第2話

―——ラインのラボ―—— 


「ぐちゃぐちゃでゴメン、適当に座っててよ。」


私を解放した森から街へと抜ける道のほぼ中央に、住めるのか疑わしい家があった。

―——失礼な事を考えてしまった。どうやらそこがラインの住処らしい。

中の乱雑さを覚悟して中へと進む。

…と、驚く光景が広がっていた。

成る程、これだけ進んだラボだ、フェイクも必要という訳だろう。

外観からは想像も出来ないほど、実験器具はハイテクだ。

促されるまま、机から少し離れた場所に腰を降ろした。


『これは全部、君のもの?』


会話は好きな方ではない。

でも、この状況での請宿は気が気でない。

それでやっと考えついた問い掛けに、ガチャガチャと機器を持ったラインは驚いて視線を向けた。


「あはは、そうだと嬉しいんだけど。」


音を立ててガラスの容器を持ってきたラインは少し困った表情を浮かべた。


「《まだ》、俺のじゃないんだ。」


何か意味を含んだ言葉に問い掛けようとするが、ラインが取り出した注射器に驚いてビク、と身体を強張らせる。


『何、何をする気なの?ライン?』


嫌な予感とは、正にこの事だと思った。

先程までの無邪気な表情は消え、好奇心にまみれた科学者の顔をしていた。


「大丈夫、痛いのは一瞬だよ。僕はカノエの、《魔女の血》に興味がある。」




―——ああ、ついにこの時が来てしまったのか―——



「カノエに、安らかな死を見せてあげるよ。」





―————ブツン―———


正常な精神が、切れる音を聞いて、意識を失った。





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