第25話 杖
ジョセ翁の後を追いながら、先程の魔法について考える。
俺が撃った事のある『ファイアボール』は全然違う別物で、アレは、今は撃つ事が出来無かった。
参考にならん。
練習していたゴブリンマジシャン達の『ファイアボール』は発動まで遅く、的を外すのもざらにあり、威力も無かった。
熟練する事で、基礎の魔法であっても必殺の魔法になる可能性がある。
応用は魔法の発現する位置が変わると云う事か?更に発動した魔法が移動した。基本の『ファイアボール』が爆発したり、柱になったり、壁になったりすると云う事か?
仕上げは、ジョセ翁が自身が燃え、火を消し、火の精霊に化身した。魔法の火は自身を燃やさず、発火させる事も消す事も自在に操れる。火の精霊に化身する可能性まで示してくれた。
杖の役割とはなんだろう?発動を助けるだけなのか?他の意味もあるのか?
「ジョセ翁、この度はありがとうございました。素晴らしい魔法を見る事が出来ました。」
「良いのじゃ!」
疲れなど感じさせない歩きで上機嫌に話してくれる。
「杖にはどの様な役割があるのですか?」
「杖は自分の分身じゃ、人の杖を借りる事など有り得んのじゃ。借りたとして、暴発するか本来の力など出たりはせん。杖を大切にするのじゃぞ!杖有ってこその魔法じゃ」
「?、…ありがとうございます」
「励め」
「えっ!」
締めて帰ろうとするジョセ翁。慌てて引き留める俺。
「ど、どの様にして魔法を撃つのですか?」
「えッ⁉︎」
「え?」
「知らんの?」
「知りません」
「撃ったのじゃろ⁉︎」
「あれとは全くの別モノでした」
「ッ!杖は?杖はどうしたのじゃ!杖で用って開き、位置取りを定め、動かし、入れ替わる事で纏い、杖に仕込む魔石を解放して、し、…して⁉︎」
「杖はまだ持っておりません」
「…なッ!…なに?」
ジョセ翁はワナワナと膝から崩れて落ちた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
ジョセ翁を執務室で休めると、ジョセ翁のマジックバックになっている内ポケットから小さな杖を取り出して、
「儂が幼少の頃、初めに使った杖じゃ、貸すから取り敢えず使うのじゃ」
30センチの細く真っ直ぐな杖を手渡された。
「どう使うのですか?」
「魔力を満たし、先端からパカッ!と出すのじゃ、魔力を溜める事は出来んので暴発して死ぬ事は無いじゃろう」
マジシャン達は瘤のある木の杖を使用していた。ジョセ翁は魔石を中心に円状に金で装飾された柄頭と太い金属で出来た豪華な杖を使用している。
「パカッ!ですか?」
「パカッ!じゃ、詳しい基本は他の者にでも聞け、儂は忙しいのじゃ」
全然暇そうな翁だが、疲れた顔で指示を出す。一番大切で時間の掛かる基礎を誰かに丸投げである。
「畏まりました」
「それと、この階層の地図じゃ、全てのエリアで様々な魔石を回収するのじゃ、」
俺は地図を手に入れた。
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