。
* * *
ゆっくりとその重い瞼を開く。彼女が今いる世界は暗い暗い闇の中。
ぽたぽたと頭上から滴る水音に視線を向ければ、そこにあったのは『竜』の口だった。
彼女は一瞬目を見開いたが、不思議と恐怖を感じることはなかった。むしろ、安心感すらあったといえる。
水音の正体を見つめて、彼女は何を思ったのかその『竜』の口元にそっと両手を優しく添える。まるで『竜』に寄り添うようにして。
……泣いているんだね。
彼女が『竜』に問うと『竜』は「ヴウゥ……」と返事をした。悲しみの色を帯びた鳴き声だった。
どうして悲しいの?
何が悲しいの?
『竜』は、唸るのみで答えてはくれなかった。それが答えだった。
……見つけてしまったんだね。彼の、音を。
それは彼女の目の前で光る淡く温かい光球。生かすための手段の一つであった『それ』は、弱々しく今にも消えてしまいそうだった。
彼との約束を守ると誓ったのに、守りきることができなかったという後悔。それが『竜』の悲しみの理由だと彼女は思った。
光が消えてしまわないように優しく触れる。
温かい光に包まれて、キュウの意識は八年前へと誘われていく。
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