9話 市場の裏路地で

 さて、どうしたものかね。

 薄暗い路地裏、三人の男に囲まれどうしたものかと考える。

「オイ、持ってる金さっさと出しな!」

「痛い思いはしたかねえだろ」

 人にナイフまで突きつけて、ただの金目当てか。違う理由なんじゃないかと思って、一瞬ゾッとしたじゃないかい。

 さて、どうしたものやら。金がなくても私は困らないが、ゴーヴァンは困るだろうね。

「聞こえてねえのか、このガキ!」

 そんな声を出さずとも気とえているさね。

 三人か。まだ太陽は出ているし、ここは日が当たらないとは言え、どう脅してやったものかね。

 考えてみたら、私をこんなところへ連れ込むより摺った方が早いだろうに。

「すまいけど、渡せるような金は持ってないね」

「何だとコイぐべっ!」

 私の肩を掴んだ男が視界から消えた代わりに、大きな足が目の前にあった。

「こんなところにいやがったのか! 迷子になってんじゃねえぞ、探すのが面倒だったろうが!」

 おや、これは。

「ゴーヴァン、来てくれたのだね」

「テメェがいねえと何も買えねえんだ。さっさと戻んぞ」

「まだ買い物の途中だったからね、そうしようか」

「オイっ、どこに行く気だ!」

 おやおや、全員で刃物なんて持ち出して、危ないね。

 ふむ、一人は蹴られて気でも失ったかな。立ち上がりそうにないね。二人なら……

「ゴーヴァン、どうやら彼らは物盗りみたいでね。どうにか出来ないかい?」

「あ゛ぁ、どうにかだ? 黙らせりゃいいんだろ、ちょっと待ってろ」

 おやおや、ずいぶん怖い顔で睨むね。そう言えば、闘技場でも同じような顔で戦っていたっけね。

「な、なあコイツ闘技場の狂竜じゃないか」

「言われてみりゃ顔の傷見たことが、イヤあれを買う馬鹿がいるわけないだろ」

 もう及び腰になって……任せて大丈夫そうだね。

 その後のゴーヴァンは早かった。

 背を屈めて自分から近い男の懐に飛び込むと、腹に拳を一撃。

 相手が体を折ると間髪入れずに頭を掴み、直ぐ側の壁に叩きつけ……あらら、気絶させてしまったみたいだね。

「ヒィッ!」

 残った一人がナイフを振り上げ突撃しようとするが、それよりも早く得物を持った手を抑えられ、肘に関節と逆方向へ一撃……折れたね、あれは。

 相手の頭を掴んで、今度は膝の一撃。

「なんとも鮮やかなお手並みだね」

「ハッ、こんな奴ら魔獣相手人比べりゃ雑魚だ雑魚。オレ見て腰引いてるようじゃ話にもなりゃしねえ」

 路地に転がった二人を見て、吐き捨てるように言う。

 ん、二人?

「奴隷の分際でっ!」

 いけないね、ゴーヴァンが刺されてしまう。

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