6 リルの元へ
「どうやらそれで正解だって言ってるみたいだぜ」
トーヤがそっと
「来たみたいだな」
アランがそう言う。
「ダル」
「なんだ」
「明日、じいさんたち、リルのところに連れていけるか? それとディレンたちは今どうなってるか分かるか?」
「じいちゃんたちはいつでも動けるように準備してくれてる。船長とハリオさんは、明日は例のトイボアと奥さんの面会とかで、オーサ商会に行くって言ってた気がする」
「なるほどな」
トーヤが少し不愉快そうに笑った。
「やっぱりそうか、そうなるようになってんだよな」
明日、全員集合できるような態勢が整っていそうなことに対して言っているらしい。
「分かった、そんじゃそっちの方よろしく頼む。ミーヤ」
「はい」
「ダルと時間打ち合わせて、アーダも一緒にここに来れるようにしてくれ」
「分かりました」
――明日、とうとう最後の召喚がある――
そのことで説明のつかない空気が流れている。
いよいよ片がつくということに対してか、これであの光の空間に呼ばれることが最後ということに対してか、それとも真実を知ってしまうことへの恐れゆえか。
「ま、まあさ、あれだよな」
何ということもなくベルが口を開いた。こういう時に張り詰めた空気を破る役割を担っているのはいつもベルだ。
「動きたくても動けないってので、トーヤがイライラしてんの見るのももうそろそろどうにかしてくれって思ってたんだよ、ちょうどいい、こんで落ち着く、うん」
「そうだね」
ベルの言葉にシャンタルが少し笑いながら続けた。
「トーヤの発散に揉まれることもなくなるしね」
「それだよ!」
ベルがやれやれという風に両手を広げ、首を左右振り振りしながらため息をつく。
「部屋の中に閉じ込められて俺にあたるの、ほんっと勘弁してくれっての」
「やかましいわ!」
と、トーヤの一発が炸裂したところで一段落した。
「まったくおまえらはよ、こんな時でもそれだから」
アランがベルと同じように首を振り振りしながらため息をつく。
「こっちもなんか気が抜けてホッとすんだよ」
アランの言葉にトーヤがニヤリと笑った。
ダルとミーヤが打ち合わせて時刻は午後の中程ということになる。
「明日の午後はアーダ様がこの部屋の当番なのですが、私はフウ様にお願いして取次役の所用のために部屋に籠もっていることにしていただきます」
「じいちゃんたちはいつでも動けるようにしてくれてるけど、問題はアミと子どもたちだなあ」
最近は忙しくて家にいることが少ないダルが実家に戻ると、すぐに子どもたちが飛んでくるのだ。
「どうやって
最後は全員で子煩悩なダルを微笑ましく笑って見送ることができた。
翌日の午後、まずディレンとハリオがトイボアを連れてオーサ商会に姿を現した。
「今日は息子さんも一緒に来るということで、少しゆっくり話をさせてやりたいんです。それで、いつもより長く部屋をお借りできないでしょうか。大変ご迷惑をかけることになるとは思いますが」
ディレンがそう理由をつけて頼むと、オーサ商会会長アロは快く、午後いっぱい、トイボア一家に客室を1つ貸してくれることになった。
「その間、私がお二人をおもてなしできればいいのですが、あいにく商用で出なくてはなりません。一度船にお戻りになるのもご面倒でしょう。お二人にもゆっくりできる部屋を用意させましょう。家の者に声をかけていただけたら、ご不自由のないようにしておきますよ」
「ありがとうございます、我々にまでお気遣いいただき」
「いやいや、何しろ宮からのお声がけもございます、これはもう公用のようなもの、
そう言いながらもまだまだ何度も話したそうなアロではあるが、何しろ仕事がある。
「では、その続きはアロ殿がお戻りになったらまたゆっくりと」
「さようですな」
「あ、そのお嬢様ですが、今は出産を控えてこちらにお戻りとお聞きしてるのですが、宮のミーヤさんとダルさんからも話を伺っています。一度お見舞いに伺ってもよろしいでしょうか?」
「もちろんもちろん。そういえばダル殿のご家族も今日は見舞いに来てくださるとか。カースという村の村長ご一家で、いやあ、一つの村を統べる長老ご一家というだけに、なかなか好感の持てるご一家です。一度色々お話でもされるとよろしいですな」
「では、ダル殿がいらっしゃったら、その時ご一緒に見舞いに行かせていただきます。その方がお嬢様とも気兼ねなくお話できそうに思います」
「おお、それはよろしいですな。家の者にダル殿がいらっしゃったらご案内するように言っておきましょう」
「ありがとうございます」
アロは自分がダル一家とアルロス号船長を引き合わせることがうれしいようで、そう言いながら出かけていった。
「さて、じゃあ俺達はダルさんが来るまでゆっくり待たせてもらうか」
ディレンとハリオも案内された部屋で座ってその時を待つ。
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