第26話 地図
俺は魔物達の集落に再び舞い戻って来た。当然、誰も俺の事など分からないし、俺も知らん。
何故戻ったのか。それはジョセ翁からゴブリン供を好きに使えと言われたからだ。
各エリアの魔石を回収する為の役割として、探索や戦闘、警戒、運搬など仕事は色々あるので助かる。
始めてなので、適当に10人位を蹴り付いて来いと言う。
俺が新顔で、ゴブリンマジシャンなので、気の抜けたポカンとした表情ながらもダラダラついて来た。
指示を聞くなら問題は無いので、先頭を俺がジャングルまで歩く。
俺は立ち止まり、地図を広げた。
この階層はゴブリン城を中心に出来上がっている。
ゴブリン城は崖に囲まれ、特別な方法でしか入れないエリアになっている。その出口から先に進むと、俺が『ファイアボール』を撃った前哨基地が有り、霧の大森林がその周り、ゴブリン城をぐるりと取り囲んでいる形だ。
霧の大森林は更に各ボスが守るエリアに分かれ、右から狼、鹿、蝙蝠と順にボスが現れ、左に豚、猿、鳥のボスが順に現れる。この階層への入り口は蝙蝠と鳥のエリアの間にあり、出口はゴブリンの前哨基地エリアのどこかにある。前哨基地エリアは、絶えず冒険者や魔物の襲撃に合い、不定期に魔物のボスが現れ、大戦が勃発する。ボス同士が争い敵味方が大混乱の中であっても、ゴブリン達が敗れ、前哨基地を失った事は無く、ゴブリン城は敵に発見された事は未だ一度も無い。
俺は右の狼エリアから攻略していく、ボスが俺に倒され、難易度が下がってる筈だからだ。
地図をしまい右に進路を決めた。警戒しながら進むようゴブリン達に伝えると、集団はダラダラと歩き始める。俺は最後について行く事にして、ゴブリン達を囮に最低限の危険を回避する。
魔法の練習は上手くいき、先輩マジシャンの指導の元、ジョセ翁のお下がりの杖は充分に使える様になっていた。
威力は『魔球』より劣るが、速射性と持久性が向上し少し気に入っている。
今回の目的は魔石の回収である。ボスとの戦闘は必要がないが、見てみてみたい気持ちもあるし、戦闘力アップも図りたい。魔石の回収だけならば前哨基地に落ちているのでは?とジョセ翁に質問すると魔石も数日で消えてしまう仕様の様だ。更に俺の偶然遭遇した大戦の時の魔石は、狼王の討伐と同時に他のボスと共に消滅したらしい。
そして面白い話を聞けた。死んだゴブリンの魔石は、祭壇の二段目のプールに浸す習わしがある様だ。魔石の色が抜け、消滅せず透明な石だけが残る。弔いの意味があるそうだ。
俺はゴブリン達の集団の中、考え事をしながらのんびり歩いていた。魔法はなんとか目処が立った。後は実戦を積み経験値を溜めて、魔力操作の向上を目指す。ゴブリン城を囲む崖の辺りを一周すれば良いだろう。
剣術の稽古も必要だ。打ち直された短剣と腰の黒剣を両手で持ってみる。利腕に黒剣が馴染む気がする。
そういえば、
あの『ファイアボール』を撃った時、短剣だった。あれ以来一度も出来ていない。アレは無理だろうが、斬撃なんて飛ばせたらカッコいいな!この黒剣は魔力が良く通るし試してみよう。
ダラダラ歩く一匹のゴブリンの背中に『スラッシュ』と気持ちを込めて振ってみた。
バシュ!!と本当に40センチ位の衝撃波が1メートル程も飛び、背中からゴブリンを切り裂いた。
光の粒子になって消えるゴブリン。
ドサッ!と落ちる魔石。
振り向くゴブリン達。
目と目が合う。
顔を歪め半笑いの俺。ごめん!!
一瞬にして緊張感を出し、キビキビと辺りを警戒しだすゴブリン達。
理不尽な暴力の洗礼を乗り越えた集団は俺の一挙手一投足さえも敏感に感じ取り、この後、俺を絶対の中心として無類の強さを発揮する集団と化した。
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