第27話 ゴブイチ

あははは!


霧の大森林に俺の高笑いが木霊する。

恐怖に支配された集団は、一つの生き物の様に動き、手ぶらで武器のないゴブリンを索敵や警戒、更に囮として走らせ、獲物である狼達を罠に嵌める。森で回収した手頃な棒を尖らせた槍を、六匹のゴブリンに配備する。俺の魔力で強度を増す事も当然忘れない。囮の合図を受けた瞬間、一糸乱れぬ連携で槍持ちが躍り出て、凶悪な狼達に穴を開けた。止めは俺の短剣と黒剣で首を刎ねる。


魔石を残し消え失せた魔物を確認すると、そそくさと魔石を回収するゴブリン達。椅子を用意するまで、俺は微動だにせず森の奥底を睨みつけている。

ギヤ、落ち着いた低い声で座って休む様に、促され、当たり前の様に休む事にする。


そして高笑いを上げながら、今の状況を振り返る。


一匹のゴブリンが犠牲になってしまったが何故か?集団の一体感が生まれ、俺の戦術も嵌る。団結が好循環を生み、実績が信頼を呼び、集団が益々強くなる。なので俺は強兵の将として、徹底的に部下を無視した。


俺が動こうとする気配がすると、先に先に物事が収まり、いっそう俺の次の獲物に対する視線が鋭くなる。


高笑いが止まりません。これ♪

俺は演じてるだけだが、ゴブリンの成長が目覚ましい。


始めは俺が火を付けた、いや、実際に火打ち石で火を付けた。魔法があるのを思い出して、近くに偶々いたゴブリンに渡した。火打ち石を貰ったゴブリンは俺に張り付く様になり、余ってるマジックバックの果実や俺が狩りで取った獲物を配らせた。そのゴブリンはリーダーとなり、組織が出来上がって行く。


「ゴブイチ!!」

面倒なので、名前を付けたゴブリンを呼ぶと、即座に歩み寄り膝を着く、

「明日は決戦ぞ!!」

ギヤ!気持ちの籠った返事が帰る。

満足して頷くと、マジックバックから果実を大盤振る舞いして、俺は寝床に向かう。


ゴブイチの元、小さな宴会が始まる。

霧の大森林三日目の事だった。


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