8話 市場の雑踏で
結局、コイツについて街を出ることにした。
市場で旅に必要な物を買い揃える時、やたらとオレに何がどれだけ必要か聞いてきた。
「自分が必要な物くらい分かんだろうが」
「私一人なら、特に必要ないんだけどね。ゴーヴァンは色々と必要だろう? 水であれ、食べるものであれ、ね」
変なことを言うから、大して離れてない場所なのかと思えば「私一人なら二日もかからないけど、君の足だとわからないさね」だとか、余計わからねえこと言いやがる。
「お嬢ちゃんはお迎えでも来てくれるのか? 勝手に運んでくれるんなら、何も考えくてもいいわな」
「いや、送り迎えはやってくれなくてね。今回は金銭関係と、ここでの滞在先の面倒だけを見て貰う約束だからね」
「金持ってることにゃ変わんねえだろうが」
自分が背負った荷物をみて、そう思う。
保存のきく食い物を買う時に、店主から一番近い宿場町までどの程度の距離かは確認したし、昔あの人が狩りに連れて行ってくれた時に持っていた荷物を思い出しながら買った荷物だ。コイツの分に関しては、本人がいらないって言うから買ってねえが、それなりの荷物ではある。
しかし本当に金だけは持ってるんだな、コイツ。
故郷にいた頃は、金なんてほとんど目にすることはなかったが、コイツがなにか買うたびに渡す金を見て、どの店でも驚いた顔をしてたんだから払いすぎだったんだろう。きっと。
これだけ身の回りの装備揃えられんなら、コイツおいて故郷を目指すのも有りっちゃ有りか。あの人のことを伝えたい人もいるしな。
そうだ、まだ買い忘れてた物があったな。
「オイ、後……あれ、どこ行った」
市場の雑踏ではぐれたのか、女の姿が見当たらなくなっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます